59話 熊さんのその後と意味深な顔
最近は昼と朝夜の気温差が厳しいですね
皆さんも体調には気をつけてください
しょうもない話ですが私は最近朝起きると喉が痛くて仕方がないですw
11月7日に改稿してます
59話 熊さんのその後と意味深な顔
「ん?もう終わりなのか?」
答えは返ってこない。俺は目の前で萎縮してしまっているランパートグリズリーに対し呟いた。
最初の威勢はどこへ行ったのか、この森を蹂躙し我が物にしていた暴君の姿は見る影もない。
何というか、拍子抜けというか思ったより弱かったな。
正直なところもっと苦戦するかと思っていたんだがまさか素手だけでここまで圧倒するとは思わなかった。<魔力制御>すげぇ……。
俺は森の熊さんことランパートグリズリー相手に<魔力制御>と<体術>のみで戦っていた。
始めのうちは武器を使わないのだから全力でいくべきかと回避に重きを置いて様子を見ていたのだが、どうにも全力で攻撃するとそのまま倒してしまいそうな気がしたので、少し手加減をして攻撃したのだが正解だった。
ランパートグリズリーは2本の後ろ足で立ち、左右の前足を振り回して鋭い爪で攻撃してくる。
俺はその攻撃を中へ踏み込みながら往なし懐へと潜り込んだ。
俺とランパートグリズリーでは体格差が大きいのでこの超至近距離では腕が振り回せないと判断したんだろう。奴は強靭な牙と顎を用いて噛み付こうとしてきた。
しかし折角懐に入ったのだ、そんな攻撃を許すはずがない。俺は飛び込んだ勢いを殺さず、そのまま発勁のような攻撃を人間でいう鳩尾の辺りに叩き込んだ。
その衝撃でランパートグリズリーの体は少し浮き、その衝撃で奴はたたらを踏む様に後退した。
昔見たカンフー映画のやつを見様見真似でやったからかあまり上手くはいかなかったな。本来の発勁なら衝撃が完璧に抜ける為体が浮いたりはしない。
うーん、スキルがあっても見様見真似じゃ難しいか、それに練度も低いし……。こんなもんか?
そこからの戦闘は素人目から見れば一進一退の攻防に見えなくもないが、分かるものからすればただの茶番にしか見えないものだ。
ランパートグリズリーがどうにかその牙を、爪を俺に届かせようと振り回すが届かない。それどころかその合間を縫っていくらか攻撃を受ける始末だ。
一度距離を取り、そろそろ潮時かな?そう思ったところに後ろから声が掛けられる。
「ハヅキ!加勢する!」
どうやらノルンたちは無事にゴリラたちを倒せた様だ。
あっちも終わったし、こっちも終わらせるか。
ノルンの声に反応したのかランパートグリズリーが4本の足を地につけ突進してくる。その勢いは最初ゲイルが受け止めようとしたものと比べると明らかに遅い。
俺は1歩2歩と前に出て、すれ違いざまにランパートグリズリーの首を落とす。
今回は全力で強化をして抜刀したためか、刀を鞘に収め鍔が鳴るまでその勢いは止まらずノルンたちが事構える気配がした。
しかしゲイルが正面に出たところでランパートグリズリーの首と胴体は離れ、突進の勢いも止まり断面から血が吹き出している。……うわぁグロいなぁ。
「お疲れさま、随分早く片付いたな。」
「……あ、あぁ。ハヅキが腕を落としてくれてたから楽だったよ。……ハヅキの方は大丈夫だったのか?」
「まぁな、見ての通り大した怪我もないよ。」
俺は肩をすくめながら両手を広げる。実際、色々と試しながらの戦闘だったにもかかわらず全くもって危なげが無かった。
それにしてもノルンたちも流石だ。
Cランク冒険者と言われるだけあってあのくらいの敵に遅れをとったりする事はない様だ。
「さて、これで依頼は完遂したと思うけどどうする?」
「どうするっていうのは?」
「いや、こいつらこのままにしておいてもいいのかなーと……。」
「えっ?ハヅキは持って帰らないのか?ランパートグリズリーなら魔石も良いものだし、素材だってこれだけ状態がいいんだ。かなりの高値で買い取ってくれるだろう。」
あっ、やっぱそうなのね。元々魔石は売るつもりだったけど素材も売れるのかぁ……説明されてたっけ?されてたような……ってあれ?ゴブリン・ハイロードの時はどうだったっけ?そんな話聞いてないぞ?……ま、まぁあの時は気を失ってたしそれどころじゃなかったってことにしとこう。うん。
「それに今のハヅキの装備ならこのランパートグリズリーの毛皮を使って装備を作っても良さそうだと思う。……その装備何か魔法が付与してあるってわけじゃないんだろ?」
「あぁ、本当にどこにでもある様な装備だし、ノルンの言う通りこいつから装備を作ってみるかな。」
話を切り上げてさっさと解体を始める。<魔力制御>による強化を覚えたからか以前よりもスムーズにナイフが通る。
粗方解体が終わり魔石を取り出したところでそれをノルンに放り投げる。
「ほいっ。それはノルンたちにやるよ。今回の戦闘は俺が引き起こしたもんだしな、迷惑料って事で。」
慌てた様子で魔石を受け止めたノルンはものすごい勢いで首を振りながら突き返してきた。
「いやいやいや、これは貰えない。ランパートグリズリーはハヅキが討伐したんだ。これはハヅキが持っておくべきだろ。」
「さっき言ったろ、迷惑料だって。報酬の足しにでもしなよ。」
「……本当にいいのか?このクラスだと金貨5枚はするぞ?」
あら、結構なお値段ですこと。
「あぁ、貰ってくれ。それに俺はこいつの素材を貰うし元は取れるだろ。」
「……そう言うなら有り難く貰っておく。ありがとう。」
ここまで言うとノルンは渋々と行った様子で受け取ってくれた。
貰えるもんくらい貰っときなよー、てか貰ってくれないと罪悪感で俺の心がマッハなんだよね……。小枝の罪は重い。
そんなやりとりの後、俺たちは最初に会った岩石地帯まで戻ってきた。森を出る途中何度か戦闘になったが特に強い魔物が出るといった事も無く、無事に戻ってこれた。
野営の準備をしてから夜の番をしているときにノルンが何か言いたげだったが何も言わずに夜はあけていった。
……な、なんだよう。俺はホモでもないぞ。
ノルンのなんとも言えない顔に一抹の不安を感じながらも俺は他のみんなを起こしに行った。
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