92話 嫁(予定)の無双
今話でVS魔物群勢は終了の予定です。
次話からはその後始末というか、物語でいうエピローグです。
それと私事ですが風邪をひきました。
なので次回の更新はかなり遅れると思います。
予めご了承下さいm(_ _)m
最後になりましたが、13万PVを突破しました!
ありがとうございます!
92話 嫁(予定)の無双
空気を震わせて、土煙を巻き上げながら現れた鬼たちの王は俺たちを視界に入れると更なる雄叫びをあげ威嚇する。
「……うるせぇなぁ……。」
喧しい中ポツリと呟いたそれだったが、ララにはバッチリと聞こえていたらしく律儀にも反応してくれる。
「本当ですね。元々、知性など持ち合わせていない様な連中ですが、これは何らかの理由で発狂している様に見えます。……普通では無いと言えば良いのでしょうか?」
「え?そうなの?よくそこまで分かるな。」
「いえ、私も感でしかありませんので確証はありません。」
それならその確証を見てみますか。
と、俺は魔眼で奴のステータスを確認してみる。
名前:オーガ・ロード(改造種)
LV:70
HP 7000/7000
MP 1000/1000
STR 4000
VIT 3000
DEX 3000
INT 1
AGI 4000
スキル(身体系):<身体強化LV5><魔力操作LV3>
スキル(武術系):<体術LV7><見切りLV6>
スキル(その他):<狂化LV-><再生LV5>
<狂化>…知性と引き換えに身体能力を大幅に上昇させる。失った知性は戻る事は無い。
<再生>…受けた傷を自動で回復する。効力は身体強化に依存し、練度上限も身体強化の練度に依存する。
成る程。どうやらララの予想はズバリ的中だったみたいだ。
INTが1なのは狂化が原因だろう。
それよりも気になるのは名前の横にある改造種という単語と再生のスキルだ。うーん……嫌な予感しかしない。
「ララの感は合ってたっぽいよ。あいつのスキルに狂化ってのがある。効果は読んで字の如く、知性と引き換えに身体強化をするっていう、狂った効果。」
「成る程。それで知性のカケラも感じなかったのですか。」
「他にも気になる事が……って話はここまでみたいだね。」
「そうですね。」
先程まで俺たちを威嚇する様に叫ぶだけだったオーガ・ロードが急に黙ってこちらに一歩、二歩と近づいてくる。
俺たちと奴との距離は20mは離れているが、奴はかなりデカイ。大体3m近くあるんじゃないだろうか?
身体強化をして踏み込めば一瞬で詰められる距離だ。
そろそろ交戦かな?と思った矢先に奴の足元を目掛けて矢が飛ぶ。おそらくミハエルの仕業だろう。
そう思っていると後ろから声が聞こえた。どうやら俺たちを心配しているようだ。
「ハヅキさん!ラナンキュラスさん!大丈夫ですか!?」
しかも、彼女は声を掛けるだけでなく、此方まで駆けつけて来た。
ぶっちゃけそこまで心配になる相手でも無いんだけどなぁ。
俺は魔眼でステータスを確認して大した事は無いと把握しているし、何故かララはパッと見で敵の大凡の強さが分かる。
俺ほど正確じゃないけど、その精度は確かなもので先程もズバリ言い当てて見せた。
これはララの才能が成せる技なのか、ララの師匠の教えなのか……。多分両方なんだろうな。
「あぁ、大丈夫だよ。これくらいの相手なら俺たち一人でも相手出来るだろうし。」
「はい、そうですね。」
「……は?」
俺たちの言葉にミハエルは怪訝そうな顔で首を傾げる。
……まぁ、普通に考えればそうだよね。
オーガ・ロードは本来Aランクに該当する魔物だ。
同じAランクの魔物でも、ゴブリン・ハイロードはゴブリンの習性や繁殖率の高さなどの危険度も含まれているが、オーガ・ロードは完全にその強さだけでAランク指定されている魔物だ。
それ故にミハエルは危険視しているんだろう。
更に付け加えるなら、奴の様子はおかしい。かなり気が立っている様にも見えなくもないし、より危険度が高いと言えなくもない。
だと言うのに、俺やララは問題無いと言うんだ。そりゃ『は?』ってなるわ。
「いやいやいや!おかしいでしょ!?オーガ・ロードよ!?幾ら何でも………っ!?」
興奮した様に詰め寄ろうとしていたミハエルだったが、それはオーガ・ロードが距離を詰めようと戦闘体制に入った為に遮られた。
……と言うか戦闘中にそんな事しようとすんなよ。危ねぇわ。
奴が前傾姿勢になって距離を詰めようとする中、俺は逆に距離を詰めて斬り倒してやろうとしたが、それよりも早く行動していた奴がいた。
ララだ。
ララはオーガ・ロードが一歩を踏み出すよりも疾く奴の懐へ飛び込み、2、3斬りつけて直ぐに離脱する。
しかし、然程深い傷にはなっていない様で、すぐに傷が塞ってしまう。
それを見てオーガ・ロードから余裕の笑みとも取れる叫び声?笑い声?が漏れる。
そんなオーガ・ロードに対してララも余裕の態度だ。一切の焦りが見られない。
というのも、さっきのララの攻撃はどう見ても様子見のものだった。
これを避けられるのか、それとも意に介せず反撃してくるのか……。オーガ・ロードの対応を見てどの程度の敵か判断するつもりだったんだろう。
寧ろ、若干の失望と言うか、呆れが見られる。
おそらくララには再生するだけの的にしか見えてない筈だ。
「……え?す、凄いですね。今の最後の方しか見えませんでした。」
防護の魔法を張ろうと様子を伺っていたミハエルだったが、ララの動きを見てそれはやめたようだ。
まぁ、賢明な判断だと思う。ぶっちゃけ今のララのトップスピードは俺でも付いて行けない。
多分、レベルが上がってステータスが伸びたからだとは思うんだが、それにしてもなぁ。
いつのまにかAGIの数値でも負けてるし、仕方ないと言えばそうなんだがそれだけじゃない気がする。
何というか、魔物と戦う度に動きが洗練されていって無駄が少なくなっていっている感じ?なんだよね。
元々、隙が少なくて無駄が無かったけど更に動きが良くなって、ゼロからトップへ、逆にトップからゼロまでの急加速、急減速がかなりスムーズになっている気がする。
あれを真似してみろって言われて出来る奴はいるんだろうか?少なくとも俺には出来ない。……ララの師匠なら出来そうだなぁ。ララ曰く、人外らしいし。
「まぁ、ララだしなぁ。」
と、苦笑い気味に答えるとミハエルも同じ事を思ったのか苦笑いだ。
あんな真似は出来ないと。
ちなみに、ララがよく使う『影閃』は今は使えない。
これは影魔法の一つで、敵の影を斬れば実体も同じ様に斬れるというトンデモ魔法?だ。魔力の消費は激しいそうだが、それを補って余りある程強力だと思う。
特にララはどちらかと言えば非力だし、それを補う形になるこの魔法はララの要と言ってもいい。
だが、その強力な攻撃も夜の間は使えないらしい。
なんでも敵の影と周りの影が一体化しているという判定になるそうで斬りようが無いそうだ。言われてみれば……といった感じだ。
使えていれば最初の攻防でケリがついていたしね。
つまり、ララの使う影魔法は夜の間に制限が無くなるものがあれば、逆に制限が掛かるものもあるという事のようだ。
中々使いどころが難しそうな魔法だ。まぁ、ララは使いこなしてるけど……。
「オガァァァアアアアア!!!」
オーガ・ロードは傍観する俺たちが気に入らないのか、余裕の態度を崩さないララが気に入らないのか、苛立ちの声を上げる。
それを見てララは先程やって見せたように一瞬で間合いを詰めて先程と全く同じ場所を斬りつけようとする。
オーガ・ロードも先程の攻防で一応は警戒はしていた様で迎撃するが遅いし、鈍い。
ララは掠る事も無く躱し、左右の短剣を振るう。
オーガ・ロードとしては最初の攻防でララには大した攻撃は無いと踏んでいたようだが、今のララの攻撃は最初のものよりも数段疾く、鋭くて奴の身体を深く抉った。
「グガァァァアアア!!!」
余程効いたのだろう。辺りに血を撒き散らしながら絶叫する。
受けた傷も先程の様に直ぐに完治するというわけでは無い様で治りが遅い。
オーガ・ロードはたたらを踏みながらも意地なのか両の拳で反撃を仕掛ける。
今の至近距離なら小回りが利く分、オーガ・ロードが有利ではあるが地力が違いすぎた。
乱雑に振り回されるそれをララは宙を舞う木の葉の様に躱し、その度に両の武器を振るいオーガ・ロードに傷を負わせていく。
傷は大小様々あって、まるでオーガ・ロードの再生力を図っている様だ。
右の拳を避け、その勢いのまま右の短剣でオーガ・ロードの右脇腹を斬り、そのまま回転して左の短剣でも斬る。
振り回す様に放たれる右拳の裏拳をしゃがんで避け同じ所を再び斬る。
何度も同じ場所を攻撃され傷がどんどん深くなっていく。
そこをかばう様に立ち回ると、今度は別の場所を攻撃されてまた同じ結果になる。
何度かその攻防を繰り返しているとダメージの蓄積か、血を流しすぎたのか、一瞬オーガ・ロードの膝が落ちた。
その隙をララが逃す筈が無い。
瞬時に、振り回される腕を足場にしてオーガ・ロードの首を刎ねた。
ララと敵ボス?の戦闘はララの圧勝で終わった様だ。それも『影閃』無しで。
ララつえー。けどさ……。
……俺の出番は?
ご視聴ありがとうございます。
ブクマ、評価ありがとうございます!




