68話 メイドオブメイドへの道5
お待たせしました。ララ編その5です。
このお話は書くのに苦労しました……。
ひょっとすると後日改稿するかもしれません
68話 メイドオブメイドへの道5
こんばんは、ラナンキュラスでございます。……夜になりました。ですが今回の稽古は夜通し行うようでして、今もなお稽古中です。ちなみに今は私の防御中です。
あれから何度か攻防を入れ替わって稽古をしましたが、結局私は攻撃中に一度も師匠を捉える事が出来ず毎回タイムアップを告げられています。
稽古を重ねるごとに自分の動きが良くなっているのは分かるのですが、結果がついてきません。その時に師匠に『もっと自然体になりなさい』と言われましたが、その意味が今でもイマイチ分かりません。
自然体……何も考えるなという事でしょうか?いえ、それだと何も出来ずに師匠にのされてしまいます。
私の動き自体は悪いものでは無い……と思います。何か悪ければ師匠の攻撃を凌げていたはずがありませんから……。でもそうすると……。
師匠の言葉が頭の中を駆け巡る中、突然周りの風の流れが変わった。
「……ッ!もう来ましたか!」
私は違和感を感じた左斜め後ろに投擲武器を投げつつ距離を取った。
「あら、私も手を抜いているつもりは無いんだけど……。本当によく気がつくわね。」
風魔法で加速させて投げた武器でしたが、難なく師匠の手に収まっています。……あれを手で掴んだんですか。
「師匠とはそれなりに手合わせをして頂いていますから。」
「うーん……。これは、風魔法?かなり薄く展開してるわね。………なるほど。気配を察知するのではなくて風の流れで気がついたと言うことかしら?」
「……。」
師匠の言葉に思わず顔が引きつります。
確かに師匠の言う通り、私は自分の周囲30〜40m位の距離を風魔法で感知しています。
師匠は気配を一切察知させませんが、実体は在ります。なので師匠が動けば周りの空気も動くため、その違和感を感じ取りさえすれば師匠の不意打ちにも対応できるのでは?と思い実践したのですが……。
こうも早く見破られるとは。これを使ったのは今回が初めてですよ?流石は師匠ですね。
「うんうん♪いいアイデアだと思うわ♪体が動けば周りの空気も変化する。その動きを感知して私の攻撃を看破したのね。」
「はい。」
「その発想はとても素晴らしいと思うわ♪あ!この魔法私も使ってもいいかしら?」
「え?はい、こんなものでよければどうぞ。」
「ふふふ♪ありがと♪」
どうやら気に入ってもらえたようです。……というかここまで高評価されるとは思いませんでした。
それと師匠、笑顔が怖いです。色々と思い出して少し震えます。
「それじゃ、攻守交代ね♪……そろそろ答えに辿り着いたかしら?」
「いえ、考えてみても師匠の言う『自然体』が分かりません。何か見落としているんでしょうか?」
「見落としという事では無いのだけど……。じゃあ一つだけアドバイスをしましょう。」
「アドバイスですか?」
「ええ、私が今教えていることは『これ』と言う正解が無いようなものなのよ。感じ方は人それぞれだから変に私の感覚を教えてしまうと、かえって難しくなってしまうかもしれないから。」
「なるほど。」
つまり先入観は捨てた方がいいということでしょうか?というか今は何の稽古をしているかは教えてくれないんですね。
「あなたはごちゃごちゃと考え過ぎなのよ。そのせいでせっかくの戦闘センスを殺してしまっているの。もっと自分の感覚を信じてみなさい。」
「感覚……ですか。」
「ええ。あなたの才能は私が保証するわ。素質だけで見れば私を超えるもの♪」
「師匠、意地の悪い冗談はやめて下さい。」
師匠は私に自信を持てと言いたいのでしょうが、そんな事を言われるとからかわれている気持ちになります。
「……本当の事なんだけどね。」(ぼそっ)
「どうかしましたか、師匠?」
「いえ、何でも無いわ。」
「……?」
変な師匠ですね。しかし、考え過ぎですか……。
「んー、攻守を交代するつもりだったけれど……そうね。うんそうしましょうか。」
「どうしたんですか?師匠?」
「さっき攻守交代するって言ったけど、ちょっと予定を変更しましょう。私が今から攻撃の仕方を見せるから、それを直に見てどうにか雰囲気を感じ取ってみなさい。」
「雰囲気を……ですか。」
「そうよ。大丈夫、あなたなら出来るわ。」
また師匠はむちゃくちゃ言いますね。
「それじゃあ始めましょうか。」
「……?このまま始めるんですか?」
今、師匠は私の目の前にいます。
私は不意打ちの稽古だと思っていたのですが、違うのでしょうか?
「私が隠れたらあなた、私を補足するのに神経を使って気配の流れを察知できないでしょう?」
「……確かにそうですね。」
「それじゃあ改めて♪」
師匠が笑顔でそう言うと一瞬、視界がぶれた。
震えが止まらず、口の中はカラカラに乾き、息が上がる。
本能が警鐘をけたたましく鳴らしている。今すぐ命乞いをしろと、目の前の存在は勝負を挑んでもいいような存在では無いと。しかし……
「あなたを殺すわ♪」
師匠がその言葉を紡いだ瞬間、言葉とは裏腹に私を押しつぶそうとしていたプレッシャーはまるで霧散した様に小さくなった。
師匠が1歩、また1歩とこちらへ歩み寄って来る度にその違和感は強くなっていく。
雰囲気を感じ取れとはこういう事だったのですね。
師匠がこちらへ来る度に殺気が弱く?なっている気がします。殺気を隠しているのでしょうか?……いえ、これは違います?かね。
「これは……?」
「わかるかしら?感覚に委ねて見なさい。何度でも言うわ。あなたなら出来る。」
私は師匠を見据えて先程感じた感覚に身を委ねます。
……もしかして師匠は殺気を隠していない?もしかして……?
瞬間、師匠が私の視界から消え、私の背中にナイフが突きつけられた。
「……大体分かったかしら?私からこれ以上のアドバイスはあげられないわ。あとは自分で辿り着きなさい。」
「はい、師匠。」
「それじゃ、今度こそ攻守交代ね♪五分後にまた会いましょう。……楽しみにしてるわね。」
師匠は私の耳元で囁き闇に消えました。
私は師匠が距離を取る間、先ほどの感覚を思い返していました。だんだんと殺気が辺りに溶けていく感覚。
……私にも出来るでしょうか?
「そろそろですかね。」
私は何か掴みかけている中、師匠の居場所を補足した。
ご視聴ありがとうございます。
ブクマ、評価ありがとうございます!
 




