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思いのほか痛いんだよこれ

その場は静寂に包まれていた。


亜人の二人は唖然としてそのほかの二人はよくやったって顔をしている。


当事者であるティアはというと晴れ晴れとした顔をしている。


「さてコレで話を聞いてくれるわよね」


ティアの問いかけに二人はいまだ困惑している。


「えっと、ティア様は奴隷になっていたのではないのですか?」

なっていた(・・・・・)わよ。でもさっきどんな手段をとってもいいか聞いたら肯定の返事が来たじゃない、だからテオの頭を打ち抜けたのよ」

「さすがです!ティア様!」


ふたりはいいきみだって顔をして、倒れた体を見ている。


「それで話を聞いてほしいの」

「それはいいのですが、そちらの(ヒューマン)族は」


二人の視線は、(ヒューマン)であるステラに向けられる。


「大丈夫、彼女も私達と同じ奴隷だった子よ」


ティアの言葉を信じたのか二人の眼が哀れなものを見る眼になった。


「そうですか・・・それでティア様たちはなぜ、は愚問ですねお帰りなさいませティア様」

「ただいま、クレア拘束を解いてあげてくれない」

「わかりました~」


二人にまとわり付いていた土が元に戻る。


「ティア様、なぜこの(やから)はこの場所まで来たのですか、奴隷狩りではないのですよね?」

「ええ、テオは交渉に来たのよ」

「交渉ですか?」

「ええ、数日前に(ヒューマン)族の王女が襲撃にあって行方不明になったの」


ティアの言葉で二人はなるほどといった顔をした。


「で、そのときの生き残りがいてね、なんでも亜人に襲われたと伝わったの。そこで私の主であるテオに依頼がきてね、情報を集めるために私達の里に来て交渉するつもりだったのだけど」

「そうですか・・・」


視線は俺に向けられる。


「それで私達の里に王族はいるの」

「はい、います」

「現在、お父上であるスルトス様の家で尋問を行っているかと」

「そう、お父様が」







「もういいか?」







五人以外の声が突然聞こえた、だがそのうち三人は慌てずにいた。



死んだはずである俺が動き額の矢を抜く。開いた穴は即座に塞がり傷跡も無い。


「ようやく起きたのね」


亜人二人は信じられない顔をしている、当たり前だ彼らからしたら死んだ人が動いているんだ。


ちなみにこの世界では一応ゾンビはいるが、そんなものは野生の肉食獣により処理されてしまうから人工的以外にはほとんど存在しない。


まあそれよりだ。


「さて、俺がここに来た目的はわかってくれたかな」

「「――――」」


いまだに二人は固まっている、これ最初に戻ってないか。


「以外に時間がかかりましたね」

「ん?そりゃ自分で回復するのを止めていたからな」

「へ~」

「そういやティア、俺を矢を射つ時なんか晴れ晴れとしていなかったか?」

「・・・あれだけ激しくされれば誰だって仕返ししたくなるわよ」

「なんか卑猥ないいかたですね~、ひょっとして欲求不満何ですか?」

「クレア!」


ティアは卑猥な意味に捉えられる言葉を言ったのが原因なのか顔が赤くなる。


俺らがしゃべっていると、二人が回復した。


「なぜ貴様が生きている!」

「むしろあれだけじゃ俺は死なないんだが」

「テオを殺そうとするなら国を滅ぼすような魔法でも使わないといけないのよね」


俺は細胞が一つでも残っていれば魔力で細胞を構築し元通りに戻ることができるからな。


亜人は状況を飲み込めずに居るが警戒はしている。


「そろそろ、警戒を解いてくれないか」


先ほどのやり取りで二人は少しは警戒を解いた。


「・・・先ほどのティア様の言葉に嘘はないか」


ひとまずは話を聞いてくれるようになったようだ。


「さっきティアが言った、交渉しに来たってのは嘘じゃないよ」

「・・・わかった、ティア様に免じて里のすぐ近くまでは誘導しよう、ティア様やクレア様はともかくお前たちを里の中に入れる訳にはいかないから、それでもいいか?」

「それで頼む」


それからの行動は速かった。まず犬係獣人が急いで里に戻り何が起こったかを話す。もう一人の方は回り道をしながら里に向かう。いろいろと準備があるので時間を稼いでいるんだろう。


道中話しかけ続けた甲斐(かい)があって、木人(エルフ)の方は話を聞いてくれる程には仲良くなった。この木人(エルフ)の名前はツェフ、里にある戦士団の一員らしい。この辺りにいた理由は見回りと害獣駆除だ。なお害獣には人の奴隷狩りも含まれているようだ。


里に向かう途中に前を歩いていたツェフはふと気づいて問いかけてくる。


「そういえば名前を聞いていなかったな、何と言う」

「俺の名前はテオドール、こっちはステラ、あとは知っての通り」

「氏族とかの名は付かんのか?」

「氏族?」


氏族についてはツェフは説明してくれた、木人(エルフ)は名前と家名、それと最後に氏族の名前をつけて個人の名前となっている。


「似ているものならあるが、俺はないぞ、ステラは似たようなものを持っていたがな」

「・・・それも過去のことですが」


ステラの表情から曇った、たぶん家族のことを思い出したのだと思う。それからは無言で森の中を進んでいく。


ある程度進むと森の中に開けた場所が出てきた。


「ここで長であるスルトス様と交渉をしてもらう」


周りを見渡すがここには俺達以外誰もいない。そのことに疑問を持ったステラが尋ねる。


「誰もいないの?」

「少しお待ちください、もうじきくるはずです」


俺は近くにある切り株に座りティアの親父さんが来るのを待つ。


{テオはん、ちょっとええか}


そこにテールから連絡が入る。


{どうした?}

{一応メルちゃんとルナはんを見つけはったんやがな、今さっきルナはんだけが連れて行かれたんやが、何か起こったん?}

{ドコに連れて行かれたかわかるか?}

{なんか外にある乗り物みたいのに乗せられてんな~}


チールの報告からルナリアだけがこちらに来るみたいだ。それも当然か俺達がどうしても二人を連れて帰ろうとしている場合、強硬手段を取ってもおかしくない。なら一人だけを確認させれば俺達もうかつな行動を取れなくなるだろう。俺らがどんな手を使ってでも取り戻す場合はだけど。


他にも道中の危険を考えてメルダだけを残した可能性もあるが、どっちかなんてわかるはずも無い。結果、俺達はここに来るのを待つのが適切だ。


{了解、チールはメルダのほうを見といてくれ}

{あいあいさ~}


それからルナリアたちが来るのを待つ。







ゴトゴトゴト


森の奥から馬車の音のようなものがする。顔を向けてみると奥から亜人数名とチールの記憶で見たルナリアの馬車がやってきた。


外にいる亜人達は全員、完全武装している。


(完全に武力で有利な交渉をしようとしているな)


馬車から降りてきた木人(エルフ)は軽く武装しているが他よりも地位の高いとわかる服装をしている。


俺はティアに確認を取る。


「ティアの父親か」

「ええ、お父さんで間違いないわよ」

「以外だ戦士じゃないんだな」

「今回は交渉じゃないから武装は最小限にして交渉服でくるわよ」


その後にルナリアが降りてきて、ステラがピクリと反応する。


「ステラ」

「・・・わかっている」


今すぐ助けに動こうとしたステラを制し、二人が近づいて来るのを待つ。護衛はその後ろに並ぶ。


二人は手前3メートルで止まる、そして交渉が始まる。


「お前がティアを奴隷にしたものか」

「違うよ俺はティアを買っただけだ、捕まえた奴は別にいるよ」


最初から嫌悪感出しながら交渉してきやがるな。


「ティアとクレアを開放してもらおうか」

「何の見返りもなしに、それは無理な話ですな」

「ここでお前を殺し開放してもいいんだぞ」

「それは殺せたら(・・・・)の話ですよね」


俺の言葉で向こうがピリピリし始めた、だがこちらは平然としている。


「さてこちらの要求だがルナリアとメルダの身柄の引渡し、それだけだ」


こちらは単純明快で二人の引渡しだけだ。


「ではこちらはティアとクレアの奴隷解放を要求する」


二人ずつ引き換えるかたちか、だが問題ない。


「ん?じゃあそれで」


俺があっさりその条件を飲んだ、だって


「じゃあルナリアとメルダを引き渡してもらえますか」

「いや、そちらの奴隷解放が先だ、それが済んでから引き渡す」


コレ笑い耐えるの苦しいな。


「だからですよ、ここでルナリアたちを引き渡してもらいましょう」

「貴様、言葉を理解しているのか」


もう笑っていいかな。


「プッアハハハハハハハハハハハハハ」


突然笑い声を上げて向こうは狂人でも見るような顔になった。


「・・・なにがおかしい」

「だ、だってさククク、とっくに二人は奴隷じゃないぜ」


ティアとクレアはとっくに奴隷ではない。てかこいつらに奴隷魔術を掛けてもレジストされるのが落ちだよ、魔法ならともかく。


それに二人の使用していたのは奴隷商で使用していたものだ、魔術を教えた三人なら自力で解けるさ。


それにより俺は損失ナシで二人を取り戻すことができる。まるで空のトランクケースを渡して金塊を手に入れたようなものだ。


「ならなぜティアは戻ってこない」


ティアが奴隷でないなら里に戻るはずだと考えているスルトスはいまだに疑っている。


「それなら簡単が、俺達は協力体制だからだよ」

「協力体制だと」

「そう、さらに俺は君達亜人にも協力してほしいと思っている」


俺の言葉を聴いて胡散臭そうな顔をしている、だがスルトスだけが違った。


「君が何をするのか聞きたい」


俺はその言葉に、大まかに俺の計画していることを話した。


「できればもう少し詳しく話したいんだが」


暗に里に入れてくれって言っているのだが、その答えは


「・・・よかろう武装解除した状態なら里に迎え入れよう」

「ではよろしく頼む」


スルトスが条件付で里に入れるのを許可してくれた、スルトスは周りから抗議の声が掛けられるが、すべて論破し黙らせた。


「では里に参ろう、馬車に乗りたまえ」


俺とステラ、ルナリアだけ馬車に乗る。ティアとクレアは外でスルトスと話をしている、大方さっきの計画の信憑性を聞いているんだろう。


外は歓迎ムードなのに馬車はいごごち悪い、理由は対面にいるこの方が原因だ。


「さて説明してもらえるかしら」


むすっとした顔をしてこちらをじっと見つめているルナリアだ。


「何をですか?」

「全部です!何でこんなに早くここにたどり着くのか!亜人の国とは!ステラやあの二人の強さ!お父様が協力している事!全部です!」


以前あった知的な印象全部ぶち壊しだな、隣のステラはどうす説明すればいいのか頭を抱えている。


「まぁ里まで時間はあるだろうし、今までのこととこれからのことを話しとくよ」


そこから里に着くまで今までのことを話した、結果ルナリアは横になり背を見せる。






馬車は森の中を再び進んでいく、ある程度進んでいくと徐々に緑の量が多くなっていく、その中を馬車は進んでいく、すると里の姿が見えてくる。


そこはファンタジー特有の姿だった、木の上に家に建て樹と樹の間を橋を掛けてそれで移動している。木漏れ日が家を照らし明るく見せている。


俺らは馬車から降りる。


「さてここがクライス氏族の里よ」

「変わってませんね~」


俺らの近くにティアとクレアが近づいてくる。


「これから家に来てもらうわ、その後に長老達を集めそこで話し合ってもらうことになったわよ」

「お前の家でか?」

「いや長老達の集まる建物があるから、そこでよ」

「は~い、話もそこまでにしてメルダちゃんを迎えにいきましょうか」


いくつかある家の中で大き目の樹にある家に案内された。


「ただいま~」

「お帰り~」


中にいた一人の女性が玄関にやってきた。


ティアと同じ金色の長い髪、長く尖った耳、ティアよりもある大きな胸、身長はティアと同じくらいだ。


「ティアのお姉さんかな?」

「違うわよ」

「ティアちゃんの母で~す」

「「・・・・・・・」」


俺とステラは無言になる。


一応木人(エルフ)の知識は持ってはいたが、実際目の前にすると言葉にならなくなる。


日本じゃあティアの年の近い妹でも通ると思うくらいだ。


「あら、今回はお客さん多いのね、クレアちゃんは頻繁に来ているけど」

「お久しぶりです~ミエラ様」


なんか、のほほ~んとした人だな。とりあえず客室に案内される。


「そういえば悪い(ヒューマン)に捕まったんだってね」

「ええを恥ずかしながら」

「ちょっと捕まった町の名前教えてくれない、その町滅ぼしてくるから」


「「・・・・」」


怖いことを顔色変えずに言うな~この人・・(ヒューマン)じゃなく木人(エルフ)か。


「ねぇ、お母様だけは怒らせないように」ボソッ


ティアは青い顔をしながら忠告する。


「そちらの彼がティアちゃんを奴隷にしていた人~?」


矛先がこちらに来た。


「ええ、テオドールといいます」


ここは下手に嘘ついたり言い訳しないほうがいいな。


「なんか、へ・ん・な・こ・とはしてないよね?」


すごい顔は笑顔なのに眼だけが笑ってない。


ちなみにこの人・・・めんどいから人でいいや・・・の状態確認(ステータスチェック)を見てみると。


name:ミエラ・イシク・クライス

種族:樹人(ハイエルフ)

年齢:151

状態:怒り【小】

生命力:1023/1023

魔力量:2045/2045

腕力:787

脚力:884

敏捷性:761

耐久力:486

器用度:598

魔質:1088

魔抗:1121

視覚:E

聴覚:D

触覚:E

嗅覚:E

魔法適正:水・土・風・光

【種族特性】

自然ノ声:植物の声を聞くことができる

光合成:陽の光を浴びると生命力・魔力量が回復し、ステータス・回復速度が上がる

特殊技能(ユニークスキル)


まさかの木人(エルフ)が進化した樹人(ハイエルフ)だった。


正直コレならやりようによっては町一つは潰せるな。


・・・て、いまこの方若干怒ってません?


「してませんよ、俺がこの三人を買った目的は小間使いですので」

「ふ~ん、それならティアちゃん達以外でもよかったんじゃないの」

「条件にあったのがこの三人だけだったので」

「条件?」

「常識があり、戦闘できる、あと他国にもいくかもしれないから国から出しても大丈夫な者、それと女性です」

「なんで女性なの?」

「そりゃむさくるしい男よりも女性のほうがいいからです」


「「「・・・・・」」」


三人からの視線が微妙な感じになっている。


「うんうん、テオ君も男だからそれもしょうがないか~」

「そうですねしょうがないですよね」


俺とミエラさんはお互いうなずき合う。


「じゃあ三人には手を出してないの」

「ちょっ、ママ!」

「ええ出してません、それ以前に俺は合意が無ければ絶対にしません」


俺は日本の倫理観で手を出さない。


「そうなの?でもね女性は時に襲ってほしいって思うときがあるのよ」

「ほう、そこの所詳しく教えてもらえませんか」


そういう女性はわかりにくいから苦手なのだ、そういう女性について教えて貰おう。


「たとえば今のティ――」

「あんたら!いい加減にしろ!」


ティアが顔を赤くして話を遮る、顔が真っ赤になっていることからこういった話には耐性がないみたいだ。


「ママ、早く皆を中に案内して、私はいまからルナリア殿下の妹を連れてくるから」


そういって上に上がっていく。


「ふぅ~あの子ももう少し丸くなればわかってもらえるのに」


ミエラさんが何かつぶやく。


「じゃあティアちゃんが戻ってくるまでお茶にしましょう」


そういって部屋を出て行く。


部屋の中は木製の家具ばかりだ。


少しばかり部屋の中を眺めていると、ミエラさんが部屋に入ってきた。


「それじゃあ持ってきたからゆっくりしましょ」


俺らはティアが戻ってくるまでお茶をしていることにした。


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