65話 メイドオブメイドへの道3
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65話 メイドオブメイドへの道3
目を覚ました私に、師匠は一言だけ言いました。
「合格よ。」
「……え?」
正直なぜ?という疑問でいっぱいです。確かに師匠に1撃入れる事は出来ましたが、結局私はまた気絶させられて負けました。合格、つまり師匠の中では今の戦闘は及第点だったという事でしょうか?
「不思議そうな顔をしてるわね。さっきの戦闘だけど私の攻撃に対して攻勢に出る事で、私の無理な攻撃を誘い、誘導したわね。それだけで十分だったのだけれど、あなたはさらにフェイントまでかけて私の防御も崩した。私の状態を崩した上で攻撃をして十二分な結果を残したわ。普通ならあの時点で勝敗はついているもの。」
「ですが師匠。結局私は師匠に負けましたし、1本取れてないですよ?」
私がそう言うと師匠は大きくため息をついた。
「あのね……私とあなたでどれだけ力量差があると思っているの?私はあなたと同じくらいか少し上くらいの程度で戦っていたのよ?それなのに最後には少しとはいえ私に本気を出させたのよ?これで合格にしないなんて私はあなたの師匠を名乗れないわ。」
「……あ。」
師匠の言葉を聞いて思い出しました。
これはあくまでも稽古であって別に師匠に勝たないといけないと言うわけではありませんでした。
どうも稽古中は真剣になり過ぎて、勝つ事=1本の様に考えてしまいます。普通に考えれば師匠に1撃入れた時点で稽古は終了ですね。
「納得できたかしら。じゃあ次のステップに移りましょう。」
「はい。」
ここで休憩というわけはなくて次の稽古へと移る。
……まぁ、師匠の回復魔法のおかげで体力も余裕があるので、休みが欲しいというわけではないのでいいのですが。
「次は魔力による身体強化よ。知ってるわよね?」
「はい、知識としては知っています。」
「……?あなた気づいてないの?魔法での攻撃を許可した時の稽古では時々使っているわよ?」
「……え?」
「うーん、無意識ということかしら?」
この師匠の言葉には私が驚いた。何せ魔力による強化は高度な戦闘では必須と言える技術ですが、それを習得するには数年の修行が必要だと聞いているからです。魔力の扱いに長けたエルフですら数年かけてこの技術を習得し、ステータスが500を超えたところでようやく1人前だと言われて言われていましたから。
ちなみにSランクの冒険者になるにはこの技術が必須なようです。つまりこの技術の習得は人外への第一歩のようなものです。
そんな技術を出来損ないと言われ続けた私がすでに習得しつつある?一体どんなお伽話ですか。ご樹人様との子供に読み聞かせますよ?……非常に残念ながら種族が違うので子供を授かることは出来ませんが。
「んー、そうね。手っ取り早く見て感じた方がいいわね。」
師匠はそう言うと魔力を急激に高め体に纏った。
……すごい密度と圧力です。師匠は普通の普段着をきているはずなのに、まるで重装歩兵のような鎧を着ているかの如く圧力を感じます。
「あなたも魔力が見えているはずでしょ?まぁ最初はこんな感じで魔力を体に纏ってみなさい。そんなに難しくないから。」
「……分かりました。」
難しくないって……普通の人が聞いたら卒倒しますよ……。相変わらず師匠はスパルタです。
私は師匠に言われた通り魔力を練り上げ、服を着るようなイメージで体に纏う。
え?……出来た。
流石に師匠のように分厚くとはいきませんでしたが、私の体に膜のような感じで魔力を纏えています。
「うんうん♪無意識とはいえ使っていたわけだしこれくらいはできるわよねー。」
「……。」
感動もあるにはあるのですが何故か釈然としません。納得が出来ないとでもいえばいいのでしょうか?……まぁ師匠のスパルタのおかげという事にしましょうか。
「じゃあ次はその纏った魔力を動かして見ましょうか。まずはこんな感じで右手に集めてみて。」
師匠の言う通りに魔力を右手に集めてみるが難しい。
出来なくはないですが、集中してやらないと今の状態を保つ事すらままなりません。……よくこんな状態で激しい戦闘ができるものですね。これも人外が人外たる所以でしょうか?
「そうそう、その調子♪その動きと感覚をしっかりと覚えてね。慣れれば必要か箇所に必要な分だけ流せるようになるから。こんな風に。」
そう言って師匠は右ストレートを打ちましたが目で追う事すら出来ませんでした。ただ、魔力の残滓がまるで流星のように流れるだけ。……これを私にもやってみせろと?
思わず顔が引きつります。
「今のもただ拳に魔力を集めただけじゃなくて、拳を打ち出すのに使う腰、肩、肘、手首って段々と加速させて打ち出したものなの。だから無駄が少なくて破壊力も普通に打つよりもずっと高いわ。」
「……なるほど。」
「大丈夫。この程度すぐに出来る様になるわよ。私が教えるんですもの。……さて覚悟は出来ているかしら?愛弟子ちゃん?」
「…………はい。」
この日から普通なら数年かかる様な内容の修行を私は数日で叩き込まれました。……あれ?今までとあまり変わっていませんね。
この訓練は魔力を使うので非常に疲れます。ですが……疲れたら回復魔法で回復され、魔力が尽きそうになったらMPポーションをがぶ飲みさせられて1日中稽古をつけられ……つけて頂きました。私が望んだ事ですからね。
師匠からダメ出しをされ、アドバイスを貰い、褒められてとしていると、段々と纏える魔力が増えていき、8日目には意識せずとも魔力を動かせる様になりました。9日目になると魔力を纏った状態での戦闘訓練を散々する様になり、10日目になって体の動きに魔力が追いつく様になりました。
9日目に魔力の防御が切れかかって何度死にかけた事か……。正直今までの稽古がお遊びに感じる程厳しかったです。
そして私は異常に気がつきました。魔力量がとんでもない量になっているのです。それこそ私の傷を治してくださった時のご主人様とそう変わらないのでは?と思うほどに……。
「……師匠。私の魔力量が今までの比では無い程に多くなっているのですが………。」
「んー?あーその事ね。人間は筋トレをすれば筋肉がつくでしょ?それと同じよ。痛めつけて痛めつけて痛めつけた分大きくなって戻ってくるの。あなた私との稽古でレベルが上がっているのには気が付いているわよね?魔力は筋肉とは違って限界まで追い込んだ分がレベルアップ時にさらに大きくなって増えるの。」
「そうなんですか。」
「あなた、この数日で何回限界を超えたかしら?それを考えればまだまだ伸びるわよ?」
「………そうなんですか。」
「まぁ彼に付いて行こうと思ったらこの程度できないと無理だし、頑張りなさい♪」
「はい。」
言われなくても分かっています。そのために私はここへ来たのですから。
私がご主人様への想いと決意を新たに強くしたところで師匠が思い出したとばかりに手を叩きました。
「あっそうそう。明日からは外で訓練するわよ。」
急ですね。でもなんで外なんでしょうか?
「外で、ですか?」
「最初の予定ではこの魔力訓練を最終日までになんとかして仕上げるつもりだったのだけれど、あなたが予想以上に優秀だったのよ。……やっぱり特殊魔法を使うからか魔力の扱いがとても上手なのかしら?」
「そう……なんでしょうか?」
正直自分ではわかりませんが師匠が言うなら多分そうなんでしょう。でもそれが外で訓練する事と何が関係が……?
私がイマイチ、ピンとこなくて首を傾げていると師匠がとびきりの笑顔で言いました。……あぁこれはまずいです。
「そういうことで出来る事ならやれるだけやっちゃおうと思ってね♪それだから2日ほどここへは帰ってこないから準備をするように♪」
「……はい。」
師匠と出会ってまだ1週間と少ししか経っていませんが短いながらも分かった事、というよりも私の本能に刻み込まれた事があります。
それは……『シショウ、エガオ、ヤバイ』という事です。師匠が笑顔で訓練するときは本当に危険です。それで何度死にかけた事か……。むしろこの修行中何度か私は死線を超えたのではないでしょうか?
……ご主人様。私は残り数日間になった修行を生きて終える事が出来るのでしょうか?私頑張ります。
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