16話 ララの未来
これで異世界生活2日目が終了ですね。
やっとヒロインが出てきて個人的には満足ですw
10月30日に改稿してます
16話 ララの未来
ララが落ち着く頃には胡座をかいていた俺の足は痺れていた。
「落ち着いた?」
「すんっ、すみません。また、みっともない姿をお見せして。」
「だから、俺は気にしないってララは……。」
「『仲間であって奴隷ではない』ですよね?ご主人様。」
俺の言葉を遮るようにしてララがいたずらっぽく笑った。
なんだ、わかってるじゃないか……いや、わかってねぇ!ご主人様って言ってるし。
数秒の間見つめあいどちらからともなく笑った。
これでララの持つ過去が無くなる訳ではないし軽くなる訳でもないが、これからの未来に『楽しさ』を求めてくれれば嬉しいな。
笑うだけ笑いあって脱線した自己紹介に話を戻すことにする。
「さて、次は俺の番かな?」
「あの、無理にお話になる必要は……。」
「いや、元々話すつもりだったしララにも知っておいて欲しいから。」
ララは俺の言葉にほんのり頬を赤らめる。え?そんな要素あった?まぁいいや。
俺は雑念を振り払うため一度咳払いし真剣な面持ちで話を切り出す。
「信じられないかもしれないけど俺は異世界からきたんだ。」
「……え?」
「うん。」
「……え?」
ぽけっと口を開けて首を傾げている姿は非常に可愛らしいが、ここで襲い掛かろうものなら色々と台無しなのは俺でも分かるので我慢する。
まぁそんな度胸は無いんですけどね!
「い、異世界ですか?」
「そう、異世界。」
「ご、ご主人様は勇者様だったのですか?」
「いや、違うよ。俺は勇者の召喚に巻き込まれただけっぽい。だから勇者は他にいるよ。会ったことないから分かんないけど、召喚はこの国の王女様がやったって聞いたし、この国にいるみたいだ。」
それからいくつか問答を続けたが意外なことにララは俺の言葉を疑ったりということはしなかった。
むしろ、そのおかげで納得が出来たと言っていた。
曰く、今まで召喚された勇者はどいつらも規格外の力を持っていたため、そんな勇者と同じところから来たと言われれば、俺みたいに若い人族でも失明などの重たい傷跡を治療できたことに説明がつくそうだ。
ここにきた勇者たちは自重しなかったんだな……。
「すごい方だとは思いましたが、まさかここまで飛び抜けた方だったとは……。流石です、ご主人様。」
「い、いや。そう言ってくれるのは嬉しけど大したことはできないよ?」
「ふふっ、そういうことにしておきます。」
だいぶこ慣れてきたな。……にしても可愛いなぁ。ただ、こんなに可愛い子が近くにいると眩しいな。
俺みたいな日陰者は遠くから見るだけで幸せになれるんだが……。
あれ?それってストーカーじゃね?
そんなバカなことは置いておき話を進める。
話をする中で分かったことは、この世界ではステータスやスキルという概念が一般に浸透しているようで、ステータスと唱えたり、念じたりすると自分の能力を確認したり相手に見せたりすることができるらしい。
スキルは人に教えてもらったり、訓練して手に入れたり、いつのまにか手に入ったりと、詳しい入手方法は分かっていないらしい。(例えば、剣を使えば<剣術>を入手しやすくなるという程度)
しかし、ララは呪いのせいかステータスすら確認ができず、どんなスキルを持っているのか、どんなステータスをしているのかもわからないらしい。
なんて怖いバステなんだ。
「実はララがスキルを覚えられなかったり、魔法が使えなかったりするのは今ララにかかってる呪いのせいなんだ。」
「の、呪いですか……。」
「そう、呪い。その呪いなんだけど解けるかどうか俺が試してみてもいいか?」
「え!?ご主人様がですか?」
「失敗するかもしれなくて不安だと思うけど、この呪いは早く解かないとまずいと思う。俺に任せてくれないか?」
俺の見込みでは十分成功する。
さっき傷を治した時ですら10分の1も使ってないし、その時に大体の治療魔法の感覚は掴んだ。多分<賢者の器>で補正がかかってるんだと思う。……つくづくチートスキルだな。
しかし、俺が成功率は悪くないと思っていてもララが不安になって断られたら意味がない。そう思ってララを見てみると、呪いがかかっていると話した時は不安げにしていたのに今はすっきりとした表情で微笑んでいる。
「ご主人様はもう諦めていた私の傷を治してくださいました。絶望の中にいた私を救ってくださいました。ご主人様にならどんな結果になろうと受け止められます。」
「……分かった。大丈夫、絶対になんとかするから。」
俺が返事をするとララは顔をほころばせた。
そして、少し顔を赤くして上目遣いで遠慮がちに口を開いた。
「その、ご主人様。あの、お願いが…あるのですがよろしいでしょうか?」
「お、おう。なに?」
上目遣いも破壊力が段違いだな。思わずどもっちまったよ。
「その、失礼だとは思うのですが、呪いを解いている間、そっ、そのだ、抱きしめていただいてもよろしいでしょうか……。」
両の拳を固く握り、最後の方はかすれてほとんど消え入るようだったが言わんとすることは分かった。
要は俺がララを抱きしめながら呪いを解けばいいんだろ?何だ、簡単じゃ無いか。
………はい?
うん?ウェイトウェイト。落ち着け俺。落ち着くんだ。
何この子?俺に気があるの?『もしかして恋?』ってやつなの?
……G◯ogle先生は帰って下さい。
いや、違う。これは……そうか!ララは怖いから気を紛らわしたいんだ。
例えるなら肝試しで一緒に回ることになった女子が本気で暗いところが苦手で『離れないでね』と言ってきた時と同じだ。
勘違いして告白すると振られるぞ。……ぐすん。
「ん、分かった。苦しかったりしたらすぐに言ってくれ。」
「はい、ご主人様!」
俺は努めて声が上擦らないように返事をしてララを抱き寄せる。
うわっ、柔らけ!何がとは言わないけど柔らけ!
「それじゃあ始めるよ。」
「お願いします。」
俺は迫り来る劣情から意識を逸らして魔法を使う。イメージはララに取り付いている呪いを浄化するように。
魔法を使うとララの体が薄く光った。ララは苦しそうなことはなく穏やかな落ち着いた表情を浮かべている。
数秒して光が収まり抱き寄せていたララを離す。
「……終わったよ。どう?ステータスは開ける?」
実のところ、ララのステータスを見て呪いは解けているのは知っているのだが聞いておく。こういうのって自分で確認してなんぼだし。
ララは俺の言葉でステータスと呟きその顔に笑みがこぼれる。
「見れます、見れます、ご主人様……。もう…これで……。」
そういって微笑む目に今日何度目かわからない涙を浮かべ俺の胸に抱きついてきた。
何回お礼を言われたかわからなくなるくらいに『ありがとうございます』と言う彼女が落ち着いたと思ったら既に穏やかな寝息を立てていた。
……俺に抱きついたままで。
俺は引き剥がすわけにもいかず、服に洗浄魔法をかけてそのまま横になる。
はぁ、ここでも自分との戦いかぁ。これもう欲望を貪ってもいいかな?……ダメだよねぇ。
俺、ちゃんと朝を迎えられるかな。
俺が意識を手放したのは数時間の格闘の末、理性が勝利した瞬間だった。
ご視聴ありがとうございました
ブクマ、評価ありがとうございます!




