露になった姿
またしても、あいつは俺の船に体当たりを仕掛けてきたのだ。
船を若干斜めに傾斜させ、自らの帆が当たらない角度で突っ込んでくる。
俺はハイルを加速させ、すぐに船尾をずらした。
あいつの船が迫るが、寸での所でかわす。
そんな、手を伸ばせば届く距離にまで、船が迫っていたときだった。
操舵席にいるあいつの姿が、しっかりと見えた。
褐色の肌のなかにある目は、こちらを見たまま大きく目を見開かれていた。
光を反射させたそれは、まるで、濃淡の異なる砕かれた琥珀のようだ。
耳元まで裂けんばかりに広がった口の中には、
捕食獣のような鋭利な牙が上下噛み合わされている。
船を曳かせているドラゴンのたてがみに似た短髪と首元には、
他のドラゴンのものなのか、鱗や牙、鋭い爪を幾つにも連ねた飾りが揺れていた。
体勢を立て直すため、お互い距離をとる。
離れ際には、あいつの、やたらと露出の多い戦闘向きな部族の衣装も目に入った。
露わになっている肌には、ドラゴンと同様に小さい文様が所せましと描かれている。
しかし毎度のことながら、あの形相だと、とても女性とは思えない。