第二章 11-2
今日も杏子は東京の空の上空を飛んでいく。
ハルくんからは「杏子はちゃんと飛べるようになったから」と、単独行動をとっていいよと言われてはいた。とはいえ今日は一応ハルくんも杏子の傍らで飛んでいる。
「仕事、まだしなくていいの?」
「したいの?」
「わからない、……わからない」
「ふうん」
いつしか杏子はハルくんと同じ速度で飛べるようになっていた。
「まだ高校生だし、やらなくてもいいと思うけどな」
そう言われればそうだけど。
「じゃあ、高校を卒業する頃になったら始めたほうがいいの?」
「うーん」
杏子の羽根をちらりと見た。薄っすら灰がかっている。
「べつにそんなに楽しいものでもないし。焦らなくてもいいんじゃないかなあ」
ハルくんは、口調こそ優しげだけれど何かを言いたげな口ぶりでそういった。
「人手は……十分足りているんだっけ」
「うん、まあそれもあるけど」
「俺らは地上の人間に比べて時間のスパンが違うのさ。あくせく急がなくたって時間が充分ある」
俺らは──
ハルくんは無自覚に私を一緒にした、と思った。
そして。
ううん、私は、みんなに比べて潤沢な時間があるわけじゃない。
──時の流れはみんなと同じ。




