30話 王の中の王
この話から戦闘が始まります。
戦闘描写って第一視点より第三視点の方が書きやすかったり……( ´Д` )(GM的感想
あれ?この話2度目じゃね?ってのは無しで。
10月31日に改稿してます
11月6日に再改稿してます
……改稿どころか新規書き下ろしレベルで変わってますがorz
30話 王の中の王
あのまま魔法で殲滅していかなかったのは、攻撃を続けてもララの魔力が持たないだろうという事と、魔法でちまちま攻撃するような時間を稼ぐことが難しいからだ。
MPが0になると気絶するらしいし、不測の事態を考えてギリギリまで魔力を使うのは避けたい。
そうなれば効率の観点から見ても白兵戦での各個撃破が効率的ということになる。
殲滅は順調に進んでいきこのまま終わらないかなと思ったが、現実は残酷と言うか、冷たいと言うか、そんなに甘くはないようだった。
奥の方から出てきたそいつは取り巻きのゴブリン達の全長がせいぜい120センチ程度なのに対し、180センチはあろう巨躯を携えていた。
名前:ゴブリン・ハイロード(亜種)
LV:56
HP 5065/5065
MP 72/72
STR 2417
VIT 1908
DEX 24
INT 3
AGI 619
スキル:<統率LV2><身体強化LV5><魔力操作LV1><体術LV4><剣術LV6>
備考:装備、ゴブリン・ハイロードの双剣、ゴブリン・ハイロードの兜
なんだこいつ。めちゃくちゃに強い。INTを除いてステータスが高い。まさに肉壁や脳筋という言葉がふさわしいステータスだ。
それに対して俺のステータスは実に対照的だ。
名前:ハヅキ・アマミヤ
種族:人間
年齢:18
LV14
HP 1097/1097
MP 3471/3471
STR 750
VIT 750
DEX 1400
INT 850
AGI 1400
固有スキル:<真実の魔眼><刀神の器><賢者の器><精霊王の加護>
スキル(身体系):<魔力制御LV2><身体強化LV2><索敵LV2><隠密LV2>
スキル(その他):<胆力LV->
スキル(武術系):<刀術LV10><体術LV1><見切りLV2>
スキル(魔法系):<生活魔法LV-><火魔法LV10><水魔法LV10><風魔法LV10><土魔法LV10><氷魔法LV10><雷魔法LV10><光魔法LV10><闇魔法LV10><時空魔法LV10>
ゴブリン達を狩に狩まくったおかげでレベルが5上がったがハイロードには遠く及ばない。ただステータスでは負けていないので戦えないことはないが……。
ただHPやSTRはかなり離されているため一撃でももらえば致命傷になりかねない。AGIとDEXでは大きく上回っているため一撃離脱でなんとかするしかないか……。
「ご、ゴブリン・ハイロード……。最上位種なんて……。」
ララが呻くように呟くその声が震えている。怖いのだろう。
いや日本にいた時の俺だってビビると思うよ。ただ、精神補正なのかなんなのか今はちっとも怖くないんだよね。頭の中にあるのはどうやってこいつを始末するかということだけ。
……バトルジャンキーかな?いやいや、病院のお世話にはなりたくないな。
……シリアスが逃げたな。
「ララ、落ち着け。俺があのでかいのを止める。そのうちに取り巻きの始末を。」
「ま、待ってください、ご主人様。相手はゴブリン・ハイロードです!分が悪いです。それにあの肌、おそらく亜種です。亜種になるとその強さは3倍になると言われています。一旦引きましょう。」
亜種と呼ばれるハイロードの肌は赤黒かった。
どの世界でも赤いやつは3倍効果があるんだなぁ。ていうか3倍補正がないとあいつのINT1かよ!……魔法に嫌われてるってレベルじゃねぇぞ。
「どうやら逃してはくれないみたいだ。」
俺が苦笑いすると、ハイロードは3度目の咆哮を放ちながら両の手に携える双剣を鈍く光らせ俺たちの方へと駆けて来た。
ーーー???視点ーーー
これで何度目になるのか、彼とゴブリン・ハイロードが互いの間合いに入り斬り結ぶ。といっても彼はゴブリン・ハイロードの攻撃を一度も受けていない。というより受けた時点で勝敗は決するだろう。
ゴブリン・ハイロードが左右に握る剣を彼に向かって振り回す。彼はその猛攻を凌ぎ懐へと入ると1撃、2撃入れてすぐに距離をとる。その速度は非常に疾いが最初の攻撃ほどではない。
「んー、やっぱり彼は最初のでケリをつける気だったのかしら?」
私がこう思ったのは初めにゴブリン・ハイロードが彼に向かって攻撃したのに対し、彼はカウンターを放とうとしていたからだ。その攻撃はどの攻撃よりも疾く私ですら目で追うのがやっとだった。
しかし、彼の攻撃は失敗に終わる。ゴブリン・ハイロードはその攻撃が当たる瞬間バックステップで回避して見せたのだ。
それを驚くか?と聞かれればそうではない。というかそれは私からすれば当然の結果と言えるのだが彼は躱されたことに疑問を持っていたようだった。
「ゴブリン・ハイロードと表面上は対等に殺り合えてるんだし、ステータス的には問題ない。スキルだって持っているはず。……まさか気づいてない?それとも分かってない?でもそうすると強さがちぐはぐしすぎなのよね。」
彼が強大な力を持つゴブリン・ハイロードと真正面から戦って少なからず均衡を保てているのは、偏に彼のステータスとスキルの練度の高さゆえだろう。
彼がどんなスキルを保持しているかは分からないが彼の持つ武器、確か刀とか言ったっけ?あんな癖のある武器を使って不利な状況で対等に戦えてるのだ。おそらく、スキルの練度はLV7〜8はあるだろう。少なくとも彼はこちら側に足を踏み入れつつある。
彼がそれほどの腕を持っていなければ私が奴を始末していたところだ。あの人に自由に生きて欲しいと言われた私でも、流石に目の前の二人が死んでいくところは見たくない。と言うよりあのクラスの魔物に人の肉の味を覚えさせたくない。
「本当に……。なんで魔力で自分を強化しないのかしら?出来ないから?あの畜生でもできるのに?それともあの人の言っていた縛りプレイなのかしら?それに……。」
私は彼から視線を外しもう一つの戦場を見る。そこでは私と同族のエルフの少女がゴブリン・ナイトとゴブリン・エリートの2体を相手取っていた。
彼女は実に不思議な魔法?を使う。彼女が影にナイフを投げればナイトの動きが止まるし、彼女が影を斬ればエリートの首が落ちる。私のスキルに似ているがおそらくは違うだろう。
「んー、やっぱり似てるわね。」
私が彼らを見かけたのはあの忌々しい国にある街でだ。珍しくあの国で同族を見かけたため、今の今までこうして離れたところから気配を消して二人を観察しているのだが、初めはそんなつもりはなかった。
同情だという事は分かっている。彼女を初めて見たときは見るからに奴隷だと言う格好をしていたため、その主人が悪い奴なら裏で始末でもするか彼女を救おうと思っていた。それは杞憂に終わったが。
なぜ初対面の人間にそこまで同情するのかと言うと、それは彼女が私に似ていたからだ。
別に容姿的なことを言っているわけではなくて境遇とでも言えばいいのか……。おそらく彼女は里では忌み子として扱われていただろう。彼女の目を見れば分かる。あいつらエルフはどいつらも年寄りのくせして他者と違うことを恐れる。
私は目は普通だが肌が黒い。真っ黒と言うわけではないが、白い肌とは違い濃い茶色をしている。それこそダークエルフのような外見だ。そのせいで私は里では忌み子扱いされ奴隷商に売られた。
まぁそのおかげであの人に出会えたし今では感謝しているくらいだ。
そう言った意味で彼女は私に似ている。……ん?私に似ている?私はあの人に出会えて、彼女は彼に出会えた……?
「……!?そうか!似てるんだわ!そう言うことね!」
私は感じていた疑問が綺麗に紐解けたことで少し興奮した。
「彼はどこか既視感があると思ったらそう言うことね!似ているのは彼女と私だけじゃなくて彼もあの人と似てるんだわ!」
私が彼に感じていた既視感、彼のちぐはぐな強さ。それらが綺麗に噛み合わさった。おそらく彼はあの人と同じ異世界人なのだろう。これで全て説明がつく。
視線を彼女に戻すと彼女はゴブリン達を瞬殺し私と同じく彼の戦闘を観察している。おそらく自分が割って入っても役に立たないことを自覚してるんだろう。
「ふーん、やっぱりあの子は賢い子ね。それに主人思いだわ。そして彼は……。」
彼に視線を移すと何度目か分からない同じ攻防が繰り広げられていた。ゴブリン・ハイロードが斬りかかり、彼がそれを躱し逆に斬りつける。さっきまでは足に攻撃していたが今は腕に攻撃を集中させている。
「うーん、決定打が足りない?でもこのままなら押し切れるかな?私の助けは……まぁ異世界人なら大丈夫でしょう。」
私は私達と似ている彼らを前に頬が緩むのを止められなかった。
「あぁやっとあの人との約束が果たせるのね。……先ずは彼女かしら?ふふふ。」
ご視聴ありがとうございます。
ブクマ、評価ありがとうございます!




