大人げないケンカ
「あなたはどう? そんなことしてもらったことある?
あ……そうか、いくらソルベルでも、
あなたみたいにゴッツイ女を前に乗せたいなんて思わないわよね。これは失敬」
ジュリはあざといほどの笑顔でレーサに詫びる。
そんな余計な追い打ちで、レーサのこめかみに血管が浮き出た。
「こっちは子供の頃から一緒に船に乗ってんだ。
むしろ船の基礎を教えたのは私なんだよ。
そうそう、あいつの初飛行の時も隣に乗ってたし、
冒険ごっこで遠出した時は2人だけで船に寝泊まりしたな。
私の寝相が悪くて起きたら同じ寝袋に入ってたっけ。
ガキのお守りと違って、こっちは昔から楽しくやってたさ」
今度はジュリの額に数本の血管が走った。
「今日という今日は我慢ならないわ!
パトロンである企業令嬢の私に向かって何なの、その口の利き方!
私が一声かければあなたの造船所とか工場なんか、いつでも抹消できるのよ!」
「やれるもんならやってみろ。
そのパトロンの企業が今度作る新製品の部品、他の所でも作れるんならな。
大体、こっちには別の企業と他の国からも契約の依頼が来てるんだ。
いつだって取引先を変えてもいいんだぞ?」
ジュリが思い切り歯噛みしながらレーサを睨みつける。
レーサも眉間に物凄いシワを寄せながら睨み返す。
「落ち着いてくださいよ。失礼ながらレーサの言う通りです。よく見てください 」
俺はソルベルの方を指差した。