45話 少しだけ好きになれた街
続きです。
今度こそこの話で1章は終わりです。
ざっくりと考えている流れで言えば、ようやく導入部分が終わったところでしょうか……。
本当に終わるのかこれ?と思いつつも気長に書いていきますw
11月6日に改稿してます
45話 少しだけ好きになれた街
「さて、こうしてここへ来てもらったのは報酬だけでは無い。」
はい?まだ何かあんの?いい加減面倒なんだけど。いや今回に限った話じゃ無いんだけどね?俺としてはこの国がやっぱり碌でも無いことが再度分かったし、一刻も早く出て行きたいんだけどもね?それなのにまだ面倒事を押し付けようってか?流石にノーと言えない生粋?の日本人の俺でも怒るぞ?そもそも……。
「あー、言いたいことは分かるがそう睨むな。これはお前達のためでもあるんだ。」
おっと、顔に出ていたようだ。平常心、平常心。
「……俺たちのためとは?」
「うむ、連合王国に行くんだろう?ならこれをブレストの街のギルド長に届けてくれ。」
そう言って爺さんは封筒を手渡してきた。おそらく中身は手紙だろう。
てか、ブレストってどこだよ。……後でララに聞いておこう。
「手紙ですか。」
「そうだ。……言っておくが中身は見るなよ。」
「見ませんよ。」
そう言われると見たくなるじゃ無いか!いや、見ないけどね。
「ここから一番近い街だし、ブレストは冒険者の街だ。装備を整えるのにはうってつけだし寄って損は無いだろう。」
「なるほど。」
爺さんは俺たちの装備を見て言った。
確かに今の装備では心許ないのは確かだが、あれ(ハイロード戦)は明らかにイレギュラーだろう。
そもそもこの装備を揃えたのは新人がいきなり豪華な装備してたら絶対に絡まれるからだしな。……まぁ結局襲われた上にそんな装備を買う金がなかったのは置いておこう。………だからそう言うことにしておこう。
「報酬がどうのと言いそうだから先に言っておくが、この手紙にはお前達が向こうで自由に動けるように一筆認めてある。今回はそれが報酬でいいだろ?Bランク冒険者殿?」
その一言で言いたい事は分かったし、ありがたいんだが……俺ってそんなにがめつい奴だと思われてんの?ちょっとショックだわー。まぁ、その話はするつもりだったんだけど。
「別に報酬を求める気は無かったんですが……(大嘘)。分かりました。しっかりと届けますよ。一応確認なんですが期日とかは無いんですよね?」
「別に無いが……早い方が助かる。」
「分かりました。」
最後の確認を終えて部屋を出ようと立ち上がったところで爺さんに止められた。
「おいおい、ちょっと待て。まだギルドカードを渡して無いだろう。」
おっと、そうだった。あまりにインパクトの強い出来事のせいで忘れてた。何がとは言わないが。
そう言うと今まで壁際に立っていたエリエットがトレイを持って爺さんの傍にやって来た。
「遅れましたが、Bランク昇格おめでとうございます。こちらがBランクのギルドカードです。」
「ありがとうございます。」
そう言って渡されたカードは銀色っぽい感じの金属で見た感じ銀ではなさそうだった。実物の銀なんて見た事ないが……。
俺の視線で分かったのかエリエットが教えてくれた。
「Bランクのカードはミスリル銀が配合されたものなんです。」
「そうなんですか。」
確かミスリルっていうと定番の設定では魔法との相性がすごくいいって感じだけどこの世界でもそうなのかな?後でララに聞いておこう。
「ご存知だとは思いますが、ミスリル銀は魔力との親和性が高く武器としてもよく使われています。そのためCランク以上のカードには全てミスリル銀が配合されていて、所有魔法の効果が強くなっています。」
……聞く必要なくなったな。
「じゃあ、手紙の件頼んだぞ。」
「はい、今までありがとうございました。」
「失礼致します。」
俺たちは最後に一言交わしエリエットの先導の元部屋を後にした。
1階に戻ってきた俺たちを迎えたのは先ほどと変わらない、むしろさらに大きくなった喧騒だった。
「………本当に大丈夫なんですかね?」
「た、多分……はい。」
自信なさげに答えるエリエットだが本当に大丈夫だろうか……。さっきの女性職員は酔いつぶれてるし。
「ま、まぁ最悪ギルドマスターがなんとかしますよ!」
自分の手に負えなければ上司に丸投げ、なんてサラリーマン的思考なんだ!俺も見習わなければ!……申し訳ありませんでした。
全く関係はないが俺はそう言うことはしていなかったぞ。と言うより出来なかった。……先輩めっちゃ厳しかったしなぁ。(白目)
エリエットは一つ深呼吸をして俺たちに向き直りお辞儀をした。
「ではハヅキさん、ラナンキュラスさん、お二人ともこれからのより一層のご活躍とご健勝を祈っております。」
「こちらこそ、お世話になりました。」
俺は一言言ってから、ララは定位置で黙って一礼して夜まで続くと思われる喧騒の中ひっそりとギルドを後にした。
「ふー。最後くらいは静かに出て行きたかったのになぁ……。まさかこんなことになるとは。」
「ふふふ、ご主人様らしいですね。」
二人して門に向かって歩いていると、ほどなくしてこの街最後の目的の人物に会えた。
「こんにちは、リチャードさん。先日はありがとうございました。」
「お?おぉ!君達か!心配したぞ、もう回復したんだな。よかったよかった。」
「その件では本当にお世話になりました。遅くなりましたがお礼です。よければ皆さんで飲んでください。」
俺は空間魔法から酒の入った瓶を数本取り出し、リチャードに手渡した。
「おぉ!これはいいな!ありがとう。わざわざこのために?」
「いえ、急ではありますが今日でこの街を出るので挨拶も含めて伺いました。」
俺の言葉に少し違和感を覚えたのか首をかしげたが、酒瓶を見てすぐに納得したという風に手を打ち頷いた。
「街を出るというのに随分軽そうだと思ったんだけどね。空間魔法でしまってあるのか。それだけ容量があると便利だねぇ。流石は皇帝殺しといったところかな?」
リチャードは満足そうに言うが一体何が流石なんだろうか。そして皇帝殺しの悪評はここまで届いていたのか……。
「……その通り名どこで聞いてきたんですか?」
「この仕事をしていると冒険者と話をすることが多くてね。……みんな言ってたぞ?」
「………そうでしたか。」
俺のテンションは黒歴史を抉られたことで急降下中なのだがリチャードはそんなことに気がついた様子もなく握手を求めてきた。
「ともあれ、またここに来ることがあれば会うこともあるだろう。達者でな。」
「はい、ありがとうございます。リチャードさんもお元気で。」
俺たちは固く手を結びこの場を後にした。
最後にララがリチャードにお礼を言っていたが、彼は嫌な顔をするどころか笑顔で俺と同じくララと握手をして見送ってくれた。
「………この国にも良い人はいるんだな。」
「……そうですね。」
「次の街はララも暮らし易いところだと良いね。」
「はい、ご主人様。どこへでもお供いたします。」
和気藹々と俺たちは新天地に向けて歩みを進めていく。
ご視聴ありがとうございます。
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