83話 街への帰還は問題と共に
年末と比べてかなり身の回りが落ち着いて来たのでこの辺りで以前に投稿した話の編集、開講を進めていこうと思います。
ひょっとしたら新話の更新が遅れるかもしれませんが、ご了承下さいm(_ _)m
追記、PV数が9万を突破しました!ありがとうございますm(_ _)m
頑張って投稿を続けていきますのでこれからも応援宜しくお願いします!
1月17日に改稿してます
83話 街への帰還は問題と共に
「やったなぁおい!嬢ちゃんもただもんじゃねぇと思ったが、まさかここまですげぇ奴だったとはな!」
「本当です!先程の戦闘は見事でした!鎧ごと切るなんて普通ではありません!ランもお疲れ様です。」
「いや〜ラナンキュラスちゃんさすがだねぇ〜。どう?帰ったらぜひ俺とデートし……『お断りします。』…ない………。えぇ〜……。」
「……当然の答え。」
「え、エリルさ〜ん。それはあんまりでは……。」
「……ケイトのナンパが成功してるとこ見た事ない。」
「………確かにそうですね。エリル、よくそんな事に気がつきましたね。」
「……ケイトが振られるのは見てて面白い。……ピエロみたい。」
「それはひどくねぇ!!??」
……この流れに慣れつつある自分がいるのがなんだか嫌だ。
あっ、でも同情はしないよ?人の女をナンパする奴はクソ野郎だからな?ケイトくん?分かってる?
束の間の休息。
強敵を倒してみんな人知れず気が抜けている中、急に辺りに地響きが広がり始めた。
「な、何だ!?」
「これは……!?ハヅキ様!この森にいる魔物の反応が急激に増えました!3千、5千……まだ増えます!」
「何だと!?おいケイト!それは本当か!?」
「あ、あぁ。どうやらマジっぽいぜ旦那。俺の索敵にもかなりの数が引っかかってやがる。……こりゃヤバイかもな。」
「……反応は街の方へと動いています!ハヅキ様!」
……マジか。
予めゲルバルドを討伐した後の事を考えていたが、中でも最悪の想像が当たってしまった。
敵の増援。
烏合の衆となった敵でも物量に任せて数で押し切れば街を落とすのはそう難しい話でもない。奴が確実に街を落としたいなら、自分が倒された後の事を考えていてもおかしくは無いと俺は思っていた。
そう、俺は敵の増援が来る事はある程度予想していたんだ。しかし、幾ら何でもその増援が早すぎる!
奴が倒されて数分、今では倍以上に敵の数は膨れている。この分だとまだ増えそうだ。
どうする!?今から馬車で街へ戻るか?
……いやダメだ。それだと4〜5時間掛かるし恐らく間に合わない。それに間に合ったとしても迎撃の為の準備が出来なければ意味がない。
俺とララだけなら1時間で戻れるが、そうするとガルム達を見捨てる事になる。
……それは許容できない。
あいつらは気の良い奴らだし見捨てるのは忍びない……というか俺はあいつらの事を結構気に入っているのだろう。
まるで打ち合わせでもしていたかのように急にコントを始める馬鹿な奴らだが、その馬鹿さ加減を心地よく思っている俺がいる。
それならどうするのか。戦うのか?この戦力で?なんの準備もなく?そんなものはただの自殺行為だ。勇気と無鉄砲は違う。
俺とララがいればある程度の魔物は間引き出来るだろうが、それでもある程度だ。確実に撃ち漏らしが出るだろうし、そうすると街は大混乱に陥るだろう。
何より俺たちは今、敵陣のど真ん中にいると言っても良い。こうして悩んでいる間にもいつ襲われてもおかしくない状況だ。俺たちが全滅してしまえばこの情報を街へ伝える事すら出来ない。
こうして悩んでいる間にもタイムリミットは迫ってくる。
焦る中、俺の中に一つアイデアが浮かぶ。これを使えば今直ぐにでも全員でブレストの街へ戻る事が出来る。
ただ問題?が一つある。
……多分問題なく出来るだろうけど、まだ試した事ないんだよなぁ。それにこれを使えば大目立ちするのは避けられないだろうしなぁ……。
……いや、街が無くなれば目立つも何もなくなるか。それにララが魔族を倒した事で目を付けられるのも決まったようなものだし、ここは逆に派手に動いた方が余計な圧力がかからなくていいか?
………うん。そういう事にしておこう。よし!腹をくくるぞ!
「ララ、みんな集まってくれ。一回ブレストの街に戻る。」
「かしこまりました!」
「戻るのはわかるがどうやって戻るんだよ。」
「説明してる時間がない。早く集まってくれ。」
ガルムを始めみんなどこか納得はいっていないようだったが、緊急事態という事もあり素直に全員集まってくれた。失敗は許されない。
まぁ、ララは最初から俺のことを疑いもせず、ずっとそ側に居てくれていたわけなんだが。……ララの躊躇のなさが嬉しい反面、少し怖いと思う最近です。
「集まったな。……行くぞ。」
俺の考え、それは転移、転送魔法で一気にブレストまで戻るというものだ。まだやったことはないが多分出来ると思う。……え?なんでやってなかったって?……だって失敗した時を考えると怖いじゃん。まぁ、今回ぶっつけ本番になって今更試しておけば良かったと後悔している訳だが……。
俺は全体の3分の1程の魔力を使い、イメージする。
場所はケルヴィンの執務室でいいだろう。そこと今いる場所を、点と点をど◯でもドアみたく、最短距離を繋げてその距離をゼロにするイメージ。
そうすると俺たちの目の前に直径2m近い真っ黒な歪みの様な穴が出来上がった。
俺が魔法を使ったからなのだろうか、それとも<賢者の器>の効果なのだろうか、成功している事が直感的に分かる。
しかし、俺が何をしたのかという事を正確に理解出来ている奴はいないらしく、ララをのぞいてみんな困惑顔だ。
「おいおいおい!?一体なんだってんだ!ハヅキ!?」
「だから説明する時間が惜しい。早く行け。」
混乱するガルムを俺は後ろから蹴りだす様にして歪みの中へと放り込んだ。
多少強引だが時間が無いし仕方がないだろう。
「ほら!他のみんなも早く中へ!……ガルムみたく蹴られたくはないだろ?」
俺がそう言うとみんなも意を決した様に歪みの中へ突撃して行く。最後にララが入ったところで俺も中に入り、歪みを閉じた。
すると、きちんとケルヴィンの執務室へと繋がっており、中には困惑顔のみんなと(ララを除く)執拗に目をこするケルヴィンの姿があった。
「………ハヅキくん?これは一体どう言うことかな?説明してくれない?」
「そうだぜ!ハヅキ!説明しろ!」
「……時間がないのでかいつまんで説明しますね。」
そうして俺はカヴァルトの森でゲルバルドを討伐した事、その後で森に異常が起こり、急遽帰って来た事を説明した。
「なんだって!?それは本当かいハヅキくん!?」
「幾ら何でもこんな趣味の悪い嘘はつきませんよ。」
「ハヅキの言った事は本当だぜ、ギルマス。俺たちもその場に居たんだ。間違いない。」
「……その魔物達の規模と進軍速度は分かるかい?」
俺はララの方をちらりと一瞥すると、ララも俺の意図を理解しているのか頷いて説明を始めた。
「そこはハヅキ様に変わって私が説明します。正確な規模は分かりませんが、少なくとも6千以上の魔物がいると考えられます。最後に確認したままのペースで増え続けているとなると、恐らくは1万ほどで落ち着くのではないかと思われます。」
「い、1万…………。」
「ただ、敵の反応は小さいものがかなり多かったです。大半がゴブリンやフォレストウルフ、オークなどのEランクやDランクの魔物ではないかと思われます。……中にはBランク相当の魔物もいましたが。」
「なるほど。」
「そして進軍の速度はそこまで早いものでは無いと思われます。……街までは恐らく7〜8時間ほどは掛かるかと。」
「……それだけ時間があればなんとかなるか?よし!急いで緊急強制依頼の発行をしよう!みんなにも参加してもらう事になるけど、ゲルバルド討伐で疲れてるだろうし……そうだな、今から2時間後に招集を掛けるから、それまでここで休んで居てくれ。」
「分かった。」
「分かりました。」
そう言うとケルヴィンは物凄い勢いで扉を開けて下へと降りて行った。その数秒後にざわざわとした喧騒が聞こえて来た。恐らく事情が伝わったんだと思う。
……一先ずはこれで様子見かな。
俺は手近にあったソファに腰掛けてララにも座る様に視線を向ける。するとララは珍しく人前で俺の隣に座り、体を預けて来た。
一体どうしたのかと口を開こうとした時、ガルムからいよいよツッコミが入る。
「……ハヅキ、まだ俺は説明をしてもらって無いぜ?さっきのは一体どう言う事なんだよ?」
「……。」
ですよねー。どさくさで忘れてくれないかな〜とか思ってたけど無理ですよねー。
「……まぁ、さっき蹴ったのは悪かったよ。」
「そう言う事じゃねぇよ!なんだよさっきの黒いのはよ!あんなの見た事ないぞ!」
まぁ、そうだよな。
俺は観念して正直に転移の魔法について話を始める。
「はぁ……。御察しの通りさっきのは転移魔法だよ。」
「!?やっぱり……!」
ガルムを始め、ケイトやシルヴィア、ランにエリルまでもが息を飲む。
「イメージが難しかったり、魔力の消費がキツかったりするけど、まぁ使えない事はない。」
「……ハヅキは時空魔法の適性があるって言うことか?」
「そうなるね。」
「マジかよ……。」
俺が態々こんな事を話し出したのには理由がある。
これから俺たちは1万もの魔物の大群と戦う事になる。
普通に考えて勝ち目なんかはない。多分、集まる冒険者もそんな考えの奴が多いと思う。
悲観した考えのまま戦場へ出れば、迷いを生み、動きが悪くなる。そうなれば敵の攻撃をもらってさらに動きが悪くなってと悪循環だ。
そうなれば勝ち目は無い。そのため、みんなに希望を持ってもらうために俺が旗頭になろうという訳だ。
俺やララの命が一番大切なのは変わらないし、譲る気もない。だけど、俺たち二人で1万もの大群を相手には出来ない。他の人の手を借りるしかない。
それなら街を見捨てれば良いと思うかもしれないが、それも出来ない。
俺の感情がそれを許さないと言うのもあるけど、現実問題、この街が陥落すればこの国がヤバイと思う。
この街からそう遠くない場所にはあの碌でもない国、皇国がある。
この街が堕ちれば間違いなく混乱に乗じて戦争をふっかけてくるに違いない。特にこの国に思い入れがある訳では無いが、せっかく来た異世界でララと仲良くなって、想いまで通じ合ったんだ。
種族を気にせずに一緒に居られるこの国はとても居心地がいい。同じ様な国は恐らく無いだろう。そうなれば俺たちは居場所を求めてあちこちへと彷徨う事になってしまう。
まぁ、拠点を手に入れたら色々な場所へとゆっくり旅をするつもりではあるけど、その拠点にしようとしている国が無くなってしまえば如何しようも無いと言う事だ。
「そんな俺がいるんだ。1万の軍勢くらいどうって事はないだろう?」
「……っ!?そう言うことか。態々あんな目立つ魔法を俺たちの前で使ったのはそう言う事か。……期待してるぜ、ハヅキ。」
「おう。」
どうやらガルムは俺の考えが分かったようだ。こいつ脳筋に見えてこう言うところは頭が回るんだよなぁ……。それとも戦闘狂だからこそ、力の誇示というところに発想が至ったのか?
まぁ、どうでもいいか。
さぁって!いっちょ頑張りますか!
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