15話 ララの過去
一応すでに書いたものを投稿しているのですが、間違いがないかの確認と気になった所の修正をしていると30〜40分くらいが飛んでいきます……。どうしてこうなった(゜д゜|||)
念のためですが胸糞表現注意です。
10月30日改稿してます
15話 ララの過去
ララは数あるエルフの集落の一つで生まれたそうだ。
元来、エルフという種族は傲慢で多種族と触れ合うことを疎み、森の辺境に集落を作って生活している。そのため集落の人数は多いものでは無く、数十人程度のものらしい。
そしてエルフは多くの創作物で語られるように通り長寿である。そのためかなかなか子孫を残そうという気概が少なく、また種族的に子供ができにくいとあって出産率がかなり低いらしいのだ。
そう言ったこともあって、エルフでは子供が生まれるとそれこそ集落全体で祝い事が行われるらしいのだが、不幸なことにララの場合は違った。
ララは忌み子だった。
いや、正確にはそういった扱いを受けていたという方が正しい。ララの目は薄い黄色と薄いピンクのオッドアイだ。
しかし、集落ではそういった瞳を持つものはいなくて、先ほどの通りエルフは排他的思考を持つ。そのためララの集落での扱いは酷いものだった。
それこそ生みの親である両親ですら、それやあれといった風に人として扱っていなかった。
それでもまだ扱いとしてはましな方だったという。
ララのいた集落では10歳になると魔法や弓などの訓練を行い18歳になると集落の外に出ることを許可されるという規則があった。
ララの他に数人の子供がいてララは一緒に訓練を受けていたのだがそれは地獄でしかなかったという。
ララは魔法も弓も呪いのせいで碌に出来ない。周りが次々と魔法を覚え、弓の扱いが上達する中、一人だけ浮いていたという。
普通なら出来の悪い子という結果で済んだのだが、不幸なことにララは集落では忌み子として知られていた。
大人のエルフたちは腫れ物を触るようにララに近寄りもしなかったので直接的な害はそんなに無かったそうだが、子供たちは違った。
イジメだ。
日本でもイジメはあるし酷いものだが、こちらの世界のイジメは正直反吐がでる思いだった。
この世界は日本よりも死が身近にある。魔物やらが跋扈する中を生きているのだから納得はできる。だからこの世界の住人は自身を鍛え自衛するのだが今回はそれが裏目に出た。
曰く、戦闘訓練と称して囲まれ血反吐を吐くまで殴られたり、魔法で吹き飛ばされたりした。
中でも酷かったのが、気持ち悪いという理由でナイフで目を切りつけられ、痛みに声を出すと今度は耳障りだといって喉を焼かれたという。
そんな目にあってもララの両親は何も言わなかった。それどころか新しく出来た子供だけを構ってララは無視され続けたそうだ。
酷い話に思わず顔を顰めるが今更いってもどうしようもないことだ。
それよりもそんな劣悪な環境でよくこんなに素直ないい子に育ったものだと思う。一種の奇跡だろう。
目が見えなくなっても、何故か物の位置やおおまかな地形は把握できたので、補助がないと生活ができないということは無かったみたいだが、それでも慣れるまでは大変だったという。
……<空間把握>は呪いの効果を受けてない?まぁそのおかげでララがこうして助かったわけだし別にいいか。
そういったイジメを受けつつもなんとか生活していると今年になって村の収益が悪くなり口減らしを行うことになったのだという。
口減らしの対象はララ一人だけだったらしく本当に口減らしのために売られたのかすら疑問だ。
ララは集落から馬車でこの街まで送られるそうだったがその時に魔物に襲われたという。
なんとか魔物から逃げたものの御車をしていた奴隷商人からはこれでは売り物にならないと言われてしまってエビラのところへ運ばれたそうだ。
そこからは俺の知っている通りらしい。
女としての尊厳どころか、人間としての尊厳も元々持ち合わせているか怪しいところだったが、そんなものは完全に消えて無くなり、生きているのか死んでいるのか考えるのも疲れてきたところに俺がやってきて今に至るという。
覚悟はしていたが予想以上に重たい話で言葉を失っている俺に、ララは自嘲気味に笑った。
「それでもこうしてご主人様に出会うことができたのなら、これで良かったのかもしれませんね。」
そんな風に笑うララを見て俺は気づいてしまった。
境遇こそ違うがその顔は昔の俺がしていた顔にそっくりだった。……両親を事故で失った時の。
ララの言葉は俺に捨てられたら生きていけないという恐怖から出たものだろう。
無理をしている。
一度は生きることを諦めかけたララも今日、こうして生きていられる事を再認識してしまった以上、もう一度死を覚悟するのは怖いのだ。
ララの瞳にそんな翳を見た俺は思わず抱きしめた。
「!?あ、あの、ご主人様?」
ララを買うことになったきっかけや理由は褒められたものではないが、こうして彼女と出会うことが出来たのは素直に喜ぼうと思う。
同情だろうが何と言われようが決めた。この子が生きていけるように、この子が生きる価値を見出せるように。
日本でダラダラと生を貪っていた俺が言える義理じゃないが、この子にはもっと世界のいいところを見て欲しい。楽しい事を見つけて欲しい。
そのために俺は力をつけよう。何からにも彼女を守れるように。
俺がそうしてもらった様に、彼女にそうしよう。
「怖いのに無理に笑う必要はない。辛いのに我慢する必要はない。泣きたい時は泣いて、笑いたい時に笑って……ゆっくりでいいから楽しく生きよう。いろんなものを見てやりたい事を探そう。それまで俺がララを守るから。」
そういって抱きしめていた腕を解いて笑いかける。
「まぁ、まだまだ俺は弱いからララに助けてもらう事も多いかもしれないけど。」
俺の言葉にポカンとした表情を浮かべるが、やがて目に涙を浮かべてくしゃくしゃと表情を歪めて泣き出した。
「どうじで、どうじでごしゅじんざばは、ひっく。どうじて。」
「そうそう、辛い時くらいはそうやって泣くといい。一頻り泣いたらまた笑顔になれるから。」
俺の言葉に安心したのか、ずっと蓋をして閉ざしていた感情が湧き出て止まらないのだろう。
俺の胸に抱きつくようにして泣くララの体を抱き寄せるようにして頭を撫でる。
これは長くなるだろうなぁ。
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