<魔法の習得>
「「「ごちそうさま」」」
俺達はささいないざこざがあったものの満足して旅の止まり木を出た。
「さぁ、お腹がいっぱいになったことだし新しい魔法を教えなさい」
姉さんはめちゃくちゃ張り切っている。魔法は魔道書を読んで呪文を覚えるか師匠などについて教わるか頭に急に浮かぶの三種類で習得する。
前二つは普通だけど、最後のは天才肌や元々の素質での固有魔法などではない限りそうそう覚えれないので基本的には前二つが主流である。
俺らの様な貴族は、家庭教師からならうか10歳から入る学園でならうしかないのだが、俺と姉さんは初級と中級は使えるものはほとんど覚えているのだ。
だから新しい魔法に興味津々ってわけだ。
「ちょっと休憩してからでも」
と俺はなんとか止めようとするのだが。
「だめよ。帰ったらすぐよ」
と聞いてもらえなかった。
「あきらめなさい。ああなったエリナは誰にも止められないわ」
シルフィーは他人事だと思って笑っていた。
「しかたないなぁ~。それじゃあ手早く済ませよう」
俺達は足早に家へと帰った。
家に帰ると俺達はさっそく訓練場に行った。
「それじゃあ、教えるけどその前に注意事項だ。この魔法は威力がすごいからコントロールが完璧になるまであまり人に向けちゃだめだよ!」
「分かってるわ。それでどんな魔法なの?」
「姉さんは風魔法と相性がいいからこれから教える魔法は風魔法で名前は『エアロスラスト』これは中級の『エアロスラッシュ』の上位なんだけど意味は分かる?」
姉さんに意味深に問いかける俺。
「てっ、てことはその魔法は上級魔法」
「正解」
「コウ、その魔法聞いたことないわよ!!私も風魔法と相性良いけどその魔法は私にも使えるかしら?」
シルフィーがいつもとは違い少し興奮気味に聞いてきた。それもそのはず、最上級の使い手がほぼいない世界では上位魔法は最強魔法といって過言ではない。
その魔法が目の前にあれば誰でも知りたくなるのは当然である。しかも、エルフは長寿であり魔法の扱いに長けてるため里には色々な魔法が保存されているはずなのにそれでも知らない魔法なのだから当然である。
「たぶんできると思うよ。この魔法はイメージが難しいから使える人があまりいなかっただけみたいだし」
「では、私にも教えてね」
ウィンクしながら言うシルフィーに胸がドキドキした。チクショー可愛いじゃないか。
「いいよ!じゃあ、まずは見本を見せるね」
俺は訓練所に結界魔法を張り巻藁に向かって魔法を出す準備をした。
「『風よ集え 無色無数の刃 彼の者を疾く刻め エアロスラスト』」
呪文が完成し魔法が巻藁を攻撃する。巻藁は粉々に刻まれていた。
「こんな感じだけどできそう?」
「これが上級なんだ」
「本当に人に向けちゃいけない魔法ね」
二人は呆然としていた。
「イメージと魔力次第で威力が変わるから使えこなせれば必殺の魔法になるよ。姉さんのと言えばこの魔法となるような魔法を選んだしね」
「それなら絶対使いこなしてみせる」
「私も覚えてみせるわ」
こうして二人の魔法特訓が始まった。
「『風よ集え 無色無数の刃 彼の者を疾く刻め エアロスラスト』駄目だわ。また失敗」
あれから数時間が経ち辺りが薄暗くなっていたが未だに二人とも習得できてはいなかった。
俺はどうすればいいか悩んでいた。別に今日中に習得しないといけないわけではないが今習得しといて依頼などで熟練度を上げていくのが効率がいいと考えていたため今日中に習得させたかった。
ついでに、明日も練習に付き合うのが面倒ってのもあった。そして閃いた。
「『ウォーターボール』」
俺は魔法で巨大な水の塊を出すとそれを空中に留めそこに向けてもう一つの魔法を放った。
「二人ともしっかり見ときなよ。『エアロスラスト』」
水の中で風が渦巻いていた。これを見て二人は目に力が戻ってきていた。
俺はある確信をして魔法を解いた。二人は一度深呼吸をして呪文を詠唱した。
「「『風よ集え 無色無数の刃 彼の者を疾く刻め エアロスラスト』」」
そして呪文が完成し二人の前にある巻藁が粉々に刻まれていた。
「やった~。出来たわ」
「イメージがこんなに難しいとは思わなかったわ」
「おめでとう。後は自分の手足のようにコントロールできるように慣れるだけだよ」
「それがどんだけ大変か考えただけでも嫌だわ。でもやりがいがあるわね」
「そうね。さっそく明日依頼を受けて試し撃ちね」
やっぱり依頼を受けに行くみたいだな。わかっていたけどね。
それにしても二人の『エアロスラスト』を受ける魔物が可愛そうで仕方がない。教えたのは俺だけどね。
二人共少しずつ強くなっていきます。