49話 可愛さには勝てなかったよ……
続きです。
秋刀魚ノルマは……諦めたよ(;д;)
何のことか分かった視聴者様は食べたパンの枚数分だけ腕立て伏せをして下さい。
11月6日に改稿してます
49話 可愛さには勝てなかったよ……
微妙な空気の中戻ってきた俺は真っ先にララを探した。まぁあれだよ、この微妙な空気をなんとかしたかったんだ。
少し辺りを見渡すと直ぐにララは見つかったが一人じゃない。誰かと話をしている?何故疑問形かと言うと、黒づくめが二人してコソコソと目立たないようにしているからだ。日本なら通報ものだぞ。……日本じゃなくてもアウトか。
と言うか、真面目な話あいつは誰だ?何か揉め事って雰囲気では無さそうだけど……。考えても仕方がないか、突撃あるのみ。ypaaaaaaa!
「ララー、お待たせ〜。」
ララは俺が声を掛けた事で気がついたようで、俺を見つけるとにこりと笑って返事をしてくれた。流石『まいえんじぇるララたん』だぜ。……気持ち悪いな俺。
気持ち悪い俺は置いておいて、そこから先は俺の脳内シュミレーションとは違う展開になった。
普通はさ、『お待たせ〜』『おかえりなさいませご主人様』『あれ?そちらに方は?』『はい、こちらは…』みたいな流れで紹介されるような想像するでしょ?てかしたんだよ。
でも現実は……俺が声をかけた途端黒ローブは何処かに去ってしまったよ……。
あーはいはい、あれか。俺の知ってる話題でクラスメイトが盛り上がってたから声掛けてみたら場が急に冷めて解散する感じのやつね?慣れてる慣れてる……あれ?口の中がしょっぱい。
「あの、ご主人様もうお話はよろしいのですか?」
「え?あ、あぁもう終わったよ。……聞いてもいいか分からないけどさっきの人は?」
「先ほどの方ですか?あの人は私の同族、と言えばいいのでしょうか……。」
同族ってことはエルフだよな?何でそこで詰まるんだ?
「あの……以前私は村では疎まれた存在だったと申したと思うのですが………。」
「……うん。覚えてるよ。」
忘れられるはずがない。あの村のせいでララは辛い目に遭ってきたんだ。
しかし、だからと言って俺がどうこうできるわけではないという事が悔しさに拍車をかける。
「あの人もエルフなのですが実は私と同じような境遇にあっていまして……。」
「それは……。」
そうだよな。辛い目に遭ってるもんな……。もっと俺がしっかりと……
「恥ずかしい話、エルフ迫害あるあるトークで盛り上がってしまいまして……。」
「……うん?」
あれ?雲行きが……。
「最終的にご主人様に喜んで頂ける夜伽の方法ベスト5を……」
「ストーップ!」
それ以上いけない!まだ昼過ぎだから!その手の話はもっと夜が更けてからじゃないと色々な方面に怒られるから。そんな可愛く首を傾げてもダメです。いや、本人は疑問に首を傾げただけなんだろうけど。
俺は大きく咳払いをして話を無理やり区切った。
「大体話は分かったよ。それじゃ精算を済ませて宿を取ろうか。」
「あっ、あのご主人様。まだそのことでお話がありまして、その……。」
ララは続きの言葉が言いにくい事なのか俯いて黙ってしまった。
……え?何この空気?さっきまで顔を赤くしながら下ネタ言ってたのに急に顔を青くして黙っちゃったんですけど。急すぎない?会話のアップダウンが激しすぎない?ジェットコースターか何かなの?……ごめん。この例え面白くなかったわ。
「分かった、その話はゆっくりと聞こう。だからまずは落ち着ける場所に行かないとね。」
「……かしこまりました、ご主人様。」
俺たちはアリアのところに行きこの街までの旅で得た物の精算をした。内訳は主に、というか盗賊から奪った武器や道具類、懸賞金のみだが。まぁ、10数人くらいの盗賊を倒していたので結構な金額になったのは嬉しい臨時収入だ。あとは……。
「アリアさん。この街でおすすめの宿ってありませんか?」
「宿ですね。予算はどれくらいでしょうか?」
「え、予算ですか?特に上限は気にしなくてもいいと思うんですが……。強いて言うなら過ごし易いところがいいですね。」
どーも。予算を聞かれたのに条件を突きつけるお馬鹿ちゃんです。
「そうですねぇ、予算を気にしないのであれば『黄金色の盃亭』ですかね。料金は高いですがあそこは上流階級の方達も宿泊するくらい良い所ですから。宿泊するにはそれなりの身分が必要ですけどハヅキ様はBランク冒険者ですし何も問題はないでしょう。」
「そうですか、ありがとうございます。」
ビールかな?いや何がとは言わないけどさ。……久しぶりにグッと行きたいなぁ。
俺たちは『黄金色の盃亭』の場所を教えてもらいギルドを後にした。教えてもらった場所へと道を歩いて行くと心なしか商店街っぽい騒がしい雰囲気から高級住宅街みたいな厳か?な雰囲気へと変わっていった。
いや、高級住宅街なんて行った事ないから分からないんだよ。
周りの建造物も街の中心の方にある木造や石造りのものとは少し違うような感じがする。なんて言えばいいかな……レンガじゃなくて綺麗な石でできてるみたいな?なんだそれは。
「なんだか場違いな雰囲気だな。」
「確かに冒険者の方達はあまり好まなさそうな雰囲気ではありますね。」
「あー確かにそうだな。なんか『質より量だ!』って感じの人が多そうだしなっと、あれじゃないか?」
話をしながら歩いていると宿は見つかった。ギルドでの話が終わったのが昼過ぎだったのにもう夕方だよ。まぁ精算したりと他にも色々とぶらついたからな。
宿に入ると執事服?燕尾服?って言うの?パリッとした服を着た老紳士風な店員さんが声を掛けて来た。
……いや、怪しいものじゃないですよ?格好は不審者そのもの(初心者冒険者装備に真っ黒な外套)ですが善良な異世界人ですよ?ダメだこれ。
「黄金色の盃亭へようこそいらっしゃいました。本日は宿泊のご利用でございましょうか。」
「はい、ギルドの紹介で来たんですが……。」
「本館は原則として一見のお客様の宿泊はお断り申しております。失礼ですがご身分を証明できるものはお持ちでしょうか。」
なるほどね、利用するならそれなりの身分を示せってことね。
俺はギルドカードを手渡して確認してもらった。まぁアリアは問題ないって言ってたし大丈夫だろう。
老紳士風の店員は俺のカードを受け取ると訝しげだった目を見開いて頭を下げた。
「これは!?大変失礼致しました。まさかBランク冒険者の方だったとは。無礼をお許しください。」
「あーそんなに畏まらなくてもいいですよ。それで宿泊しても大丈夫なんですかね?」
元々は俺たちの格好が悪いわけだし…やっぱり装備は早めに変えないとな。
「もちろんでございます、ハヅキ様。そして隣にいらっしゃる方がラナンキュラス様でよろしいでしょうか?」
ん?何でララのことがわかるんだ?……あぁ、ギルドカードか。確か奴隷所持って書いてあるんだっけ。
俺が自分の疑問に一人納得しているとララがフードを外し前に出た。
「はい、私がラナンキュラスです。ですが私は奴隷ですので私にまで敬語を使う必要はありませんよ。」
「いえいえ、ハヅキ様がラナンキュラス様を大切にされているのは一目でわかります。それほどまでに大切にされている方を身分という理由だけで害することは我々の矜持に反します故、どうかご理解ください。」
長ったらしい挨拶が終わったところでここで受けられるサービスについて説明してもらう。
ざっくり言うと、宿泊費は一人5万ゴールド。食事は朝夕の2回で昼は朝食の時に言えば用意してくれるらしい。かなりお高いが最後の説明でそんなものはどうでもよくなった。
何とここはお風呂があるらしい!いや、風呂に入らなくても洗浄魔法があるから衛生面は問題ないんだけどね。こう、精神的に入りたいんだよ!日本人だし、風呂とは切っても切れない関係なんだよ!
ただ風呂があるとは言ったものの、正確には浴槽が各部屋にあるだけらしい。
そこに自前で湯を張るのは自由だが店に頼むと10万ゴールドかかるとのこと。宿泊費より高いって……自分で張るから関係ないか。
よし!『黄金色の盃亭』君に決めた!
「分かりました。ではツイn『ダブルでお願いします。』を…。」
「……(ニコニコ)。」
うん。
「……ツインルー『ダブルでお願いします。』むを……。」
「……(ニコニコ)。」
うん。
「つ『ダブルで!!お願いします。』……。」
「………スーーー。」※呼吸音です。
あの、ララさん?何でそんなにニコニコ笑顔でダブルを押してるのさ、しかもかなり食い気味に。普通逆じゃないですかね?いや俺にそんな度胸があるかと言われれば無いんですけどね。
普段はそんなに主張したりしないのに、何でこんな時に限って我を通そうとするんだか。
このままではゴリ押しされてしまう、そう思った俺はララを説得するべく向きなおる。
ぐっ。そんな可愛く見つめて来てもダメなものはダメだぞ。ダメだ…。ダメ…だ。ダメ……?なのか?
いや!俺はララの交渉(可愛さ全振り)に負けたりしない!
ーーー1分後ーーー
「……ダブルでお願いします。」
「かしこまりました。」
可愛さには勝てなかったよ。
ちなみに老紳士風の店員さんは俺たちのやりとりをずっと微笑ましく見守ってくれてました。
ご視聴ありがとうございます。
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