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息を呑む瞬間
周囲は完全に静まり返った。
目の前にあるのは、宙に浮く小さな飛行船の黄色い灯りだけ。
アイル、ハイル、カイルとも、深く長く呼吸をし、俺の合図を待っている。
今一度、操縦レバーを動かし、帆の動作具合を確認する。
帆と言っても純粋な帆船の物とは違い、
どちらかというとハンググライダー、懸垂式滑空機の翼に似ている。
上と左右に複数付いていて、空中での船の動きや姿勢を制御するものだ 。
これを上手く使わないと、ドラゴンに余計な負担がかかってしまう。
飛行船の、黄色の明りが消えた。
ついに、息を呑むのも許されなくなる瞬間が訪れる。
俺もドラゴンも、全ての感覚を、飛行船の灯るであろう明りの方へ集中させた。