86話 決起集会とラスボス
まだ戦闘シーンには入りません……。
今話からまた新キャラが出ます。
登場人物の目録を作った方が良いのでしょうか?
86話 決起集会とラスボス
俺たちは今、ブレストに街の郊外に集まっている。
その理由は今回の防衛戦において冒険者たちの士気を高めるために決起集会を開くからだ。
何故ギルドで行わないのか?という疑問は最もだが、3千人もの人間が集まって話をするだけのスペースのある部屋はギルドには無い。
だからと言って代表者だけを集めて決起集会と呼ぶのは命を懸けてもらうのに敬意が足りない、との事でこういう形になった。
今回の事で知ったんだが、この街の人口はかなり多いようだ。(約10万)
この国の中でも大きな部類で冒険者の街だという事は聞いていたが、まさかここまで冒険者が集まるとは思っていなかった。
これは嬉しい誤算だ。
そして今はケルヴィンが土魔法で簡単に盛り上げた壇上に立ち、今回の作戦の説明と代表の挨拶をしているところだ。
ちなみに俺やララ、ガルムたち他のBランクの冒険者は他の冒険者のたちとは違う場所に居て、ケルヴィンの立つ壇上の側で待機している。
理由は……まぁ直ぐに分かるだろう。
「みんな!よく集まってくれた!この街の危機に3千人もの冒険者が協力してくれる事を嬉しく思う!本当にありがとう!」
そう言ってケルヴィンは目の前にいる多くの冒険者に対して頭を下げる。
ギルドマスターという立場の人間が頭を下げるという事が珍しいのだろう、冒険者の間でザワザワと騒めきが走る。
しかしその騒めきも次のケルヴィンの言葉で消え失せた。
「みんなも既に聞いていると思うが、敵は強大だ。たった今斥候部隊から入ってきた情報によると敵の軍勢は約1万2千!僕らの倍以上の数……それどころか4倍近い差があるだろう。」
『4倍の戦力差』その言葉に誰もが不安を覚えたのだろう。みんな一様に息を飲むのが分かる。
ケルヴィンは冒険者の不安を取り除くように、しかし!だがしかし!と強く豪語して強く鼓舞する。その程度の差は僕たちなら覆せると。
「だけど僕たちなら必ず勝てる!誇り高きブレストの街の冒険者よ!守るべきもののために共に戦おう!」
『おおぉぉぉ!』
ケルヴィンはここまで言って初めて俺たちの方を見る。
ようやく紹介かな?
「それにこの街にいる君たちなら聞いたことがあるだろう!この街には今!『鍔鳴り』がいる!『鬼喰い』がいる!『龍姫』がいる!『瞬煌の巫女』がいる!こんな化け物共がいる街を落とせると思うか!?」
いくら冒険者の士気をあげるって言っても、化け物呼びは無いんじゃないですかね?
それは俺だけでなくガルムや龍姫、瞬煌の巫女と呼ばれた女性たちもそう思ったらしく、みんなして苦笑いだ。
しかしそんな俺たちとは真逆に冒険者たちの反応は上々で、雄叫びをあげて決起している。
……これはさっきララに聞いた事だが、この街では『鍔鳴り』の名前は相当有名らしい。それもどちらかと言うと悪い意味で。
例えば、さっきでた名前でいうと『龍姫』や『瞬煌の巫女』はその強さや能力、種族もさることながら彼女たちの見た目が美しく、それを讃えている面もあるのだという。
だが、ララ情報によれば俺の二つ名の『鍔鳴り』は単純に戦闘スタイルからきているもので、それにまつわる噂も碌でもないものばかりだ。
曰く『鍔鳴りの武器は呪われていて、切ったものを必ず絶命させる』とか、曰く『鍔鳴りの女に手を出すと殺される』とか、曰く『国王相手だろうと、気に入らない奴がいれば斬り殺す』とか……。
もはや戦闘スタイル関係ねぇじゃん!な?碌でもないだろ?
しかも、まだ数時間しか経っていないが、それはゲルバルドを討伐した事が発表されてからより顕著になったそうだ。
俺としてはゲルバルドを討伐したのはララだから関係ないし、俺の評判だけ悪意がこもってるようにしか感じられないし、そもそも俺はそんな酷い事はしていない、など言いたい事は山ほどある。
しかし今回はその評判が好転したらしく、爆発的な歓声が上がっている。……微妙に納得が出来ない。
そして興奮冷めやまぬ中、ケルヴィンは更なる燃料を投下する。
「それに今回は僕も出る!元Aランクトップの実力をお見せしよう!」
……は?何言ってんのこいつ?最高指揮官が戦場に出るってどう言う事だよ。何考え……
『うぉぉぉぉーーー!!!』
ケルヴィンが声高に宣言して一拍、先程よりも大きな歓声が湧き起こってビックリした。急過ぎるだろ。
ケルヴィンの側にいた緑髮の女性ギルド職員も慌てて止めに入ろうとしていたが、ドッと沸いた歓声を前におずおずと引っ込まざるを得なかったようだ。
まぁ、あの歓声の中に割って入って待ったをかけるのはむりだよなぁ。
と言うかこの反応から察するに、ケルヴィンはどうやらかなりの実力者として認知されているようだ。
ぱっと見優男にしか見えないケルヴィンが荒くれ共の長を務められる理由の一つがこれなんだろうな。
ステータスもスキルもアホみたいに強かったし、納得といえば納得なんだが……。
最高指揮官が戦線に加わるのはないわー。
「僕からの命令はただ一つ!死ぬな!全員で明日を迎えぞ!」
『おおおぉぉぉぉぉ!!!』
ケルヴィンが最後に締めた事で決起集会は終了して、細かい指示がギルド職員たちから飛ぶ。
冒険者たちは早くもその指示に従い行動を開始していて、先ほどまで完璧とも言える代表挨拶を終えた優男はドヤ顔でこちらにやってきたが……。
「僕の演説も中々捨てたもんじゃ無いだろう?」
「……えぇ、そうですね。冒険者を鼓舞して士気を高める、その手腕につきましては中々なものだと認めざるを得ません。で!す!が!ギルドマスターであり、今回の防衛作戦の最高責任者であるあなたが戦線に加わってどうするんですか!!!」
先ほどケルヴィンを止めようとしていたギルド職員さんが正に鬼の形相といった様子でケルヴィンを叱りつけている。
その叱られているケルヴィンは先ほどまでのドヤ顔はどこへ行ったのか、今は奥さんの尻に敷かれる旦那の如く恐縮しきっている。
………ざまぁw
「い、いや、魔法で後方支援するだけだしさ、最前線に立つわけじゃ無いし……。」
「だとしてもです!私に何の相談も無く勝手に決めないで下さい!あなたの行動の穴埋めをするのは私なんですよ!私の仕事を増やさないで下さい!大体いつもあなたはそうなんです!いつもいつも私に仕事を押し付けて……」
「ご、ごめんね?これからは僕も心を入れ替えて仕事をするからユーリも機嫌を直してよ。」
ユーリと呼ばれた女性は機嫌を直すどころか、顔を般若の如く怒らせてより声を荒げる。
「はぁ!?心を入れ替える!?あなたそう言って仕事をしたことがあったかしら!?そもそもあなたはもっとギルドマスターである自覚を持って……。」
ユーリのお説教は数分間続き、ケルヴィンは地面に正座までさせられている。
怒られている間のケルヴィンは『はい』しか言っていなくて、同情はしないが哀れに思えた。
言うだけ言って少しスッキリしたのだろう。ユーリは俺たちの方へと向き直り頭をさげた。
「あぁ、失礼しました。私はブレストの街のサブマスターを務めておりますユーリと申します。以後お見知り置きを。」
「……どうも、よろしくお願いします。俺はハヅキです。」
「おう、俺はガルムだ。よろしく頼む。」
「私はサリアです。よろしく。」
「私はミハエルと申します。よろしくお願いしますね。」
今更だが、ミハエルと名乗った女性は先ほど『瞬煌の巫女』と呼ばれた有翼種で、純白の髪に黄色いクリッとした大きな目をしている美女だ。
その背中からは髪と同じく純白の翼が生えていて、まさに天使のような見た目をしている。
定番と言えばいいのか、彼女は見た目通り回復系統の魔法が得意なようだ。(ララ情報)
そしてサリアは『龍姫』と呼ばれていた龍人種で、薄い青色の髪に同じ色をした切れ長な目をしている。
龍人種というからどんなごつい人かと思ったが、見た目はとても美人という事を除けば普通の人間だ。いやこの世界で言うなら人族か?
スレンダーなモデル体型をしていて身長も女性にしては結構高い。多分俺より数cm高いと思う。
ただ、ララが言うには彼女は戦闘になれば見た目にそぐわぬ力を発揮して敵を屠るらしい。
最後になったが、ユーリは緑髪の女性で着ている服も雰囲気もいかにも秘書って感じの人だ。目はつり目気味の濃い青色をしている。
彼女の纏う雰囲気とでも言えばいいんだろうか?細かい動作の一つ一つから育ちの良さ?が出ていて、黙って本を片手に窓際にでもいればどこぞのご令嬢のようだ。
そして人によっては重要な事だが、胸はない!もう一度だけいう。胸はない!!!
「……何か?」(マジ切れ)
「いえ、なんでもございません。」
口に出てはいない筈だが、人でも殺すのか?という視線で睨まれた……。
……怖え!このサブマス、マジ怖えよ!
さっきはざまぁ、とか思って悪かったよケルヴィン。こいつはラスボスだ。
「まぁいいです。ではあなた達にも指示を出します。基本的に好き勝手にやって頂いて結構ですが、最低限の作戦の流れは頭に入れておいて下さい。」
「分かりました。」
「あぁ分かった。」
「了解した。」
「えぇ、分かりました。」
「では作戦の内容を説明します。先ずは…………。」
俺はユーリから防衛作戦の説明を受けながら、今回の急速な魔物の大量発生の原因について考える。
今回の一連の流れにはどう考えても違和感しかないし、いくつか最悪の展開を考えておいても損は無いだろう。
まぁ、俺の思い過ごしであれば一番いいんだけど……。
ご視聴ありがとうございます。
ブクマ、評価ありがとうございます!




