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わくわく異世界冒険?  作者: りんごはるさめ
3章
83/102

75話 龍吟虎嘯の刃

本来は前話と一纏めにする予定でしたが、思ったよりも長くなってしまったので其々で1話にしました。

長いと片手間に読めないですしね。


1月10日に一部改稿しています。


 75話 龍吟虎嘯(りょうぎんこしょう)の刃


 カランカラン


「グレイヌさんおはようございます。」

「おはようございます。グレイヌ様。」

「おう、ハヅキか!もう出来てるぞ。取って来るから少し待ってろ。」

「分かりました。」


 俺たちが店の中へ入るとグレイヌは直ぐに気づき、奥へと物を取りに行った。

 グレイヌが奥へと引っ込む事数分、黒っぽい包みを持って帰ってきた。


「待たせたな。これが例の防具だ。」

「……?俺が渡した素材って毛皮でしたよね?」

「おう!流石ランパートグリズリーの毛皮はいい防具になるぜ。」

「毛皮要素が皆無なんですが………。」


 包みに中にあった防具は話をした通り皮鎧とロングコート、それと追加でお願いしたブーツがしっかりと仕上がっていた。

 しかし、目の前にある装備は俺の想像していた全体がファーの様にフサフサした皮鎧やコートとは違い、よく見かける綿や絹なんかの様に編み込まれてささらとした手触りの物だ。

 え?どうなってんの?まさか、毛を一つ一つ編み込んだのか!?……いやいやいや、流石にないか。それだとこんなに早く仕上がる訳が無い。しかし、だとするとどうやって仕上げたんだ?

 俺が疑問に思っていると、グレイヌの笑い声が耳に入った。


「ガハハハ!いい反応だぜハヅキ!初めて俺に発注する奴は大抵そんな反応だ。」

「……と言う事は何か裏があるんですね?」

「おう。この防具は錬金で作ってあるんだ。」

「錬金ですか?」

「そうだ。鍛治師で錬金をする奴は珍しいだろうが、慣れればこっちの方が良いモンが作れるし速い。」

「へー、そうなんですね。」

「まぁ早速装備してくれ。違和感があればこの場で直すから。」

「分かりました。」


 俺は言われた通り元の装備を空間魔法インベントリに戻して新しい装備を身に付ける。

 魔眼の情報ではこの装備のレア度は5、結構いいものだと思う。装備品だし、もともと体にフィットする感じはあるんだけど動きやすい。

 なんというかあまりゴツゴツしていないせいか体の動きを邪魔しない感じがする。これはいいものを作ってもらった。

 それにしても錬金かぁ。

 ネトゲとかだと鍛治に錬金が必要になるのは定番なんだけど、アニメやラノベではあまり聞いた事が無かったから意外だったな。

 一応言っておくが、グレイヌの右腕が機械鎧(オ◯トメイル)になっていると言うわけでは無いぞ。


「問題無さそうです。これはいい装備ですね、ありがとうございます。」

「そうか、そりゃ良かったぜ。」

「ハヅキ様、とてもお似合いになってますよ。」

「お、おう。ありがとう。」


 急にララに褒められたものだから少しどもってしまった。慣れないなぁ。まぁ昨日の今日で慣れる筈がないか。ゆっくり行こうゆっくり。

 俺が一人、ゲンナリしつつも幸福感を胸にしていると、グレイヌがララの事を注視し始めた。……なんだ?ララはやらねぇぞ?


「そういえば嬢ちゃんもいるんだったな。……なんだ?見違えたっつうか、別人の様じゃねぇか!」

「ありがとうございます。ですが、私はまだまだ若輩者です。もっと精進しないといけませんから。」

「……そういうレベルじゃねぇと思うんだがなぁ。」


 あぁ、そう言う事ね。ララに見惚れてた訳じゃないのか、良かった。それは置いておいて、これは流石グレイヌと言うところか。まぁ初見でララの素質を見抜いていたし当然といえば当然か。


「グレイヌ様がそう仰るのであれば私の師匠が良かったのでしょう。」

「あん?ハヅキが鍛えたんじゃねぇのか?」

「いや、俺じゃないですよ。」

「はい。信じて頂けるか分かりませんが、私の師匠はオフィーリア様です。」


 人外オブ人外。

 ララに言わせれば同じSランク冒険者の中でもオフィーリアは格が違うらしい。

 そんな人に鍛えられたなんて言っても普通は信じたりしないだろうが、グレイヌの反応は少し違った。


「オフィーリア!?あのじゃじゃ馬娘が師匠だと!?」


 え?じゃじゃ馬娘?何?どういう事?……まさかこの人が父親!?

 …………いやないわ。ララと同じエルフって言ってたしまさか髭面じゃないだろう。髭面の女性エルフとか………男の夢を壊さないでくれよ。


「えーっと……師匠がじゃじゃ馬娘ですか?」

「おうよ。なんせあいつが新人冒険者だった頃から知ってるからな。」

「!?そうなのですか!?」

「おう。その頃からあいつらの武器を作ってやってたんだ。今オフィーリアが持っている武器も俺が作ったモンだぞ。」


 これは意外な繋がりだな。……ていうかそうなるとグレイヌは一体幾つなんだよ。エルフよりも長生きなドワーフなんて普通じゃないだろ。

 俺の考えが顔に出ていたのか、グレイヌは苦笑い混じりに答えた。


「この話をすると毎回聞かれるから先に言うがな、俺はハイドワーフなんだよ。だからそこらのエルフよりもずっと長生きだぞ。」

「………へぇ、そうなんですね。」

「ハイドワーフというと旧アルビオン連合王国では旧評議会の議員だったはずでは?」


 え?なに?評議会?議員?て事はこの人偉い人だったの?あと旧あるび……?ってどこよそれ?


「ガハハハ!昔の事だ。それに俺はそんなチマチマした事は嫌いなんだ。それより今日は嬢ちゃんの防具も揃えに来たんだろ?……まぁ、その様子じゃ必要がなさそうだがな。」


 そうだ武器がいるんだった。疑問は残るけど、目的を果たさないと。


「防具は必要ないですが、武器は必要だと思うんですよね。良い物はありますかね?」


 俺がそう言うとララは腰から2本の短剣を抜き、グレイヌへと手渡す。

 そしてグレイヌは手渡された剣を見て低く唸った。


「………こりぁ、確かにな。今までよくこんなので戦えてたな。手入れはされてるが、安物の剣だ。いつ折れてもおかしくないだろうな……技術で誤魔化してはいるが限界だろう。」

「……やはりそうでしたか。まぁこの剣の寿命が縮んだのは間違いなく師匠のせいではあるんですけどね。」

「そりゃそうだろうよ。寧ろその武器であいつとやり合ってた事に驚きだな。……それが手加減された物だとしてもな。」

「ありがとうございます。」


 ちょっと思ったんだけど、ララのお師匠さんの扱い酷くね?いや、ララの特訓の話を聞いた限りではとんでもない人だろうとは思うけどさ。

 ……昔なんかしたのか?


「武器か……。それなら面白いモンがあるぞ。……こいつなんかはどうだ?」

「……これは。」


 そう言ってグレイヌがララに手渡した武器は2本の短剣だった。

 刃の長さは約20cmの片刃で鐔は無い。其々が白色と黒色に刀身までもが漆塗りのようにされている。その2本が並ぶ様は対照的でとても綺麗だ。



 名称:忍者刀、銘『白虎』

 分類:武器、短剣

 レア度:6

 付与:<共鳴>

 備考:『黒龍』と対をなす武器。『黒龍』と同時に使いこなす事が出来れば万雷なる力を得る事だろう。


<共鳴>……対をなす武器と共にある事で真の力を発揮する。


 名称:忍者刀、銘『黒龍』

 分類:武器、短剣

 レア度:7

 付与:<共鳴><新月>

 備考:『白虎』と対をなす武器。闇を生き、闇を行く物でなければ使いこなす事は出来ない。『白虎』と同時に使いこなす事が出来れば万雷なる力を得る事だろう。


<新月>……闇夜に身を置くものに深淵たる力を与える。人が深淵を覗くとき、深淵もまた人を覗いているのだ。



 確かに凄い武器だ。けど2本の武器を同時に使いこなさないといけない上に、黒龍の方はかなり癖がありそうだ。かなり使い手を選ぶ代物だな。

 ……というかこの黒龍はニ◯チェか何かかよ。名前といい中々に中二病を拗らせてんなぁ。


「……凄い力を感じます。特にこの黒い武器………もしかして魔力が宿っているのでしょうか?」

「スゲェな、感覚だけでそこまで分かるたぁオフィーリアの奴よっぽど鍛えたらしいな。」

「はい、何度も死にかけました。」

「ガハハハ!ならこいつらも使いこなせるだろう!銘は白虎と黒龍だ。」

「ありがとうございます。ですが……そのお代の方は………?」

「ん?んなモンいらねぇよ!……と言いたいがな、カミさんがキレるからなぁ。うーん……普通なら白金貨8枚9枚は必要なんだがな………。白金貨3枚でどうだ?これなら一応は黒字だしカミさんも怒鳴ねぇだろう。」


 ララが俺の方をちらりと見る。うん、これはつまりそれだけの金があるかって言う事だよね。…………ごめんなさい!もうそこまでの資金が残ってません!

 宿代で消えてしまいました!

 俺は小さな声で一言謝る。


「……ごめん。もうそこまで残ってない。」


 解消のない彼氏で本当にごめんなさい。


「……グレイヌ様、素材での支払いは可能でしょうか?」

「素材でか?あぁ、大丈夫だぞ。ならこっちの方に出してもらえるか?」


 俺とララはグレイヌに連れられ以前にも行った裏の工房へと足を運ぶ。

 え?なになにどうしたの?素材での支払い?一体どう言う事?


「白金貨3枚ですと……このくらいでしょうか?」


 顎に手を当て少し考えるそぶりを見せたかと思うと、ララはひらけた場所に小さな山ができる程に色々な魔物の素材と魔石を空間魔法から取り出した。

 ……え?一体どこで手に入れたんだ?……そういえば、魔物相手に訓練をした事もあったって言ってたなぁ。もしかして、その時の戦利品か?

 それにしてもなんと言うか……情けないなぁ、俺。


 そんな俺の心情とは関係なく、グレイヌは山積みになった素材を一つ一つ丁寧に吟味していく。


「こいつぁ……かなり状態が良いな!これもオフィーリアに教わったのか?」

「稽古の一環で魔物を相手にしたんです。どうでしょうか?これで足りるでしょうか?」

「これなら足りるどころかお釣りが出るぜ。」

「では残ったものはそちらで処分して下さい。……それでもこの剣を本来の価格で買うには届かないと思いますが。」

「俺が白金貨3枚で良いって言ったんだ。持ってけ。その方がそいつらも喜ぶだろう。」

「ありがとうございます。」

「俺からもありがとうございます。」


 俺たちは深々とグレイヌにお礼を言って店を出た。














今回のサブタイは『りょうぎんこしょう』の刃と読みます。

元々は『竜吟虎嘯』と書くのですが、話の内容に合わせて一部字を変更しています。

意味は『心が繋がっていると、お互いの言動が分かるよぉ〜』と言ったものと、

『竜や虎の咆哮みたいですげぇ〜響く!』と言ったものの2つ在ります。

今回は前者の意味合いですね。


ご視聴ありがとうございます。

ブクマ、評価ありがとうございます!


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別作品の宣伝を少し失礼します
お時間がありましたらこちらもお願いします
私、勇者召喚に巻き込まれて死にました?
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