<危機>
「どういう事なんだ詳しく話せ」
兵士に聞きながら父さんが厳しい顔つきになっていた。
「はっ、今日我々はエリナ様と共に街から5㎞ほど離れた所を見回りしていました。すると遠くの方に砂塵が舞っているの見つけ監視していたのですが、砂塵がどんどん近づいてきてそこには大量の魔物がいました」
「お前が無事という事はエリナや兵士達も無事なんだな?」
父さんは心配そうに聞いた。
「わかりません。エリナ様は魔物と確認できたと同時に私に急いで父様に知らせて欲しいと仰いまして馬を飛ばして戻ってきました」
「くそっ、すぐに軍を出動させろ!!」
「畏まりました」
兵士は慌てて部屋を出て行った。
「あなた・・・エリナは」
「大丈夫だ!!エリナはあいつらの娘で俺たちの娘だ。絶対生きている」
父さん母さんはお互いを抱きしめ合っていた。
俺はこの時ある決意をして父さんと母さんを見ていた。
~side エリナ~
今日はコウの洗礼の日である。あの弟のステータスを見るのが楽しみで仕方なかった。
弟はまさしく天才である。天才というのも物足りないぐらいである。その上かっこ可愛いのだ。
その弟のステータスは恐らく常軌を逸しているだろうと私は思っている。なぜならこの4年間一緒に鍛錬していたからだ。
私もあれからものすごく成長したと思う。だけど成長すればするほど弟の底が見えない事に気づいていくのだ。
最初は置いていかれるのを怖かったが、あの優しい弟はそんなことはしないのだと思いだしてからは、ただただ強くなるために頑張った。
その甲斐あってか私は8歳でとんでもなく強くなった。自分でステータスを見てニヤニヤするぐらい。私はまた思い出したようにステータスを見ていた。
《名前》エリナ=アレキシス
《年齢》8
《種族》人間
《性別》女
《職業》剣士
《属性》風・氷・光
《レベル》28
《体力》300/300
《魔力》180/180
《状態》正常
《スキル》風魔法 氷魔法 光魔法 生活魔法
《固有能力》なし
《加護・補正》コウの加護 風の精霊シルフの加護
《SP》5pt
特にコウの加護が気に入ってる!!普通は神や精霊の加護しか付かないはずだけど、コウが私を気にしてるって事で加護が付いたのならそれでいい。
私はうずうずが抑えられず今日は兵士達の見回りに付き合う事にした。見回りから帰ればちょうどコウもステータスを見れるようになって帰ってくるからである。
見回りも順調に街から離れたとこまで見て後は帰るだけだった。そこに思わぬ出来事があった。
何もないところに砂塵が舞っていたのである。私達はその砂塵の正体を探っていたらなんと、大量の魔物がこちらに向かってきていた。砂塵は大量の魔物の移動によってできたのである。
このままいけば魔物達は街に突っ込んでしまう。そう考えた私は兵士一人を伝令に送りそれまでここで足止めすることにした。
「あなたは、急いで父様にこの事を知らせてきて」
「しかし、それならエリナ様が行ってください」
兵士は私の事を心配して言ってくれたが私がこの中で一番強いのである。その私が居なければ足止めすらろくにできないであろう。
「いいから行きなさい!!」
「わっ、わかりました」
兵士はすぐに馬に乗って街の方へと向かった。後は足止めするだけなんだけど、本当に私にできるのかしら。もしかしたら死ぬかもしれない。
そう思い体が震えてきたが何とか持ち直し魔物達を見据えた。
「みんな死に物狂いで戦いましょう!!でも誰一人死んじゃだめよ」
みんなを鼓舞しながら私自身を鼓舞した。
「はいっ!!」
こうして私たちの死闘が始まった。
戦闘を始めて10分ぐらいがたった。伝令は今頃ついて父様が軍を用意しているだろう。
なんとか死者はいないがみんな瀕死である。私も魔力も体力もほとんどない。魔物はまだまだ大量にいるのにだ。
しかし、足止めが功を奏したのか魔物達は私達の抵抗に少し慎重になり距離を取りつつじりじりと迫ってくる。この状況はあと5分も持たない。
父様達が駆けつけた時には私達は全滅しているでしょう。もう一度コウの声を聴きたかったわ。私は意識を失いかけた時あの優しい声が聞こえた。
~side エリナ end~
戦闘まで行こうと思いましたがあえて途中で切りました。その方がエリナの危機を表現できるかなと思いまして
次回こそ戦闘です!!お楽しみに