11話 魅力的な少女3
これにて奴隷商編は終了です
奴隷を買うだけの話に一体何話使った?……orz
10月30日に改稿してます
11話 魅力的な少女3
正直話がうますぎる。さすがにその言葉をそのまま鵜呑みにできるほど俺の頭はハッ◯ーセットではない。俺の険呑とした雰囲気を察したのか、エビラがかなり慌てて俺の言葉を否定した。
「いえいえ、そんなことはございません。神、ユリウスに誓って発言いたします。」
その神様のユリウスとやらがなんなのかは俺は知らないが、宗教国である皇国の人間が神に誓って〜なんて言葉を使えば、それは大抵の人が信じるに値すると判断するだろう。
俺には全く関係ない話だがここで懐疑心を表に出して変に話がこじれても面倒なので、ここは素直に乗っかっておくのが得策だろう。
「すみません、もっと吹っ掛けられるものだと思っていたので。」
「いえ、お気になさらずに。疑いになられるのももっともなお話ですので。」
俺の言葉に少しの不満も出さずにエビラは話す。
「実のところ我々はハヅキ様のことを高く買っておるのです。」
え?俺何か評価されるようなことしたか?エビラからすれば最初に注文したものとは違う欠陥品を購入しようとする迷惑で面倒な客でしかないと思うんだが。
俺の考えが顔に出ていたのかエビラはため息ともとれる息を一つ吐き説明をしてくれた。
「ふむ、やはりご自身のことは中々評価が難しいのですかな?では失礼ながら私の方からご説明させて頂きます。なぜハヅキ様のことを高く評価しているのかということですが、まずハヅキ様はまだお若いご様子。それでいて、戦闘奴隷をご所望され提示された金額も相場と変わりありませんでした。その年齢であれば冒険者になられたとしても長くて3〜4年といったところ。それなのに収入でいえばその日の暮らしがやっとなはずの低ランク冒険者の方が奴隷を購入できるほどの大金をお持ちでしたので、初めは貴族の方なのかと思いました。」
あぁ、やっぱエリエットがいってたのは正しかったのね。
「しかし、格好を見るに着飾っているわけでもないので不思議に思っていたのですが、先ほどの一件で確信いたしました。」
「先ほどの一件?」
「はい。先ほどは簡単な洗浄魔法とはいえ一瞬で発動しさらにはそれを無詠唱でやってのけたのです。ハヅキ様は見た所剣士であられる様子ですが、他にも魔法が使えるのでは?先ほどのはその力の一端を垣間見ただけなのでは?と商人の感が告げるのです。」
あっ、無詠唱もダメだったのね。
「そのようなお方と敵対するような愚かなことは我々は望んでおりませんし、いたしません。加えて言わせていただければ、ハヅキ様は冒険者でお若いご様子ですがとても思慮深く、礼儀も素晴らしい方だと思います。」
まぁ、中身は23の新人社会人なので最低限の礼儀は先輩に叩き込まれてると思うよ?
女だぁ!ヒャッハー!犯せー!とはならないよ……多分。
「貴族でないにしろ、奴隷を購入されるほど金銭に余裕があり、高名な冒険者かもしれず、我々のような商人相手にも公正であられる方と懇意にさせて頂きたいと思うのは当然でございましょう?」
目立たないように慎重に立ち回ってたつもりだったが穴だらけだったようだ。凹むわ。
まぁ?ギルドで奴隷を買うって決めた時に?多少は目立つかもって思ってたし?これくらい誤差の範囲だし?ちゃんと気づいてたし?…………ちくしょう。
「なるほど、自分ではわからないものですね。……分かりました、ではそのお話をありがたくお受けしましょう。それにしても4万ゴールドですか、随分と思い切りましたね。」
「ありがとうございます。これでも利益が出るようにと金額を提示させて頂いております。我々も慈善事業ではありませんから、どうかお気になさらずに。」
どうやら身を切ってでもというわけではないらしいので一安心。
「では、契約に移らせて頂きたいのですが今回は首輪と奴隷紋のどちらにいたしましょう?」
ん?奴隷紋?ギルドでは首輪をしている人しか見なかったんだけど。まぁ、奴隷紋がどんなものかは想像もできなくはないけど。
「うーん、それぞれの特徴というかメリットを教えてもらえますか?」
「かしこまりました。そうですね、まず首輪ですがこちらは奴隷紋と比べて安く仕上がります。さらに一目見て奴隷だと分かるので、特に冒険者の方や貴族の方は権力や力の誇示ということで首輪にされる方が多いです。次に奴隷紋ですが、こちらは首輪と比べて多少高くはなりますが首輪よりも強力な隷属を強いることができますし、見た目の問題で首輪を拒否される方もいらっしゃいます。例えば、伴侶に先立たれて連れをお求めの方ですとか、純粋な奴隷をお求めでない方はこちらを好まれますね。」
俺も特に力を誇示したいわけでもないので奴隷紋にしておく。というか目立ちたくないから。
「じゃあ、奴隷紋でお願いします。」
「かしこまりました。申し訳ありません、料金なのですが10万ゴールドに満たない奴隷の場合は1万ゴールドを徴収することになっておりまして……。」
「大丈夫ですよ。」
俺は金貨1枚を渡してお釣りの銀貨5枚を受け取った。
因みに自分で隷属魔法を使う場合はどうなるのか聞いて見たところ、商会人の立会いのもと魔法をかけるようになるらしい。理由は身内による安易な買い戻し防止だそうだ。
俺とエビラが話をしていると扉がノックされスタッフの女性とラナンキュラスが入ってきた。
ラナンキュラスは貫頭衣を手に持ち、全裸のままだ。……風邪引くぞ?いや、俺が言えることじゃないか?
俺が疑問を口にするよりも早くエビラが口を開いた。
「ハヅキ様、今回は奴隷紋を施されるということですが、どちらにされますか?」
あぁ、そゆことね。いちいち服を脱ぐとか手間になるから準備させてたってことね。
「では、背中でお願いします。」
「かしこまりました。」
エビラが返事をするのと同時にラナンキュラスが俺の前まで来て一礼し、ひざまづくように背中を向けた。
そしてエビラがぶつぶつと何やら呟くと、彼女の背中に黒い靄がかかった。
「ハヅキ様、準備が整いました。申し訳ありませんが血を一滴背中に垂らして下さい。そうすれば隷属の魔法が完了いたします。」
どうやら、ギルドカードの時のように血が必要らしい。俺は渡されたナイフで指先を浅く切り一滴血を垂らす。すると、黒い靄は形を変え花のような形になったと思ったら光った。
光が収まると背中の模様は花のまま定着したのかこれ以上変化することはない。
不思議に思い触ってみると、痣になっているとかでも刺青みたくなっているわけではないらしい。かと言って消えるわけでもなさそうだ。
うーん謎だ……ってなんで俺女の子の背中触ってんの?それも直で!
急いで手を引っ込めるとエビラもスタッフの女性も何やら珍しいものを見るようにラナンキュラスの模様を眺めている。
「これは……花、ですか?奴隷紋は奴隷の所有者が思い描く形が模様となり浮き出ますが、このような模様が浮き出るのは珍しいですね……。」
エビラの言葉につられるように背中の模様を注視すると、そこにはいくつもの花弁が中心に向かって咲くような一輪の花があった。
俺はそれを見て納得というか思い出したことがあった。『ラナンキュラス』は彼女の名前だが、地球では花の名前でもあった。原種は確か5弁の花とか言ってたが、テレビで見たときはこんな感じの花だった。
花言葉は確か……うん、忘れた!
「彼女の名前が昔見た花と同じ名前だったんですよ。多分それが関係してるんだと思います。」
「なるほど、それは素晴らしいです。ラナンキュラス、これからはこのお方がお前のご主人様だ。粗相のないよう精一杯ご奉仕しなさい。」
エビラがそういうと彼女は立ち上がって深々と頭を下げた。……全裸のままで。
多分俺が服を着ろって言わないと着ないんだろうなぁ。
「ハヅキ様、エビラ商会のまたのご利用をお待ちしております。今回はここ、ブリリアント皇国での商いでしたが、普段はこの国より東のエリエール王国を中心に商いをさせていただいておりますので、足をお運びになられた際にはぜひお尋ねになって下さい。」
「はい、ありがとうございました。機会があればぜひ。」
なんかどっと疲れた気がする。ただ、奴隷を買いに来ただけなのに……。感覚がすでに麻痺してるなぁ。
奴隷なんて最初レティに話を聞いた時には縁のない話のはずだったのになぁ。
ちなみにラナンキュラスの花言葉は『とても魅力的』や『晴れやかな魅力』といった意味があります
ぶっちゃけ花言葉にかけるためにヒロインの名前を決めましたw
ご視聴ありがとうございます
ブクマ、評価ありがとうございます!




