8/58
エルフの乗り手
『ひと際小さい船で三匹のドラゴンを操る飛竜艇乗り、
今更説明は不要でしょう!
2年前、若干15歳にしてレース参戦、2年連続総合準優勝の若き天才!
今年の優勝候補筆頭! ソルベル・ホーリード!』
大音量で響き渡る、飛竜艇乗りの紹介アナウンス。
でも、今まで、これほど集中力を途切れさせられることはなかった。
私と兄はエルフ族の乗り手として、恥ずかしくない結果を残さなければいけない。
妹の私が、足を引っ張るわけにはいかないのだ。
でも、分かっているのに、どうしても彼が気になってしまう。
「ミカ、心が乱れているな」
操舵席にいる兄は振り返ることなく言った。
後ろの操舵補助席から見える、金色の長い髪の一部を三つ編みにした後ろ姿、
里の勇士しか着ることを許されない古代文字が装飾された外套を羽織ったその背中は、
只そこにいるだけでも威厳があった。
「なんでもない。平気よ、兄さん」
兄と同じ三つ編みにした髪が、妙に重く感じる。