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一話


思考が纏まってきたのは、この世界で生を受けて一カ月ほどたってからだった。


さて、セオリーではあるがこの世界においての龍とは、非常に魔力の高い生き物であり(魔力と聞いてテンションが上がってしまったのは内緒)、高度の知能をもつらしい。また、長命であるため生殖能力は低く(というより数が減ることが滅多にないため生殖が必要ないという)子供が生まれることもまれだそうだ。ちなみに私は500年ぶりの子龍であるため皆が心待ちにしていたとのこと。

らしい、が多いのは私も産まれたばかりでいまいち把握しきれない部分がたくさんあるからだ。


「エリカさま、ナイルさまが心配されていましたよ。何度呼んでも返事がないと。」


「ごめんなさい、かんがえごとをしていたの。」


先ほどから耳元がぞわぞわすると思ったらお母様が通信してきてたのか。

龍である私たちにはうまく言葉にして説明はできないのだが、テレパシーに似たような手段で会話ができる。産まれたばかりのときに会話ができたのはこの能力によるところだ。しかし、もと人間だからか、それとも産まれたてだからなのか、そのコントロールがうまくできないのである。


「左様でございましたか。ならお返事がてらお顔を出して差し上げたらどうですか?」


「ええ、そうするわ。」


蛇族のメイドにそう言われて母の部屋に向かう。

このお屋敷はとても広く、その大きさにふさわしくさまざまな種族の使用人たちであふれている。見た目はひとに近い姿をしているがその髪や瞳の色は日本、いや地球上ではあり得ない色をしているのでやはり異世界なのだなぁと思う。

そんな私も髪は白いし瞳だって黄色だ。



「おかあs…っぶ!く、くるs「エリカ!!今そなたを捜索に出ようとしておったのじゃぞ?!返事がないゆえ、どこぞのやからに攫われでもしたのかと!」……すいません、おかあさま、かんがえごとをしておりました。」


髪を振り乱して涙を眼に溜めた母に抱きつぶされそうになった。この方はたおやかな麗人と見せかけてなかなかに激情家でいらっしゃるのだ。


「よいか、母の呼びかけにはすぐに答えるのじゃぞ?そなたは賢いがまだ幼いのじゃ。」


少し落ち着いたお母様は真剣に言った。その表情には冗談のかけらもなく、ただひたすらに子への愛情にあふれていて、精神年齢は幼くはない私でも心打たれるものがある。心配されたのなんていつぶりだろうか…前世では高校生のときに実母を亡くした私にとっては、思いのほか嬉しかった。


「はい、おかあさま。いごきをつけます。」


「ならよい。以後、など難しい言葉を知っておるなぁ。賢い子じゃ。」


もっと上手に通信できるように訓練しなければ、とこっそり心の中で呟いて、よしよしと頭を撫でられる感触に目を細めた。

なんて、幸せなんだろう。




一話.終

短いです。

ちなみに龍同士筒抜けというわけではありません。意識してコントロールすれば伝えたいことだけ伝えることが可能です。

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