<解放>
「止まれ」
王都にようやく着き、城門前で衛兵に止められる。
「通行証はあるか?」
「はい、これですね」
俺は衛兵に通行証を見せる。
「こっ、これは公爵様失礼いたしました」
衛兵は急に礼儀正しくお辞儀をした。まぁ、公爵家の人間をみたらそうなるよな。
「いえいえ、気になさらずに。あなたのお仕事なのですから」
「恐縮であります」
「それで、頼みたい事があるのですが良いですか?」
「なんなりと仰って下さい。ですがここだと通行の邪魔になりますので馬車は少し脇に止めてもらい、応接室まで来てくださいますか?」
「わかりました。御者さん少し話してきますのでお願いしますね」
「畏まりました」
御者さんは場所を端の方に移動させに行った。衛兵の人も他の衛兵に一言二言話こちらに戻ってきた。
「それではついてきて下さい」
俺達は全員で後をついていく。倒れてた女の子はシルフィーは背負ってる。
普通は俺が持つのだが、従者がいるのに主のはずの子供が子供を背負うのは少し人目をつくからである。
「狭いとこで申し訳ありませんが、そちらにお座りください」
俺達は席に着いた。
「自己紹介がまだでしたね。私はここの隊長を務めさせていただいてる、グエン=ウイズリーと申します」
「私は公爵家次男のコウ=アレキシスです。こっちは姉のエリナに従者のシルフィーです。」
姉さん達は俺のあいさつに合わせてお辞儀する。
「それで、頼みたい事とはどういう事でしょう?」
「私は今日初めて王都に来たのですが医者を探していまして、何処に居るかを教えて欲しいです」
「医者でしたらちょうど軍医の方が来るので、後程紹介できます」
なんてタイミングが良いんだろうか。簡単に医者が見つかった。
「では紹介をお願いします。それと来る途中に奴隷商らしき人が盗賊に襲われていて残念ながら見つけた時には殺されてしまいた」
「本当ですか!?それならすぐに討伐隊を出さないと行けません。どの辺で見ましたか?」
衛兵は少し慌てたように聞いてきた。
「心配には及びません。盗賊の方はすべて退治しました。ただ救出した奴隷の女の子達が居るのですがその子達の処遇はどうすれば?」
「そうなのですか!?でしたらこちらで犯罪歴があるかを確認し、あるものは他の奴隷商に引き継いでもらい、ないものは解放となります」
やっぱりそういうシステムか。たぶん死んだ奴隷商を疑うとかではなく後々の問題にならない配慮だろうな。
「ちなみに、犯罪歴があり奴隷のままならば救出した者、今回の場合ですと公爵様が優先的に収得権があります」
「それは買うって事ですか?」
「違います。この場合ですと奴隷の所有権がを現在公爵様が持っている状態で、他の奴隷商に引き渡した場合引き渡し時に料金が発生しています。その料金を公爵様が頂けるという事です」
「では、簡単に言うとこの子たちが奴隷だった場合、私がいらなければ他の奴隷商に売るっていう事になるわけですね?」
「そうです」
うわ~、奴隷ではないと思うけどそうだった場合はなんか嫌だな。俺は今別に奴隷を必要としていないから他の奴隷商に引き渡すつもりだっただけに。
「では、確認をお願いします」
「はい、それでは三人はこの水晶に触れてください」
衛兵の出したのは占いとかで使うような丸い水晶だった。
「「「はい」」」
それぞれが水晶に触れていった。
「確認しました。三人は犯罪奴隷ではないので解放となります」
「「「やったー」」」
三人は物凄いはしゃぎようだ。まぁ、奴隷から解放されたら喜ぶよな。
「三人は早く家に帰りな。心配してる人もいるだろ?」
俺が三人に言うと。
「ありがとうございます。でもその子は………」
「この子の事は俺達に任せな」
「はい。救っていただきありがとうございました。」
「「ありがとうございました」」
三人はお礼を言うと部屋から出て行った。
「後この子も奴隷にされていたので確認したいのですが、目を覚ましてなくても大丈夫ですか?」
「大丈夫です。では確認させていただきます」
「あっ………、この子は親犯奴隷ですね」
「親犯奴隷とは?」
「親が犯罪を行い一家で丸ごと奴隷になる事です。犯罪奴隷の場合は刑期の間奴隷にならないといけませんが、親犯奴隷の場合は親の刑期が終わるかその主人が奴隷契約を破棄する事によって奴隷から解放されます」
「奴隷契約破棄はすぐできるんですか?」
「奴隷商の所に行けばすぐにできます。それと安いですがお金が掛かります。値段は詳しく覚えていませんので済みませんが奴隷商の方にお聞きください」
「いえいえ、ありがとうございます。この子の治療が済み次第奴隷商で契約破棄しに行きます」
「………契約破棄ですが、その子の事を考えるなら私としてはあまりオススメしません」
「どういうことですか!?」
契約破棄は何かデメリットがあるのだろうか?
「基本的にこんな小さな子は親が居なければ餓死してしまいます。頼れる親戚などが居ればいいですが、そんな人が居る場合親犯奴隷として奴隷になってすぐにその人が買ってくれます。でも買ってないので………」
「そういう事ですか………。それなら破棄してどこかに引き取ってもらうのは?」
「あまりそういう奇特な方はいませんし、もし公爵様が引き取ると考えてるのでしたら本人に聞いてからの方がいいです」
「どうしてですか?」
「この子がすごい有能なのであればあまり気にしないかもしれませんが、失礼な言い方になりますが使用人などとして使えなかった場合この子の負担になります」
なるほどな。確かに何もできないのにただ引き取ってもらうのはなんか嫌だもんな。情けないやら申し訳ないやら思うし。
「忠告ありがとうございます。この子が起きてから本人に確認してみます」
「ぜひそうしてあげて下さい」
コンコン
などとやりとりをしているとドアがノックされた。
「医師がご到着されました」
やっと医者が来たみたいだ。
最近にしては珍しく長くなりました。
執筆時間が多く取れたからなんですけどね。