飛竜艇とドラゴン
俺の乗るガレオン船ほどの大きさである帆船の前方で、
ハーネスのようなものに太いケーブルで繋がれた三匹の兄妹ドラゴンが、
大きな歓声にそれぞれの反応を見せていた。
三匹とも帆船より2回りほど小さいが、それでも人間からすれば相当な大きさだ。
真ん中にいる、全身を白い皮膚と鱗に覆われ、
首元と翼の付け根に赤い模様のあるドラゴンは、兄妹で一番上のアイルだ。
後ろに流れるようにして生えた数本の角は、どれも羽根のように丸みを帯びている。
さすがに長兄ともあって、周りを少し見回すとすぐに落ち着き払い、また静かに待機した。
左側にいる、全身を真紅の鱗で覆われたドラゴンのハイルは、歓声に興奮し、
早く飛ばせろと言わんばかりに翼をバタつかせ、水飛沫を上げる。
俺は操舵席にある革製の紐を引っ張った。
ドラゴンと船を繋ぐケーブルの中にはこの紐、手綱が通っていて、
引っ張るとそれがドラゴンが付けているハーネスに伝わるようになっている。
気付いたハイルは長い首を曲げてこちらを見た。
俺はもう一度ハイルを見ながら、落ち着け、と言うように、優しく紐を引っ張る。
ハイルは 、わかったよ、というようにバタつくのをやめた。
それでも湧き上がるものは抑え切れないらしく、
頭と体をしきりに武者震いさせている。