<奴隷>
「さっき殴られていたこの子の様子が変なの」
姉さんは女の子を抱きかかえていた。
「ちょっと見てみるか『診察』」
これは神眼の応用技で、鑑定で相手のステータスなどが見れるがそれを病気や怪我などに絞った技である。
「これはひどいな………」
「どうだったの?」
「栄養失調と脱水症状に多数の打撲、それに発熱だ………」
「そんな………何とかできないの!?」
姉さんは俺に懇願するように見る。
「怪我は治せるし水は生活魔法が使えれば誰でも出せるから大丈夫だけど、栄養失調や発熱に関しては………」
「まずは出来る事をしましょう『ウォーター』コウは治療をお願い」
シルフィーはそう言って水を出した。
「了解。『ヒール』これで怪我は大丈夫」
「それじゃあ私は馬車を呼んでくるわ。王都に行って医者に見せましょう」
姉さんは馬車の方に向かって走り出した。
「君達も水をいるかな?」
俺は他の女の子達にも聞いた。
「「「いります」」」
勢いよく返事をした。たぶん倒れている子だけじゃなくみんな脱水症状に近い状態だったんだろう。
俺は水を出して上げて女の子達に渡した。
「連れてきたわ。早く王都に向かいましょう」
姉さんが馬車を連れてきたので全員で乗った。しかし、体調の悪い子を寝かせるとスペースが足りなくなるため俺はシルフィーの膝の上に座る事になった。
これはなかなか恥ずかしかった。年齢的には全然大丈夫なのだが精神年齢は前世も含めると三十歳を超えているから当然である。
「持つかしら?」
姉さんは心配そうに聞いてくる。
「大丈夫!怪我や脱水症状は無くなったからそれほど危険ではないよ。だからと言って安心できる状況でもないけど」
「王都に行ったらまずは医者とそれからこの子達の処遇ね」
「私達どうなるんですか?」
奴隷の女の子の一人が聞いてくる。
「まずは衛兵達に色々と確認しないといけないな。君達がどうして奴隷になったのかを含めて」
「それじゃあ私達このまま奴隷として売られるんですか?」
「君達が無理やり奴隷にされていたなら解放されるよ。ただ、何かの罪を犯して奴隷落ちした場合は違うけどね」
「「「やったー」」」
三人の女の子は喜んでいた。恐らく無理やり奴隷にされたんだろうな。
「この子の事はわかる?」
俺は三人に聞いてみる事にした。
「わからないわ。その子は私達が来る前から捕まっていたから。だから衰弱も激しいの!みんな飲まず食わずだったから」
商人はすぐに売り払うつもりだったから食事などは出さなかったのかもしれないな。
「それにしてもコウさんはお強いですね!?冒険者ですか?」
「あぁ、そうだよ」
「「「キャーーーーー、かっこいい」」」
女の子達三人は急に女子高生のようなノリになった。それを見た姉さんとシルフィーはジト目で俺を睨んでくる。
俺のせいじゃないよ!と思っているが口にはだせない。
「ハァハァハァ」
そんなやり取りをしていると倒れている女の子が苦しみだした。
「コウやばいわ!どんどん熱が上がってる!!」
姉さんが女の子額を触りながら焦っていた。俺は少し考え込み昔を思い出していた。
昔と言っても転生前の事である。風邪なんか殆どひかなかったがどんな処置していたか数少ない事を思い出した。
「応急処置でこれならどうだ『アイス』」
俺は氷を出し、タオルにくるんで女の子の額にのせる。
すると女の子の容体が少しは安定した。
「到着まで後一時間です!」
御者の声が響く。もう少しだ、頑張れ!!
この倒れてる女の子はどうなるのでしょうかね?