<出立>
コンコン
「コウ準備は出来た?」
姉さんが扉越しに聞いてきた。
「準備できたからすぐ行くよ」
俺はそう言って荷物を持って扉を開ける。
「さぁ、みんな待ってるから行くわよ」
姉さんは俺の手を取って歩き出した。
玄関に着くとみんなが待っていた。
「お待たせ」
「これで全員そろったわね。それじゃあみんな気を付けて行ってらっしゃい」
母さんが一人ずつ抱きしめた。
「みんな頑張ってくるんだぞ」
「うん。いい成績残してくるよ」
俺達はそのまま家を出て馬車に乗る。王都まではここから馬車で半日ほどかかる。
ゆったりと馬車でくつろぎながら王都に向かう。
「王都どんな所だろうか?」
「綺麗な所じゃないの」
「そらそうだろうけど俺らの街だって十分綺麗だぞ」
「そうね。案外あんまり変わらないかもしれないわね。公爵家の街だからそこまで差があると思えないわ」
「かもな。それじゃあ、街になれるのは案外早いだろう」
王都について三人でワイワイ話してる内に三時間ぐらいが経った時である。
「キャァーーーーーーーーーーーー」
悲鳴が聞こえた。
「今のは悲鳴か!?」
「私も聞こえたわ!!」
「御者さんすぐ戻りますのでここで待っていてくださいますか?」
「はい、畏まりました」
シルフィーがそう言うと俺達は一斉に馬車を降りて悲鳴のする方に向かった。
そこには一台の馬車と商人に数人の護衛と対峙している三十人くらいの盗賊が居た。
俺達は岩陰に隠れこっそり様子を窺った。
「貴様らこんなことしていいと思っているのか!?」
「俺達は良いと思ってるからやってるんだよ。いいからとっとと身ぐるみと商品置いていきな。そしたら命だけは見逃してやる」
「くそ、護衛たちあいつらをやれ高い金払って雇ったんだからとっとと仕事しろ」
商人の男がそう指示して護衛たちが盗賊に向かっていった。しかし、護衛たちは数で負けており一人で三人以上相手をしなくてはいけなく殺されていった。
「役立たずどもが!!」
商人は逃げようとしていたがあっけなく盗賊につかまっていた。
「おいおい、一人で逃げるんじゃねーよ」
「離せ、くそっ!商品は置いていくからそれでいいだろ!?」
「何言ってるんだ!?攻撃してそれで済むわけないだろ。あばよ」
男はそのまま躊躇うことなく男を殺した。
「それじゃあ、品定めとするか。今日はいいのがあるといいな」
「「「「「イエェー」」」」」
リーダーらしき男が部下達に言うと周りの奴らはテンションが上がっていた。
男達が馬車から出したのはなんと女性たちだった。
「嫌よ!放して!!キャッ」
「うるせー黙ってろ」
一人の女性は果敢にも反抗するが盗賊の一人に殴られた。
「商品を傷つけてんじゃないぞ!!」
「すいません親分」
「今日は結構美人の奴隷が多いから楽しめるんだ!その顔を怪我させたら勿体ないだろ」
女性達は全員奴隷で殺された商人は奴隷商人だったみたいだな。そしてあの盗賊どもはそれをわかってた上で襲い自分達の慰み者にしようとしてるわけだ。
「あいつら許せないわ」
「そうね。女の敵ね」
姉さんとシルフィーはとても怒っていた。女の敵どころか盗賊だから社会の敵なんだけどね。
「それじゃあ、答えはわかっているけど一応聞いとくよ。助ける?」
「「もちろん!!」」
その答えを聞いて俺はすぐさま作戦を考える。
「俺が囮になりながら盗賊を殲滅するから姉さん達は女性たちを盗賊から引き離して。人質にされるのは危険だから」
「「わかった」」
「それじゃあ行くよ!」
俺は岩陰から一気に駆け出し盗賊達の方に向かう。
「なっ、なんだこいつ!?」
盗賊達が気づいた。
「お前達を殺す者だよ」
俺はそのまま二人ほど切り捨てる。残りは二十八人。
「くそっ、敵襲だ」
一人の盗賊が大きな声で仲間たちを呼ぶ。リーダーらしき男もこっちを見ていた
「なんだあいつは?」
「いきなり切りかかってきて二人やられました。それで俺達を殺す者なんてのたまわってます」
「へぇ~、威勢がいいじゃね~かガキが。やれるもんならやってみやがれ。野郎共やっちまえ」
男の掛け声に二十七人が一斉に俺に襲い掛かる。
「その程度の数と腕で俺を殺せると思うなよ」
俺は言いながら一人また一人と切り伏せる。
「テメェー調子に乗るんじゃねーーー」
十人ぐらい切り伏せた時我慢の限界が来たのかリーダーの男が切りかかってきた。
「調子になんて乗っていないよ。これは純然たる事実だ」
「うるせーテメェーはとっとと死んでろ」
「お前がな」
俺と盗賊のリーダーが交差した。
ドサッ
倒れたのはもちろん盗賊のリーダーだ。
「親分がやられた。逃げろーーーーーー」
残りの盗賊達は蜘蛛の子を散らすに逃げて行った。
「逃がすかよ。『ホーミングアロー』」
魔力で作った矢が盗賊を追尾し刺殺していった。
「はい、殲滅完了。姉さん達そっちは大丈夫?」
「大丈夫よ。だけどちょっと問題が………」
「何かあったの?」
俺は姉さん達に近寄って聞いた。
学園編いきなりの事件この後はどうなるんでしょうね?