57話 森の熊さん
続きです。
……サブタイトルぇ orz
11月7日に改稿してます
57話 森の熊さん
ノルンが方針を決め、みんなが了承したところで移動を開始する。
一応言っておくがパーティーの指揮はノルンがとっている。俺がやらない理由は、ぽっと出の俺が指揮を取っても仕方がないとか、そもそも俺にパーティー指揮の経験なんてないとかあげだしたらきりがない。まぁ適材適所ってやつですよ。
移動を開始して数十分あまりにも強烈な違和感を感じ俺は口を開く。
「なぁ、これはどうなってるんだ?こんなにも魔物と遭遇しないなんておかしくないか?」
「……あぁ、中心に近づくにつれてどんどん静かになっている。正直嫌な予感しかしない。」
先ほどまで探索していた森の浅い部分では弱い魔物とは言えかなりの魔物と遭遇して戦闘になっていたんだが、中心へ移動を始めて最初の数分を除けば全くと言って魔物と遭遇しない。
敵と合わないなんて良い事じゃないか!なんて能天気に考えられる人はこの場にはいない。
そうして歩く事数分、先頭を警戒しながら歩いていたリーンが急に腰を落とし俺たちにも隠れるように指示を出した。
その指示を受けて俺たちは一度集まりリーンから話を聞くことにした。
「リーン、何があったんだ?」
「うん、この先からすごい血の匂いがする…です。」
「血の匂い?」
「はい、でも人の匂いじゃないと思う…です。少し獣臭いから多分魔物…です。」
血の匂いと聞いた面々に緊張が走る。俺には全くそんな匂いは分からない……流石獣人だな。
「数は分かるか?」
「ごめん、分からない…です。混ざりすぎて何が何か判断が難しい…です。ただ、かなりの数…10体程度じゃ収まらないと思う…です。」
ノルンとリーンが話終えた後も誰も口を開いていなかった。
まだこの目で見たわけではないがおそらくそいつが今回の原因だろう。森の中心、つまり強力な魔物たちを10体以上倒した奴がそこにいるというわけだ。……うわぁ、行きたくねぇ。
「……行こう。」
「え?」
ノルンの言葉に思わず声が出てしまった。
「ここで行かないと森の異常はわからないままだ。それにもしそいつが原因だったとしても、誰も見てないから対策の立てようがない。」
「はい、まだこっちには気づいてない…です。潜伏して、様子を伺うくらいならできる…です。」
「確かに、対策が立てられないのはまずない。」
「そうですね。やばい相手なら即撤退、ということで良いでしょう。」
「……分かった。」
みんなノルンの意見に反対は無いようだったし、俺も面倒臭いという一心から反射的に言葉が出ただけだったため少し考えるふりだけして同意した。
リーンの先導の元警戒を強めながら先へと進む。そして俺たちでも血の匂いがわかるところまできたところでリーンから待ったの声がかかる。
「!?…あいつは、やばい…です。」
リーンの視線の先に目を向けると、15〜6mほど先だろうか。元々は木があったであろう場所が不自然に開けていて、その中心には臓物を撒き散らし原形をとどめていない魔物たちとそれらを貪るように咀嚼する真っ黒の熊のような魔物がいた。
「!?……ランパートグリズリーか。撤退だ。あいつは分が悪すぎる。」
「そうだな、俺のハンマーなら多少のダメージは与えられるかもしれんがそれでもとどめにはならん。」
「私も賛成です。Bランクの魔物をこの人数で相手取るのは自殺行為だと思います。」
どうやらあの熊の魔物はランパートグリズリーと言ってBランクの魔物らしい。確かこの森で最も強い魔物でCランク止まりだとノルンが言っていたからこいつが今回の原因で間違い無いだろう。
ただ、ステータスを見てみるとだいぶ弱く感じる。それこそゴブリン・ハイロードには全く及ばないくらいだ。
名前:ランパートグリズリー
LV:31
HP 1629/1629
MP 15/15
STR 512
VIT 371
DEX 78
INT 19
AGI 356
スキル:<身体強化LV3>
「ハヅキも撤退でいいか?」
「あぁ、問題ない。」
わざわざそんなこと聞かなくても……こんなに撤退の意見が出ている中『俺は戦いたいぜヒャッハー』なんて言えんわ。
全員が頷きすぐにこの場から離れようと動いた時それは起きた。
……パキッ!
「「「「「……あっ!」」」」」
その音は前を注視していたために足元がおろそかになった俺が小枝を綺麗に踏み抜いた音だった。
決して大きい音ではなかったが、耳が痛くなるほどの静寂に包まれていたこの場においては十分すぎる大きさだった。
俺ー!何やってんの俺ー!ごちゃごちゃと鎧を着たゲイルですら音を立てていないのに、一番の軽装の俺が何やっちゃってんの!?そんなお約束は今はいらないんだよ!
命を張った高度な自分のボケに心の中で自分でツッコミを入れるが時すでにお寿司。森の熊さんはこちらに気がついたようで雄叫びをあげながらこちらに向かってきた。
「くそっ!気づかれたか!逃げるのは無理だ!ここで応戦する!」
「「「了解!」」」
どうやらノルンたちも逃げられないと悟ったらしく戦闘に入るようだ……すみません。
ゲイルが前に出てランパートグリズリーの突進を受けようとする。その時俺の<索敵>に反応がかかった。
「…っ!ゲイル!下がれ!」
俺は咄嗟に叫びゲイルに指示を出す。
本来こういった指揮系統を無視した指示は混乱を招くだけなのだが、俺の声に含まれた意味を察したのかゲイルはすぐに後退した。
するとゲイルの進行方向に『ドゴォッ!』という轟音と共に森のゴリラくんことバーナナゴリウスが2頭現れた。
「助かった!だが…まじかよ。」
「……これは。」
「流石に、まずい…です。」
「これは覚悟を決めないといけませんかね。」
俺たちの視線の先にはどこからかやってきたバーナナゴリウス2頭と魔物を貪っていたランパートグリズリー1頭がこちらを睨んでいた。
ゴリラ2頭はおそらく仲間の仇を取りに来たんだろうが、それよりも先に邪魔者の俺たちを排除することを優先することにしたみたいで、仇の熊を無視して俺たちを睨んでいる。
それは熊も同じようで食事の邪魔をした俺たちを最優先で始末したいみたいだ。今も低く威嚇をして俺たち、というか俺を射殺す勢いで睨んで来ている。
そんな互いの利害が一致したように魔物たちは俺たちへと襲いかかって来た魔物たちを前に俺はとても冷静だった。
うーん、これは熊とゴリラどっちをノルンたちに受け持ってもらった方がいいかな?……やっぱゴリラかな?熊なら俺の実験にも少しは耐えれるかもしれないし…。
おそらくノルンたちだけでは熊の討伐は難しいだろう。それに加えてゴリラが2頭もいるのだ。そんな中戦闘をして生きていられる可能性は薄いと言わざるを得ない。まぁ今回は俺がいるため大丈夫なんだが。(この状況を俺が作ったことは棚に上げて……
ともあれノルンたちでは熊の相手は難しい。けどゴリラなら大丈夫。それなら俺が熊の相手をして彼らのゴリラを任せた方がいい、というかそうするしかないだろう。
会ったばかりとはいえ寝食を共にした人たちが死んでいくのを見るのはいい気持ちではない。
「ノルン、ランパートグリズリーは俺がやる。他は任せた。」
「ハヅキ!?」
俺はノルンにそれだけ言い残してランパートグリズリーへと向かって歩く。
「邪魔だ。」
俺の行く手を阻むようにバーナナゴリウスたちが腕を叩きつけるように攻撃して来たので、腰に吊るした刀、黒揚羽を抜きすれ違いざまに奴らの腕を1本ずつ切り落とす。抜刀術だ。
これでノルンたちもだいぶ戦いやすくなるだろう。
俺がバーナナゴリウスたちの間を抜けてランパートグリズリーの前に出た時、後ろからノルンたちの声が聞こえたため俺の攻撃を皮切りに戦闘が始まったんだろう。
「さて、熊さん。少し実験に付き合ってくれよ?」
俺は雄叫びをあげ威嚇してくる熊を前に口角がつり上がるのを我慢できなかった。
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