<レティシアの選択 1>
帰る途中にアルカの為にお土産を買いに少し店に立ち寄った。ワッフルみたいなものがあったのでお土産はそれにした。
程なくして俺達は家に着いた。
「ここが俺達の今の家だ」
俺は家を指す。
「…………大きいわね」
レティは驚き、家を見上げる。
「入るわよ!」
「キャッ、ちょっ……」
姉さんがレティの手を引っ張り連れて行く。
扉を開け玄関に入ると。
「お帰りなさい。コウ兄、エリナ姉、シルフィー姉」
アルカが出迎えてくれた。姉さん達の呼び方は俺を兄と呼ぶのだから当然の帰結だな。
それと先程から気になっていたがアルカの一部が朝出た時から違ってる。
「アルカ、その髪はどうしたんだ?」
「切ってもらったの!!」
アルカの髪は朝はぼさぼさだったのが今は綺麗に整えられたショートの髪型になっていた。
「一体誰に切ってもらったんだ?」
「アリアンナさん!!朝にコウ兄達と入れ違いで来て掃除して帰って行ったよ」
「何か言ってた?」
「頑張って御仕えしなさいって」
こっそり掃除して帰るだけだったんだな。この屋敷を短時間で掃除するなんて侮れない人だ。
「そうだ。これがお土産だ」
俺はお土産のワッフルをアルカに渡す。
「わーい」
「それと、紹介しよう友達のレティシアだ」
「いつ紹介してくれるのかと思ったわ。レティシアよ。よろしくね」
「アルカです。こちらこそよろしくお願いします」
「それじゃあ、姉さん達はアルカとお茶でもしといてくれ」
「へっ?みんなで話すんじゃないの?」
レティは疑問符を浮かべる。
「いいから、こっちへ来てくれ」
俺はレティを引っ張って自分の部屋へと入る。
「強引ね。それで話してくれるのよね?」
部屋へ入るとレティはいきなり本題に入る。
「その前にいくつか話す事と聞く事がある」
「なあに?」
「まず、アルカは何も知らないと言う事だ」
「あれ?妹さんじゃないの?」
レティは呼び方から妹と思ってたようだ。メイド服を着ていても俺達の事をあんな風に読んでたらそう思うのも無理はない。
「言い方は悪くなるかもしれないが、つい最近拾ったんだ」
「拾ったって!?」
少し非難交じりの声色を出す。
「色々と事情はあるけど、今は関係ない事だ。まずは本題が先だろ?」
「そうね、ごめんなさい」
元々自分が聞きたいからこの席がある事を思い出しレティは謝る。
「それで本題だけど、レティは分かるかもしれないが俺は一般から少し離れてる」
「そうね。少し離れてる程ではないわね」
レティの言葉に苦笑いする。
「そして、俺は公爵家次男だ。次男だから家を継ぐわけじゃない」
「なるほどね。公爵家っていう家名に物凄い実力、みんな喉から手が出るほど欲しいわね」
「この国だけならまだいいけど、他国が絡んでくると相当厄介になる」
「そうね。他国の王女との婚姻なんてあるかもしれないわね。そうなると断りにくいわね」
レティは頭が良いので話すのが楽だ。少しの情報でこちらの意図を読み取ってくれる。
「だから、俺達は基本的に実力を隠すようにした。あまり目立ちたくなかったし」
「どこが隠してたの?あんな事やっておいて目立ちたくないなんて冗談にもならないわ」
「まぁ、あの時はレティが殴られて頭にきていたからね」
「それについては感謝してるわ………」
頬を赤らめていた。
「それで、俺の本当の実力を知っているのは公爵家と一部関係者のみとなっている」
「そこまで秘匿しているの!?一部関係者ってお爺様も?」
「学園長は知らないはずだよ。何処からか情報は多少手に入れてるだろうけど、こちらから話しているわけじゃない」
「そう………。それであなたを学園に呼び寄せたのね。あの実力を知っていたのなら頷けるわ」
「それでだ、俺の知識や技術などを教える事は俺の秘密を教えるに等しいわけで、それ相応の覚悟が必要だ」
「そうね。コウから学んだと誰かが知ればコウに興味を持ち、そこから色々調べられる可能性もあるものね」
俺はレティの顔を真っ直ぐ見つめる。
「だから、俺が色々教えたりできるのは基本的に身内だけだ。一般的に出回ってる知識や技術なら身内だけなんて事は言わないがな」
「なるほどね。それが覚悟なのね。コウの身内になるか、それともただ友達でいるかの」
「そうだ。技を教える場合はステータスを教えているようなものでもあるしな」
ステータスはよっぽどの仲でなければ身内以外には基本的に見せないので、この説明でレティは察してくれるだろう。
「でも、そこまでの事必要かしら。確かにコウの実力はすごいわ。教える人を限定するのもわかる。だけど、わざわざ身内にしないとダメなの?」
予想外の反応に俺は驚く。レティは身体を抱き締めるようにしながら少し俺と距離を取っていた。
もしかして……………。
「勘違いしてるかもしれないが、身内って言うのは将来は公爵家に仕えるとかで別に俺のものになれって事じゃないぞ!!」
俺は慌ててレティの勘違いを否定する。
「なんだ、そういう事だったのね。安心したわ」
「それにまだ勘違いしてるみたいだが、俺の”本当の実力を知っているのは基本身内だけ”だ」
「…………えっ!?」
レティは驚きで目を開く。
「先ほどレティが思っていたレベルじゃないと教えれない、ぐらいの警戒でも足りないかもしれない。それに実際に教えてるのは姉さんとシルフィーだけだしね」
「……………もしかして、実技テストの時全力じゃなかったの!?」
「全力じゃない」
実際には全力どころか一割も出していない。初級魔法しか使ってないしな。
「決めたわ!!」
レティは勢いよく立ち上がった。
来月からは更新頻度が変わると思います。
見直しや新しい構想など色々としたいからです。
なるべく更新できるよう頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします。