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グローム
「ソルベル・ホーリード……彼は、私たちの敵だ」
「……うん」
「だが、ただの敵では無い。彼は好敵手だ。
そう呼べる者に出会えるのは、滅多にあることではない」
「うん、そうだね」
「二年前は私達が勝った。だが、去年は彼に負けている。
今年は……また勝ちたいな」
兄の微かに見えた横顔は、笑っているようにも見えた。
それが、私はなんだか、無性に嬉しかった。
「うん! 勝ちたい」
自然と、私の声も明るくなっていた。
『次にスタート位置につくのは、前々回の覇者、
昨年は惜しくも総合3位でしたが、エルフ族最強の竜騎士の異名は今も尚健在!
兄妹での最速の飛竜艇乗り、キーネ・グロームとミカ・グローム!』
いつもは、どうとも思えない実況者の紹介アナウンス。
でも今日、このときばかりは、胸の奥に何かを灯した。