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一章9 友達のために

最近スズがお弁当を作ってくるようになった。

毎日ユウキが学食でカレーばかり食べているのを心配してくれたのだ。

カレーは最高のソウルフードだと思ってるよ、でも女の子の手作り弁当とか思春期男子にとっては何よりも最高の食べ物だろ!

そろそろスズがお弁当を持ってウチのクラスにやってくるはず…… なのだが

今ユウキの横に居るのはスズでもなければ可愛い女の子でもない。


「瀬戸!お前アイリに何吹き込みやがった!前に言ったはずだ、余計な事したらぶっ殺すってな」


そう、以前怒鳴りこんで来た3年の先輩である。

おそらく休日に浜宮さんから聞いたアレ関係の男だろう。

とりあえずこの先輩をどうにかすれば浜宮さんが安心して学校生活を送れるようになるはずだ。


「別に何もしてませんし、吹き込んでもいませんよ? 友達として話をしたまでです」


「瀬戸ぉおお!調子に乗るなよ!!」


胸ぐらを捕まれそのまま壁に押さえつけられる。

教室からは軽くどよめきが聞こえてくる。

浜宮さんが今売店にお昼を買いに行っているのがせめてもの救いである。

ユウキにとってはこの程度の威嚇は正直な所なにも感じない。

入学前は毎日のように喧嘩ばかりしていたのだから当然だ。


「先輩もしかして浜宮さんに振られたんですか? あっ!付き合ってすらなかったですね すいません」


胸ぐらを掴む力が増したと同時にユウキの左頬に拳が入り頬から骨を伝い眼球に衝撃が伝わる。


「あぁ、図星だったみたいですね!自覚があるな率直に言いますけど、浜宮さんに付きまとうの辞めてもらえません?」


「あぁ?誰が付きまとってるつうんだ アイツが俺に言い寄ってきたんだろうが!」


「でも最近は連絡すら取れてないんじゃないですか?それで押し掛けて来たんですよね」


ユウキのお腹に膝蹴りが入り痛みがお腹を通り肺で拡散していく。


「そもそも先輩は最初から浜宮さんの嘘を分かっていた。それに漬け込んで良いように利用しようとしたけど、気が付いたら好きになってたんですよね」


「ふざけたこと抜かすな!」


「良いですよ。先輩がここで納得して引いてくれないなら。殴り合いしかないと思います」


殴り合いの喧嘩、姉ちゃんとの約束を破る事にはならないはず…… 友達を守るために戦うのだから。


「殴って勝ったら退いてください。俺も負けたら退きます」


「あぁ?勝手に決めてんじゃねぇぞ!上等だこいや!」


その言葉聞いた直後ユウキは相手が胸ぐらを掴む右腕を左手でおもいっきり左に捻り

相手が上方向にバランスを持っていかれた喉と顎の境に一撃を入れた。

先輩はそのまま地面に崩れ落ち嗚咽を吐いている。


教室の入り口で物を落とす音が聞こえ、女子生徒が駆け寄ってくる。


「もうやめて…… 瀬戸くんだったかしら あなたにまで迷惑かけたようでごめんなさい。コイツ昔から極端で、好きになったらそれしかみえなくなるの…… 本当は良いヤツなのよ」


女子生徒は学年章を見るかぎり3年生のようだ。

先輩を抱き起こし「大丈夫? 昔っから本当バカなんだから……」と言いこちらに向きなおると


「後は私がしっかり言い聞かせておくわ。迷惑かけてごめんなさい」


と謝罪をして二人で教室を出ていく。


「先輩の事好きなんですね」


ユウキは去り際に女子生徒に投げ掛けると、恥ずかしそうに「えぇ」と返ってきた。そしてそれに加え


「浜宮さんには気を付けた方が良いわよ、あの子普通じゃないわ」


と忠告された。

この人も浜宮さんを良く思ってない女子生徒の内の1人という事だろうか。

とりあえずは先輩の事をわかっているあの人ならばきっと先輩は大丈夫だろう。自分の事を分かってくれる人がいるのはそれだけで支えになるから。



「ユーキ いたい? だいじょうぶ?」


弁当を持って来たであろうスズが心配そうに駆け寄ってきて、頬をさすってくる。


「痛い痛い 大丈夫だよ。つかお前いつから見てた」


「さいしょから……」


「そっか…… 助けてやるとか言ったくせに俺バカだからこんなやり方しか思いつかねえや」


「いたいのだめ…… でもユーキバカじゃない」


売店から帰ってきた浜宮さんに出来事を話し、とりあえず学校ではもう大丈夫なはずだと報告する。


「ありがとう。 瀬戸くんに怪我までさせてしまって、私どう償えば……」


「償いなんて大袈裟な。 友達なんだからこれくらいどうって事ないって」


話の間スズはずっと腕に絡み付いて浜宮さんの事を睨んでいた。きっと助ける手段が気に食わないのだろう。

とりあえずは早々に浜宮さんの学校での不安を取り除けたのだから良い事なはずだ……

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