39話 貴族様再び
ストックが切れました……。
ここから投稿期間が少し不定期になりますが遅くとも1週間に1話は投稿します。
次話が出来次第投稿していく予定ですので宜しくお願いします。
11月2日に改稿してます
39話 貴族様再び
「まぁ、話が逸れましたがそう言った訳で、俺たちは今日にでもこの国を出るんです。」
「そうか、俺よりも先に出るたぁな。俺はまだここでやることがあるからな、国へ帰るのはもう少し先だ。真っ先に王都に向かうのか?」
「うーん、そうですねー。最終的には王都に行くつもりですけど、ゆっくりと旅をしていこうと思ってます。別段急ぐ用事も無いですし。」
この国を早く出たいという気持ちはあるが、そのあとは気ままに過ごしていきたい。資金もそれなりにあることだし。
「そうか、なら俺の方が早く王都につくかもしれんな。まぁ向こうに行くことがあればぜひ寄ってくれ。お前さんなら上客になってくれそうだ。」
そう言ってグレイヌは豪快に笑った。
気持ちよく笑う人だな。
とここで、全く関係ないがふと思いついたことがある。
「そう言えば、ララとグレイヌさんに質問なんですが、エルフとドワーフって中が悪いって昔聞いたんですが本当はどうなんですか?」
そう。ファンタジーではお馴染みの不仲種族だがここではそういった話をまだ聞いていなかった。そもそも、この国が人族至上主義なせいで他種族自体滅多に見かけないんだが。
「まぁ、互いに仲が良いとは言わねぇな。」
「そうですね。ただ、お互いに仲が悪いと言うよりもエルフが一方的に嫌っていると言う方が正しい気がします。」
どうやらお馴染みの設定はここでもそうらしい。
「だが、この国で言えば違うな。それ以上に人族と仲が悪い。」
「そうですね。この国は基本、人族至上主義ですから。共通の敵がいるとまとまり易いとは言いますが……皮肉ですね。魔族という共通の敵がいながらまとまらず、同じ人間同士で争えば団結するなんて……。」
「まぁ、それはあるがな……。不仲では無いというなら連合王国が良い例だろう。あの国の連中は気のいい奴らばかりだからな。来るものは拒まず、去る者は追わない。そういった気質だからか種族に関係なく仲のいい奴らが多い。……まぁ、そうで無いと多種族連合国なんてもん自体作れねぇだろうがな。」
これはいい事を聞いた。言った先で揉め事とか嫌だしな。……この街ですでに起こしてるとかは無しで。
俺達はグレイヌに別れを告げギルドへと向かう。
外に出たら昼過ぎだったので、途中昼食を取ってからにした。
ギルドへ入ると昼間だというのに酒場の一角で飲み騒ぎしている奴らがいた。
……あいつらいつ仕事してんの?いつも酒飲んでない?
中はそれなりに空いていたが、そんな奴らがいるせいかかなり喧騒としている。まぁ、ここに来る時はいつものそうだが。
しかし、俺が中に入ると一瞬静まる。直ぐにまたいつもの喧騒が戻るが心臓に悪い。
騒がしいのでよく聞こえないがヒソヒソと何か話してたりする奴らもいるし……。
こういうのが嫌で目立たない様にしてたのになぁ……。
何ていうか、遅刻して学校とかの授業中に教室に入るとみんな一斉にこっち見るじゃん?その後、先生が一言言うと何もない様に前を向いて授業が再開するじゃん?気持ち的にはあんな感じ。あれって一種のイジメじゃないかと疑っちゃうよね。
こういう時はさっさと用事を済ませるに限る。
俺は受付で仕事をしていたエリエットに話をかける。
ちなみにララはフードを目深にかぶって俺の横にピタッと立っている。
「こんにちは、エリエットさん。カードの方はできてますか?」
「あっ!お待ちしてました、ハヅキさん。はい、準備はできてますので少々お待ちください。」
エリエットはそう言って奥の方へと行ってしまった。
エリエットを待つ事数分、何やら入口の方が騒がしい。なんだろううと振り返って見るとそこには昨日のバカ貴族様がいらっしゃいました。
………嘘だろ!?今一番会いたくない相手なんだけど。
俺は何も見なかった事にして目を逸らすが、そこは流石のバカ貴族クオリティ。向こうはしっかりと気がついたようだ。
「……!?貴様は!」
……はぁ。そこは知らない振りをするのがお互いのためって奴でしょ?なんで馬鹿正直に反応するのかな。
「貴様!昨日はよくも恥をかかせてくれたな!」
一人で勝手に踊ってただけじゃん。
「この僕ベレッチェ・ドゥーイ・コンフィは貴様に決闘を申し込む!」
はいはい。返事なんてしないから一人で勝手に喋ってくださいねって……決闘!?
周りもその言葉にざわざわと騒ぎが広がる。
「おいおい、決闘だってよ。」
「誰が?」
「あの貴族様と例の皇帝殺しさ。」
「マジかよ!勝負見えてんじゃん。」
「なぁなぁ、誰か賭けをしようぜ?」
「掛けになんねぇよ、満場一致で皇帝殺しだ。」
………好き放題言いやがって。俺が受けるとは鍵らねぇだろ。
そう思ってララを見るとララはニコリと笑って口を開いた。
「ご主人様、いかがいたしましょうか?あの程度の相手ならばご主人様が出ずとも私が相手いたしますが。」
「いや、ララが相手しなくてもいいよ。そもそも、この決闘って受けないとダメなの?」
ララは俺の言葉にかなり驚いたようで気の抜けた声が出ていた。
「………へっ?あっ、申し訳ありません、失態でした。」
別に可愛い反応だったし、気にしてないからいいんだけど。
「ご主人様は今回の決闘はお断りになられるのですか?」
「あれ?もしかして決闘って断れなかったりする?」
「いえ、そういう訳ではないんですが……。この国では決闘を断るという事は相手の望む対価の一部を差し出すのが風習になっています。」
「えっ!?それじゃあ弱っている相手に決闘を申し込んだりすれば大変じゃないか。」
「一応は見届け人がつくのでその方に決闘の経緯を説明すれば、逆に賠償金をせしめる事も出来ます。」
あっ、一応きちんとしているんだな。
「ですが、そんな弱っている相手に漬け込んで決闘を申し込むなんて事をするのは我の強い権力者くらいなので、ほとんどの場合がその見届け人も抱き込まれて何もなかった事にされます。」
前言撤回。やっぱこの国ってクズだわ。
「それに冒険者は余程の事がない限り申し込まれた決闘は受けます。でないと逃げたと思う連中が後を絶たず碌に冒険者として活動出来なくなるとか……。」
あーそれは何となく分かるかも。この世界って弱肉強食だし冒険者なんてその最たるものだ。腕っ節で生きてる様な奴らがビビって逃げた何て言われればそりゃ仕事も無くなるか。
「ですが、ご主人様には余り関係が無さそうでは『おい!何をしている!逃げるならその長耳を置いて行け!』……ありますが。」
どうやら待ても出来ないらしい。と言うかあいつララに固執し過ぎな気が……。
昨日ので懲りない辺り頭の中はきっとお花畑なんだろうな。
俺は大きなため息と共に前に出た。
ご視聴ありがとうございます。
ブクマ、評価ありがとうございます!




