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<side エリオットの受難 1>

~side エリオット~


俺はエリオット=サイモン。今日から1-Sの担任になった者だ。

俺はドアの前で立ち止まり一つ深呼吸を入れた。今から入る1-Sとは特殊なクラスで国賓待遇に飛び抜けた能力や潜在能力が異常に高いもの、そして他だと対処しにくい貴族の子息をまとめたクラスだ。

学園長からは今年は特別で今までと比べても格段にすごいらしい。要注意リストを渡されそのリストを見るととんでもないものばかりだ。

隣国の第二王女や公爵家令嬢に侯爵家子息などそうそうたる面子だ。だが一番の危険度はその誰でもなかったのには驚きだ。

まぁ、そのデータを見ただけでこれなら当然と言えるのだが、公爵家の次男で飛び級のコウ=アレキシスだ。独自調査によると七歳でドラゴンを倒せるレベルらしい。それでいて頭の方も良いみたいだ。

一応、性格的には温厚らしいのが幸いだろう。だた注意書きに”身内や大切なものを理不尽な目に合わされるのは彼の逆鱗に触れらしく注意せよ”と書いてある。

このデータだけではわからない事もあるし、間違ってる情報がある可能性もあるので、やはり直接会ってみるしかない。覚悟を決めて教室に入る。


コンコン、ガチャッ


「席に着け!座席は適当だから好きな所で構わん。そこの立っている奴らも早く座れ」


何人かは従わなかった奴がいる。命令口調が気に入らなかったんだろうな。一応問題児候補として顔を覚えておこう。


「いいから座れ。話が進まんだろうが!」


「それじゃあ、ホームルームをはじめるぞ。始めに自己紹介をやる。俺の名前はエリオット=サイモンだ!今日からお前らの担任教師になる。ビシビシ扱くから覚悟しとけ!!」


俺は軍人上りで教師になったため、生徒を指導する時はこういうやり方になってしまう。


「じゃあ次はお前らの自己紹介って普通なら言うんだが、俺はお前らの名前知ってるから時間の無駄になるのでしないぞ。自己紹介は各自でしとけ。それからこの学園では家名を名乗るの禁止だから自己紹介の時は家名は言うなよ」


実際俺は全員の名前を知っているが自己紹介をしてもらうのは無駄ではない。しかし、それよりも各自で自己紹介した時にやはり自分の身分を匂わせて支配するやからがでるので問題児を把握する場合こっちの方が手っ取り早いのだ。


「先生質問です!」


一人の生徒が質問を投げかけてきた。


「なんだ?」


「もし、家名を名乗ったらどうなるんですか?」


「楽しい事が待ってるぞ!!」


「ホントですか!?」


俺の言葉に馬鹿正直に目を輝かして聞いている。実際に家名ルールを破ったとしても評価が最低になるぐらいだから、頑張れば取り戻せるレベルだ………普通のクラスなら。

しかし、このクラスに集まってるのはよくも悪くも影響力が強そうなのばかりなので釘を刺しておく。


「あぁ、俺がみっちりルールを守らない奴は守るようになるまで付きっきりで教育してやるからな」


その言葉に質問してた生徒たちの顔が蒼くなった。


「それじゃあ、ホームルームは終了だ。残りの三十分くらいは自己紹介でもしとけ。次の時間は魔力計測と実技テストだ」


俺はそう言って出て行った。俺は途中までは普通に遠ざかりある程度離れたら気配を消して教室前まで戻った。

中の様子を見てみるとさっそく問題が起こっているようだ。しかも問題を起こしているのが侯爵家のヘッジ=モンテローゼと公爵家の長女に次男に次男の従者に学園長の孫………。

いきなり大きすぎる揉め事だ。俺はギリギリまで様子見る事にした。最初は口論だけだったが、反論や途中で参戦してきた女生徒に良いように言われた事にによりヘッジ=モンテローゼがその女性とを殴ろうとした。

あの女性とはまずいと思い、急いで中に入ろうとするが間に合わないのは確定である。そう思い一瞬躊躇った時には状況が動いていた。コウ=アレキシスがヘッジ=モンテローゼの拳を受け止めたのだ。

俺はその動きが全く見えなかった事に驚愕した。それは近くにいた生徒たちも同様だったみたいだ。二人はその体制のまま話していたが、ヘッジ=モンテローゼが苦痛の呻きを漏らした。

コウ=アレキシスがヘッジ=モンテローゼの拳を握りつぶそうしたのだ。俺は務めて平静を装いつつ慌てて教室に入る。


ガチャ


「おまえら何をしてる?」


「いや~、みんなで自己紹介してたら盛り上がりましてね」


コウ=アレキシスは平然と嘘をつく。教室の様子を窺ってなければ絶対わからなかっただろう。やはりただの温厚な性格ではないようだ。


「そうか、それならいい事だ。そろそろ時間だからついてこい。まずはホールに行く」


俺はあえてその言動を信じ教室を出ていく。生徒たちはぞろぞろと俺の後をついてくる。


「それじゃあ、一人ずつ呼ばれたら中に入れ。まずは先頭のお前からだ」


俺はホール前に着くと前の生徒から順にホールの中へ入れていく。魔力測定は魔力量を測定するわけではなく、魔力の威力を測定する。現在の初級の威力からどれだけ威力を上げれるかが成績に反映する。

殆どいないが、現時点で初級を完璧に使いこなしてる場合は中級魔法の修練を進めたりもする。この時に使われる的は特別製で上級魔法ですら耐えうる強度だ。

天才と呼ばれるものは初級でこの的に傷をつける。すなわち、初級で中級レベルの威力を出せるという事である。もちろん今の俺なら初級で傷くらいはつけれるが、その天才達は俺と同い年の時には中級であの的を破壊できるだろう。

今回の俺のクラスは問題児も多いが粒揃いなのは確かなので天才クラスが何人かいる可能性が高く少し楽しみで俺は結果を少し楽しみにしていた。


「はい、次!」


俺は次々に中に入れていき、次が先ほど物凄い動きを見せたコウ=アレキシスだ。一体どんな結果になるんだろうか。


「次!!」


コウ=アレキシスがホールの中へ入り少し経った時だった。


ドゴォォォォォォォォォン


中からあり得ないほどの爆音が響いた。コウ=アレキシスが何かやったのかと思ったが、わざわざ自分から面倒事を起こすようには見えなかったし何かの事故かと思っているとコウ=アレキシスがホールから出てきた。


「何があった!?」


俺はコウ=アレキシスに詰め寄り問いただした。


「いえ、なにもありませんよ。魔力測定の結果です」


「そ、そうか。では次!!」


測定の結果だと!?ということは、さっきの爆音は初級魔法で起きたって事になる。一体どうなってるんだ?後でしっかり測定結果を聞かなくては。

俺はそう思いながら次を促していたが、少し経つとまたさっきより音が小さいが同じような音が聞こえてきた。今はいってるのはエリナ=アレキシスだ。あの姉弟は一体どうなってるんだ。もうわけがわからない。

エリナ=アレキシスの次はシルフィー=アルバーナでコウ=アレキシスの従者だ。シルフィー=アルバーナが入るとやはりエリナ=アレキシスと同じような音が聞こえる。

従者の場合は年齢が高くエルフと言うのもあるのでまだ分かる。だが公爵家の二人は異常すぎる。特にコウ=アレキシスだ。飛び級だけでも割と異常だが、こちら側から飛び級で入らないかと誘うのは前代未聞で、しかも従者付である。

この学園は原則従者は不可である。学園に入る対象年齢で能力がある場合は従者と認め同じクラスに配置などの配慮はあるがそれ以外は基本認めていないのにそれすらも従者もご一緒にとこちら側からの提案だ。

やはり、コウ=アレキシスにはまだ何かがあるんだろう。


「次は実技テストだ。テスト方法は俺と一対一の対戦だ!!」


魔力測定が終わり、俺は気を取り直して実技テストに挑む。


「「「「「「「「「え~~~~~~~~~~~~~~~」」」」」」」」」


生徒共がうるさく声を上げる。


「うるさい、だまれっ!!複数人と組んでもいいぞ。先に言っておくがこのテストは直接は成績に影響しない」


俺は黙らせつつも、この実技テストの意味を教える。


「しかし!!評価には影響する。まぁ最終的に成績に影響すると言えるが、ここで残念な結果だったとしても日々努力し成長という結果につながれば、残念な結果の奴がここまで成長したのかと評価が普通より良くなる場合もある」


「だから今はとにかく全力で戦え。そして、その結果から学び成長して見せろ!!さぁ、誰からやる?」


「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」


次々に挑んでくるがどれも歯ごたえがない。問題児や実力のあるものはまだ静観していた。

そろそろ実力者達ぐらいしか残ってない状態になった時だった。


「先生!!私はあそこのチビとやりたいのですがいいですか?」


ヘッジ=モンテローゼから驚きの提案をされる。


「なにを言ってやがる!?これは実技テストだぞ。決闘や対戦ではない」


「これは今どれくらい動けるか見るんですよね?それなら生徒同士の戦いを先生が見ても変わらないんじゃないんですか」


「一理はあるが、両者の力に差がありすぎた場合負けた方の評価が難しいからな。直にやってみないとわからん事もあるし」


俺はヘッジ=モンテローゼの言葉に少し揺らいでいた。評価もあるが何より先ほどの教室のやりとりから、ここで決着をつけておいた方がいい気もしたからである。


「そうですか、それなら仕方がないですね。あのチビが僕に勝てるはずがないですし、フフッ」


考えた後、俺は最低限の条件をつけて了承する事にした。


「なかなか面白そうだし、お前らに限り負けた方が評価最低でもいいなら許可してもいいぞ」


「僕は構いませんよ。あのチビが受けるかわかりませんが?」


その場が対決ムードになっていた。


「やりませんよ」


しかし、コウ=アレキシスからは否定の言葉が出た。俺も対決させる気になっていたのでこの空気をどう収拾つけようかと思案していると。


「別にやる必要ないのだからそれでいいでしょ。あなたもわざわざコウを挑発するのはやめなさいよ」


その空気を打ち破ったのはレティシア=べルシュタイン。学園長の孫だった。


「うるさい!!」


ヘッジ=モンテローゼはいきなりレティシア=べルシュタインに殴りかかり、その右拳がレティシア=べルシュタインの顔にヒットする。レティシア=べルシュタインはそのまま勢いよく地面に倒れ込んだ。

今のはさすがに誰も反応できなかった。


「あなたよくも女の顔を殴ったわね!!」


エリナ=アレキシスはヘッジ=モンテローゼに詰め寄っていた。


「うるさい。あの女が悪いんだ!!」


ヘッジ=モンテローゼはレティシア=べルシュタインが悪いと言っているがどうみてもヘッジ=モンテローゼが悪い


「さっきのは教師としても男としても見過ごせない。誰かレティシアを救護室に!!ヘッジお前は俺とこい」


俺はヘッジ=モンテローゼを連れ出し、少しきつめの仕置きでもしてやろうと思った。ここでは貴族など関係ないから悪い奴には思う存分説教などができる。


「僕は悪くないんだ。元々あいつらが悪いんだ~~」


うるさいヘッジ=モンテローゼを引きずって行く。レティシア=べルシュタインはコウ=アレキシスが救護室に連れて行ってくれるみたいだな。

コウ=アレキシスがレティシア=べルシュタインを持ち上げるのを見てあの体のどこにそんな力があるのか不思議だった。

まぁ、今はそんなことはいいかと考えた時だ。


「先生!!さっきのヘッジからの提案ですが受けていいですよ」


コウ=アレキシスから驚くような言葉が出た。


「おまえ何言ってる。そんな事よりレティシアを救護室に連れて行ってやれ。あれは結構腫れる当たり方だったぞ!!」


俺はさっきの当たり具合から心配していたのだ。しかしコウ=アレキシスの返事は予想の斜めをいった。


「怪我ならもう大丈夫なんで」


レティシア=べルシュタインの顔を見てみると本当に傷一つないのだ。


「いつのまに!?それにどうやって!?」


俺は驚き問いかけた。


「そんな事より、さっきの対戦はしていいんですか?」


だが、全く相手にされなかった。そして対戦を希望している。さすがにこんな状態での対戦は認めれらないと思っていると、物凄い眼光のコウ=アレキシスと目があった。


「しかしなぁ~………………わかった。気を付けてやってくれ………」


俺はコウ=アレキシスの目を見た瞬間生きた心地がしなかった。今まで戦場や数々の強者、魔物と戦ってきたがあれ程怖いと思った事はなかった。俺はあの目に逆らえなかった。

だから、俺は”気を付けてやってくれ”とそれしか言えなかった。ヘッジ=モンテローゼを殺さないようにとだけしか言えなかったのだ。


「馬鹿だな。せっかく断われたのを受けるとは。そんなに恥をかきたいのですね」


「馬鹿なのも恥をかくのもお前だけだよ」


「なんだと!?」


「それじゃあ、始めようか。やんごとない生まれのクズ様よ」


俺は二人の舌戦と言うか口論を聞きながら冷や汗をかいていた。ヘッジ=モンテローゼは何を相手にしてるかわかっていない。それ以上逆鱗に触れてはいけない。

二人は互いにショートソードを構えて向き合っていた。


「チビが調子に乗り過ぎですよ」


「それでは、ヘッジとコウの模擬戦を始める。模擬戦だからやり過ぎないように。はじめ!!」


俺は教師として模擬戦の開始の合図をする。念のためにやり過ぎないように言うのが精一杯だった。


~side エリオット end~

途中で切りましたが、明日にコウとヘッジの対決が終わるまでエリオット先生視点を投稿します。

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