56話 Cランク冒険者たちの実力
ちょっと説明っぽい回になってしまいました。
長くなったので分割して投稿します。
56話 Cランク冒険者たちの実力
森の調査はとても順調だ。魔物の量は多いものの、ゴブリンの森の時のような様子は見られない。実際何度か戦闘になったが問題なく倒している。
そしてやはりというか、ノルンたちのパーティーは装備を見たときに思った通り結構なやり手だった。
ノルンはオーソドックスに片手剣と盾に軽めの金属鎧の装備で、臨機応変に攻撃に回ったり防御に回ったりと相手によって立ち回りを変えていて戦局をよく見ている。
武器の扱いもうまく、特に盾の扱いが上手い。
『バーナナゴリウス』という、腕力と手数の多さが強みのDランクのゴリラみたいな魔物と対峙した時も重たい相手の攻撃を盾で受け流した際も体が全くぶれていなかった。そして大振りになったところを見逃さずに攻撃して討伐していた。
あの盾捌きを正面から破るとなるとララでは厳しい気がする。
ゲイルはその風貌の通り重戦士だ。小さいながらもその身をガチガチの鎧で固めて自身よりも大きなハンマーを振り回すいわゆる脳筋とも言うが。
彼の役割はゲームで言うところの壁役なんだろうが、ただ立っているだけでは収まらない。彼が魔物に向かって一振りすればオーク程度なら吹っ飛ばせると言っていた。
そして何より特筆すべきは彼の器用さだろう。ドワーフの特性なのか彼はかなり器用で、馬鹿でかいハンマーを扱っているにもかかわらず狙いがすこぶる正確だ。
……ちなみにオークはファンタジーでもおなじみの魔物だがこの世界でもだいたい同じだった。でかい体長に豚のような醜い顔で丸々とでた太った腹をしている。そして雄が多いようで、繁殖の際には好んで人間の女性を襲うらしくリーンとセーラが見るからに嫌そうな顔をしていた。
っと話が逸れたな。
そんなゲイルに対してリーンは獣人の身体能力の高さを生かした斥候タイプだ。索敵に隠密、支援とこのパーティーを影から支えている。
戦闘時にもその身体能力の高さは生かされていて縦横無尽に戦場を駆ける姿はニンジャを彷彿とさせる。アイエー!?忍者?忍者ナンデ!?……このネタ前にもやったな。
彼女はMPが少ないながらも魔法も使えるようで、そのことが彼女の戦闘の幅をかなり広げている。タフな相手ならバフと撹乱、雑魚が多数なら自前のスピードと手数を生かし前線を作る。
こういったオールマイティーに動ける人材がいるかいないかでパーティーの安定感はまるで変わってくるだろう。
最後のセーラだが彼女はこのパーティーの生命線だろう。
それは彼女の役割ゆえなんだが、彼女はRPGで言うところの僧侶に近い。……どちらかと言えば賢者か?光魔法で仲間の治療を行い、各種バフを撒き、敵によっては攻撃系の魔法を使う。
このパーティーには彼女しか回復役がいない。各自ポーションは持ってはいるが数に限りはあるしその数も多いわけではない。
つまり彼女が倒れると言うことはこのパーティーの核が無くなる事と等しい。回復役はそれくらい重要度と需要が高い。
彼女はそのことを十分に理解しているらしく無駄なMPは使わないし、無理もしない。その辺りは流石Cランク冒険者といった様子だ。
とまぁ個人で見てもかなりの実力を持っている彼らだが、その真価はパーティーでの集団戦闘にこそ発揮される。
ゲイルが前線を支え、ノルンが戦局を読み指示を出す。リーンは前衛二人の邪魔にならないように支援し、セーラがパーティー全体のバックアップをする。
言葉にするとたったそれだけなのだがその技術は目を見張るものがある。
Cランク冒険者は伊達じゃない!
……てかCランクってこんなにすごい奴らがうようよいんの?そりゃ成功者って言われるわけだ。
そういったノルンたちの活躍の甲斐あって森の調査もはや3日目、最終日だ。
ここまでの調査で分かった事はいつもにはない小さな魔力の淀みがあるという事と、一体一体は弱いながらもそれなりの数の魔物がいると言う事の2つだ。
ゴブリンの森の時ほど分かりやすい異常は今の所ないがこう、いや〜な感じがひしひしとする。それは俺だけではないようで、こんなにもスムーズに探索が進んでいるにもかかわらず4人の雰囲気もどこか重たい。
昼近くになってきたと言う事で一度隊列を解き休憩する。
ちなみに隊列を組むときは進行方向に対し先頭がリーン、中央にセーラ、その右翼と左翼をゲイルとノルンが守り最後尾が俺だ。
リーンが先頭なのとセーラが中央なのは分かる。彼らパーティーの目と心臓だ。だが俺が最後尾なのはどうなんだ?
確かに俺なら索敵もでき、戦闘能力も高いので最後尾を任せるにはうってつけなんだが…普通会って数日の人間に背中を預けるか?少なくとも俺には無理だ。
まぁ俺が裏切る理由も動機も利益も何も無いため考えるだけ無駄といえば無駄だなんだが。
「なぁ、やっぱおかしいぜこの森。」
ゲイルの言葉にみんな頷き同調する。……あっ俺も一応頷いてるよ、一拍遅れて。
「そうだな、小さい規模だけど所々魔力が淀んでる。だけど今の所バーナナゴリウスを除いて強力な魔物には遭遇していない。……少し嫌な予感がする。」
「私も同意見ですね。この森はフォレストウルフなんかの弱い魔物が多く生息しているとはいえ、普段はもう少し強い魔物と遭遇します。」
「はい、今まで遭遇してきた魔物たちはどこか、逃げている?感じがした…です。」
「だよなぁ。」
そう言って全員神妙な面持ちで黙ってしまった。
「……ハヅキはこの状況をどう思う?」
不意にノルンが俺に話を振ってきた。おいおい俺に何を期待してるんだ?分かるわけないだろう?
「……この状況じゃなんとも、判断しようにも情報が少なすぎる。森の中心に行ってみるしかないと思う。」
「そうだよな。」
なんとも月並な事しか言えないがそれもまた事実なのでライルも納得したようだ。
俺たちはこの3日間森の中心を避けるように探索してきた。
魔物は各自縄張りを持つのが一般的らしく、それはこの森でも変わらないらしい。
こういった森では一般的に森の中心へ行くほど強い魔物が巣食っているんだそうだ。言わずもがな森の中心を避けてきたのはこれが理由だ。
この異常事態の原因が中心にいる可能性は高いがその分危険も伴う。そのため他に原因がないかを先に探索したと言うのが今の現状だ。
わざわざ危険なところに行かずとも原因がわかればその方がいいしね。
「……分かった。森の中心へ行ってみよう。この状況だ、何があるかわからないから各自警戒は怠らないようにしよう。」
「あぁ、分かった。」
「うん、分かった…です。」
「はい分かりました。」
「了解。」
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