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和泉夕河の優雅で従者な学園生活  作者: モカブレンド
第一章『始まり編』
5/10

第五話『信じる心と可憐な盗賊 後編』

 夕河は教室に戻って彼女を探す。

 昼休みの教室は騒がしく、仲良く談笑する生徒の塊がいくつも見受けられる。

 そこに小田桐未憐の姿はなかった。

(……いないのか)

 その事実に、少年はそっと胸を撫で下ろしてしまう。

 本当なら彼女を疑いたくはないのだ。あの優しい笑顔をした少女が、他人の物を掠め取るような人間だなんて。自分に微笑んでくれた少女の、優しさを裏切るなんて。少なくとも自分は、そういう気持ちで彼女を見たくはない。

 だが、このままだとなんの解決にもならない。

 もし彼女が軽い気持ちで奪ってしまったのなら、それを止められるのも自分だけなのだ。

 夕河は行動に移す。

 もしかしたら、友達と一緒に食事をしているのかもしれない。

 空腹も感じていたのでひとまずは腹ごしらえだと、夕河は学園内にある購買へ向かう。

 昼休み終了までは、まだたっぷりと時間がある。

 そのせいか、購買の前は人だかりでごった返していた。こういうときは、男子女子という垣根を越えて獣同士の食料争奪戦が繰り広げられる。

 なんにしても買えるまで時間がかかりそうだ。

(さて、どうしたものか……)

 夕河は眉間にシワを寄せながら後頭部を掻く。

 騒々しい集団の海を眺めていると、少年の視界があるものを捉えた。

 キザっぽい男子生徒数人が歩いている。

 その連中は、囲むようにして一人の女子生徒に話しかけていた。誰かが質問を終えると次の男子生徒が。それも終わるとさらに次の男子生徒が質問を浴びせる。

 そんな状態で、女子生徒は一時も笑顔を絶やさずに話を聞いていた。

(ちぇ、仲良くしやがって)

 学園に入学してからすっかり運の神様に見放されてしまった夕河には、まるで遠く手の届かない楽園を見ているような気分だった。

 確かに女子生徒とは話す。あの二人のことだ。

 火乃佳と雪は比類ないほどの美少女だが、火乃佳は性格が悪すぎてどこぞの聖人君子でないと理解はできないだろうし、雪は可愛いけどどちらかといえば妹に近い。

 だからこそ。

 あの小田桐未憐は、少年が元の世界で出会える可能性のあったヒロインのはずなのに。

 耳を傾けて話を聞いていると、歯の浮くような言葉の節々が耳に入ってくる。

 焦燥を募らせる夕河は、せめて中央に囲まれた女子生徒が不細工であることを願って、その容姿を忌々しげに覗き見る。

 男子生徒の隙間から、すらりと伸びる黒髪が現れたと同時に、

「あ」

「あ!」

 少女……小田桐未憐と偶然にも目が合ってしまった。

 だが、咄嗟に視線をはずしてしまう。

 釣り目がちなのにも関わらず、つぶらな瞳は映した人物の頭を撫でるような優しさがある。鼻筋や唇はおろか、頬や耳までもが男性の心臓を鷲掴みするような美しさ。

 なにが言いたいのかと言うと。

 つまり、可愛かったのだ。

(自分でも彼女を神棚の上にあげている可能性を考えていたが、やはりそれは間違いなんかではなかった。どうしようもないことだけど、小田桐さんはものすごく可憐な……美少女だ)

 そこはかとなく痛々しい空気が流れているような錯覚に夕河は陥る。

 自分があらぬ方向を見ている間、きっと男子生徒は冷笑しているのだろう。場違いな人間が壇上の役者に惚れてしまうなどと、身の丈に合わぬ夢を抱いても、それこそ泡沫に散る幻。

 元々この平行線に交わりはないのだから。

 そうやって自分を慰め、戒める。

 夕河は目をそらしていた方向に従って、ゆっくりと踵を返した。

 ──結局、少年には彼女を疑うことなどできなかったのだ。

 だが、それでいいとも思っていた。

 自分の好きだった相手がなんら不自由なく幸せに過ごしている。だとしたら、少年にとってはそれこそが至上の喜び。後はこの身勝手に絡まった運命の糸が自然にほどけていくだけ。

 失ったスプーンは自分が責任をもって弁償すればいい。

 もっとも、謝罪と返済だけで彼女の怒りが静まるとも思えないが。

 購買から背を向ける夕河は、そもそも昼飯の存在すら忘れて去ろうとする。

 と、急に右肘の辺りに重たさを感じた。

「……ッ!? 小田桐、さん……?」

 気づけば、夕河の腕を少女が掴まえていた。

 意図も分からなければ、頭ひとつ分ほど身長差のある夕河には、彼女の表情も読めない。

 また少年や、さきほどまで冴え渡っていた決め顔の男子生徒さえも、ぽかんと口を開いている。

 少女は端正な顔立ちに笑顔を灯して言った。

「ごめんね皆! この子は中学のときの友達で、私がいないと道も覚えられないくらいだから」

「え、え、え……?」

 夕河の開いた口が更に塞がらなくなった。

 申し訳なさそうな顔で、少女は男子生徒に謝っている。

 夕河には全く理解できなかった。話を聞いた男子生徒の視線が集中して少年に向けられる。そしてすぐ、全員の表情に大きく安堵と軽蔑の混じった色が生まれた。

 おそらく自分を軟弱者と認識したのだろう。

「ほら、早く行こっ」

「え、ちょ、どこに……!?」

 引っ張られる腕に合わせて夕河の足がタンゴのようなリズムを刻む。

 意外と握力があることに少年は驚きつつも、やはり状況を把握しきれないので、戸惑ったまま少女に連れて行かれる。

 購買を離れて場所は人気のない廊下へと移っていた。

 夕河の腕が解放される。

 さっぱり理解できなかったが、とりあえず昨日の部室で見たときと変わらない笑顔だったので、夕河は彼女が友達と見間違えたのだと思うことにして話を進める。

「いや~びっくりしましたよ。急に小田桐さんがこっちにくるから、てっきり、その……なな、なんですかね……こ、言葉にならないなぁ、ははは……」

 照れ隠しにもなっていない動作でごまかす。

「あ、さっきの男子達は、やっぱり小田桐さんの友達ですか……? なんて、なんか余計なこと聞いてますよね。ほんと、すいません……えと、小田桐さん……?」

 夕河の言葉に対する返事はなかった。

 今も笑顔のまま少年の前に立っている黒髪の美少女。

 疑問も口にできず少年は呆然と立ち尽す。

 すると、小田桐未憐はわずかに首を下に向ける。

 黒髪に覆われたせいか彼女の表情には影が生まれ、表情を確かめることもできない。

 そしてゆっくりと。

 おもむろに少女が口を開いた。

「ふふふ……な~んちゃって」

「え?」

 そんな言葉が廊下に響いた。

 かと思えば、今度はさっきまでの笑顔に戻る。

「あはっ。おかげで助かりました。あの人達しつこくて、正直うんざりしてたんですよね」

「小田桐さん……?」

 会話を交えれば交えるほど、少年の疑問は波紋となっていく。

 彼女の表情は、今まで少年が見たことないほど悪辣なものに変化していく。

 そして少女が口を開いた。

「──ウゼェ。ンだよそのツラは。いいか、オレはああいう連中と同じくらい、お前みたいなダッセェ男が大嫌いなんだよ! どうせあの部長に言われてスプーンを取り返しにきたんだろ? 一人じゃなにもできないヘタレ野郎が!!」

 と、今まで築きあげてきた、少年の小田桐未憐という美少女のブランドイメージが木っ端微塵に打ち砕かれる発言を飛ばした。

 夕河は動揺する。

「お、小田、おだぎ、小田桐ぎりぎりぎり、ささささん……?」

「ああ? 気安く呼ぶんじゃねえよ、タコのくせに!」

「あ、ああ、おうおうおうおう……」

 倒壊寸前のジェンガみたいな心を抑え込む。

 そして、たちまち動きを男勝りに変化させていく少女に声をかける。

 昨日の夕方までは、手を擦りあわせたり首を傾げたりする仕草にときめいた。

 入浴中や就寝前は、少女の笑顔と声を思いだしてうっとりしていた。

 そして今の少年は、釣り目を釣り目のままぎらつかせて両腕を組み、なに見てんだコノヤローと言わんばかりの険しい表情をしてこちらの視線を拘束させてくる、いつかどこかで味わったような感覚を思い起こさせるようなオーラを発した『本当の小田桐未憐』を見て、驚愕していた。

 運命のあの日、花壇の前で屈服した思い出が、ありありと蘇る。

 今更ながらに夕河は火乃佳の言った、『簡単に人を信用しないほうがいい』という言葉を思いだしていた。

 火乃佳が一国の城主なら、この少女もまた平民を束ねる国の支配者。

 研ぎ澄まされた出刃包丁を瞳という鋳型にはめ込んだような鋭い視線、何者をも寄せつけまいとするオーラが黒髪に乗り移っている錯覚さえある。

 彼女も、まさしく女王の内の一人だった。

「君が小田桐未憐か……」

 初めて彼女と出会ったような気持ちになる。

 夕河はそれをフルネームで呼ぶという行為で表現した。

「フン。人の一面しか見てないから、てめえみたいな馬鹿がウジ虫みたいに湧くんだよ。あ~あ、やだやだ。昨日のてめえなんか、大丈夫ですか、良かったら道案内しましょうか、な~んて笑顔で口にしてたのによ! 言っとくがな、てめえはあの連中を下衆だと思ってたのかもしれねえが、オレにしてみりゃ変わらねぇ! てめえもあいつらと同じ、下心だけの腐れ外道なんだよ!!」

 声は昨日と同様に美しいままなのに、そこから発される内容は歴然としていた。

 まるで今の自分が本心なんだと肯定するようにまくしたてている。

 そこにはもう、少し前にいた女子生徒の面影はない。

 一途に求めていたはずの。

 夕河の好きだった可憐な少女は、もういない。

「ふ、ふふふ……はは、はははは……」

「ンだよ、壊れちまったのか?」

 突然に夕河は笑いだす。

 さしもの少女も不気味に感じたのか、半歩引いていた。

「……はは、蓋を開ければどいつもこいつも……節操のなさに呆れるね、まったく」

 夕河の肩が笑いに合わせて小刻みに震えていた。

 これぞ少年の真骨頂。

 落ち着きを取り戻したわけではない。

 かといって絶望してもいない。

 ──キレてしまったのだ。

 今の今まで夕河が繋いでいた常識とか理屈とかの概念が、くるりとひっくり返ったのだ。

 夕河は元々、他人が思うほど従順だったり流行の波と完全に同調できるほど自分のことを達観していない。人から見える部分は、あくまでも表面的なこと。少女が自分のことをと言ったように、少年もまた上辺だけの社交辞令を取り払ったのだ。

 一歩ずつ夕河が前に進む。

 すると、黒髪の少女は小股で数歩ほど後退した。

 少女の怪訝そうな表情にも構わず、夕河は距離を詰めていた。

「な、なんだよっ! 力にモノ言わせて押し倒そうってのか!? ハンッ、あいにくとなぁ、こちとら腕力には自信あんだよ! 女だからと思って甘────」

「うるせえよ」

 夕河は、少女の制服の襟元を強引に掴んでいた。

 身長の差だけ制服は持ちあげられ、少女の腹部からは縦長で綺麗なへそが見え隠れしている。

 怒りを灯した瞳で睨みつけて、夕河は思いの丈を吐きだした。

「……お前が女をあっさりドブに捨てるって言うんなら、それでもいいさ。俺だって男を捨ててやるよ。勘違いだったとしても、お前に一目惚れしたのは事実だからな。お前が迷惑してたってのも理解できる。純情を踏みにじられたのも、半分は俺に責任がある。それは、もういい。だから俺は、お前と俺の間にあるゴタゴタを全て消し去った」

「な、なに言ってやがる、ぐそっ……!」

 口を封じるように、襟元で握る力を強くする。

 悪党と遜色ない顔つきで、にんまりと頬肉を綻ばせる。

「俺な、面白いことを考えついたんだ。お前なら理解できるよな? お前と同じ臭いのする果報部の部長、天門院火乃佳がどういう存在なのかを、よぉ~く」

「あぁ知ってる、よっ……! オレだって一度くらい、理事長の娘なんて有数の席に座りたかった。もしオレがあの女と同じ環境なら、迷わずその利権を有効活用してるぜ。アイツよりもな……!」

 早くその手を離せ。そんな言葉が詰まっていそうな顔で少女は抵抗する。

 だが夕河は力を緩めない。

「現在、部長が発足した果報部は部員数が足りず、あと二週間と数日で解散しなければならない。本来なら望むところなんだけどな、お前がどうしようもない最低女で良かったよ。スプーンを奪ってくれたおかげで、お前を勧誘する理由が完全に成立した……!」

「く、くそ……離せよ、叫ぶぞ……ッ!」

 残念なことに人気のない廊下に連れてきたのは彼女自身。

 加えて、購買方面はまだ修羅達の宴で賑わっているだろう。

 聞こえるはずもない。

「つまり部長の生贄ってわけだ……! 果報部は問答無用、脱出不可能のデス・ロジック……逃れる術はない! 悪いが、俺と一緒に地獄の底までつき合ってもらうぞ!!」

「ふざっ……けんなァッ!!」

 少女の襟元から、夕河の手が引き離される。

「ばぁ~か!! オレを勧誘したきゃ掴まえてみせろ!」

「クソッ、逃がすか!」

 人目に晒されれば立場が悪化するのは夕河のほうだ。

 夕河は走り去る少女の背中を追って廊下を駆けだした。


   2


「ちくしょう……どこに行った……」

 息をせき切らして、夕河は一旦立ち止まる。

 逃げることに慣れているのか、少女は軽やかに姿を消してしまった。

 とはいえここは一階。階段をあがっていくことだけは阻止せねばと目を凝らしていた。それが光明だったのか、とりあえず一階だけに留まらせておくことはできた。

 加えて焦っていたのか、計算外なことが。

 それは、彼女が人垣のある購買方面へと向かわなかったことだ。

(わざわざ通りの少ない道を選んだことは失策だったぞ、小田桐未憐!!)

 完全に悪役のセリフを吐きつつ、少し前まで輝かしい美少女に惚れていたことなど、忘却の彼方へ置き去りにしてしまう。ついでに昼飯も忘れている。

 携帯電話で時間を確認する。

 昼休み終了まで、あと十五分程度だ。

 ここで夕河は居場所とともに状況を確認することにした。

 まず、タイムリミットを超えてしまうと、彼女がスプーンを盗んだ犯人だと断定できなくなるということだ。昨日の今日で学園にスプーンを持ってきてる馬鹿のわけがない。かといって、ここで動揺する彼女の現場を押さえておかないと、これ以降に彼女と会ったとしても尻尾はださないだろう。

 さらに彼女を説得しなければ、表向きは誰にでも優しい美少女として振舞っている特性を活かし、自分とのやり取りをあることないこと口にされてしまう可能性がある。

 スプーンを盗まれた火乃佳に関しては、まったくもってざまあみろと言うほかない。

 が、小田桐未憐に余計なことを暴露されるのだけは避けなければ。

 状況の確認が終わったところで、問題は居場所だ。

 足が速いとはいえ明確に差があったわけではなかった。

 一直線の廊下で見失うほどではない。

 なら、教室だろうか。

 無駄に多くの教室が用意された長い廊下には、鍵の掛け忘れも否定できない。

(いや、しまった……そういうことか……!)

 夕河の直感が否応なしに冴えてしまう。

 ひとつだけ常に開放されていて、小田桐未憐が女であることを活かせる場所が残っている。

 ──女子トイレ。

 状況が状況だけに失念していたようだ。

 さすがの夕河も女子トイレに入るのはまずい。

 仮にほかの女子生徒に見つかりでもすれば、この失態を火乃佳でもカバーしきれないだろう。

 小田桐未憐がトイレのなかで十五分を過ごして授業に遅刻しても、見た目は繊細な美少女が相手なら保健室行ってましたなんて言い訳でも十分に通用する。

 だが、なんの取り柄もない男子高校生は違う。

 そんな言い訳は通用しないのだ。

 夕河も遅刻して彼女も遅刻していたら、そのときは暴露ルートで終了だ。

 完全に手詰まり。

 少女は逃げていたのではなく、少年を袋小路へ追い詰める算段だったのだ。

 未来が明確な道を辿って幻視される。

 軽蔑する学園中の生徒、激昂する教師、嘲笑う小田桐未憐、呆れる雪。

 火乃佳は怒るのだろうか、それとも。

 夕河の表情に深くて暗い影が落とされる。

 特に理由はなかったが、顔を落としたままなんとなく天井を仰ぐ。

(トイレか……)

 ちょうど、目の前にトイレがあった。

 男子用、女子用と区別された、もうそろそろ見慣れてきた手洗い場の電光看板。

 夜に見たことはないが暗くなれば明るく灯るのだろう。

(ん、看板……?)

 看板といえば。

 夕河の立っている場所は、普段利用していないトイレのある廊下だ。

 昼休み直後、急にもよおしてきた尿意のせいで少年はトイレに向かった。

 小太りのおばさんが清掃をしていたから場所を変えた、

 もう清掃が終わったと聞かされた、このトイレに。

「ふ、ふふふ、はは…………あーっはっはっはっはっはっは!!」

 突然の高笑い。

 瞳には燃えたぎる闘志。

 男子トイレの前に置かれた清掃中と書かれた看板。

 誰かが置かなければ、あるわけがないのだ。

「見つけたぞ、小田桐未憐!!」

 夕河は看板の隙間を通り男子トイレへと入っていった。


   3


 さすがに清掃しただけあって、室内から嫌な臭いはしない。

 ここのトイレを利用したのはせいぜい数人、もしくは自分だけだろう。

 不純物を探すほうが困難だ。

 熟練の技を持つ清掃のおばさんが丁寧に掃除したことは想像に難くない。

 そう……普通に考えればここで不純物、ひいては異物を探すのは本来であれば難しい。

 だからこそ。

 目の前にいる小田桐未憐の存在だけが際立っていた。

「フン、裏の裏をかいたつもりだったけど、よくわかったな」

 煌きたつ鮮やかな黒髪は背景になじまない。

 それでも少女の各所からあふれる気品と美しさは場所を選ばなかった。

「スプーンを返せ」

 夕河は直球で勝負にでる。

「あ? 持ってきてるワケねぇだろ! 家だよ、家! バーカ!」

 指で目下の肉を引っ張り、真っ赤な舌をだす。

 いまどき小学生でもやらないような、あからさまなパフォーマンス。

 だが、火乃佳のもとで地獄さながらの忍耐修行をしている少年にとっては、この程度の煽りなど蚊に刺されたようなもの。

 無視することで、夕河は攻撃を回避した。

 少年は次の攻勢を考えて、じっと少女を見つめる。

 同じく敵意を剥きだしにして構えてくる。

 そのときに、少年の瞳は彼女の容姿をあらためて認識することになった。

 火乃佳も雪もそうだが、口を開かなければ可愛いのだ。

 小田桐未憐という少女も性格だけを見れば最低最悪そのもの。

 しかし少年は自分自身さえも理解していなかったが、彼女のなかからそれとは違う別のなにかを感じており、また、彼女のその部分に惹かれていたことに薄っすらと気づく。

 考え始めた頃には、徐々に戦意は失いつつあった。

「……お前さ、なんでそんなに他人を目の敵にするんだ?」

 夕河は力を抜いて率直な疑問を口にした。

「んだよ……別に、お前には関係ねぇだろ、そんなこと」

 少年の様子にひるんだのか、口調からわずかに棘が抜けている。

「なんていうかさ、可愛いものは可愛いし、男勝りなのも自分の性格だろ。それでいいじゃんか。確かにはたから見て嫌うヤツもいるかもしれない。でも、それは言わせておけばいいだけだろ? もったいないと思うんだよ。お前にはお前だけの良さがあるのにさ」

 ムッとした表情で少女は口をつぐむ。

 が、すぐに火花を散らすような熱烈さで抵抗する。

「馬鹿じゃねえのか。そんなに上手いこといくわけねえだろ! てめぇだって同じはずだ。てめぇはさっきの男どもとのやり取りを見て、ショックを受けなかったのかよ!!」

「受けたさ……痛くて傷ついたよ。けど、しょうがないことだってあるだろ。俺は万能じゃないし、お前にだってできないことは少なからずある。それを悔やんでも、どうしようもないだろ」

 夕河の言葉に、少女はわなわなと打ち震える。

 それでも少年は会話を続けた。

「確かに驚きはしたし、あのときのお前が嘘ついてたのも傷ついたよ。だけど、俺は今のお前を見てなんとなく思った。多分、その性格のままでも、きっと大丈夫だって」

「────────ッ!!!」

 二人の間に分厚い壁を挟むような沈黙の時間が訪れる。

 肩を怒らせて瞳孔には外側からでも分かるような、はっきりとした敵意。

 黒髪の美少女は、その容姿とはまるで正反対の形相だった。

「うるせえ!!」

 彼女の一喝が室内に反響した。

「お前になにが分かる……オレの、オレの気持ちなんてっ……!」

 激昂していたはずの少女。

 彼女自身、怒りを保っているつもりだったかもしれない。

 それは涙が否定していた。

 数秒前にいた人物とは思えないほど、顔がくしゃくしゃに歪んでいた。

「中学時代、一人だけ友達がいた……男だったけど、そいつだけはオレがこういう性格だって打ち明けたとき、大丈夫って言ってくれたんだ」

 涙が頬を伝って床に落ちる。

「んで……そいつが、いじめられてたんだよ。そいつは普段、オレが周りの奴らに媚売って生きてるのを知ってても、受け入れて、くれてたんだよっ……でも、でもさっ……!」

 ひときわ大きい涙が、彼女の叫びと一緒になって弾けた。

「オレが相手をブン殴って追い払ったら、そいつ、すげえ怯えた顔して、逃げ、やがったっ……! 大丈夫って、言ったのに、僕は大丈夫って、言ってたのに……!!」

「そうか……」

 男泣きとは程遠い。

 指先を絡めて顔を塞ぐ彼女の姿は、女の子だった。

 ただ感情に抗いきれず、とめどない涙を流している。そこに怒りはない。ただ、悲しさと悔しさが滲んでいるだけ。

 少年は、そういうふうに彼女の気持ちを汲んだ。

「なあっ……オレは、女として誰かを欺けばいいのか? 男として誰かに嫌われればいいのか? お願いだから、教えてくれ、よっ……!」

「ばかやろぉ!!」

 懇願する少女の頬をひっぱたく。

「自分の考えを、人に委ねるなよっ!! 俺だってあのクソ部長のもとでうだうだ言いながら雑用してるけどな、自分の意思であの場所にいることを決めた。部長への報復って気持ちも当然あるけど、なによりも大事なのはさ……」

 勢いだけで夕河は少女の肩を掴む。

 少女も気づいてないのか、気に留める様子もなく少年を見つめている。

 そして、目一杯に声を張りあげて夕河が叫んだ。

「自分を……自分を肯定するってことじゃあないのかよっ! 俺は好きで留まっている。それは誰かが決めたからじゃない。ぶつかって失敗した、悔しい気持ちは分かる、悲しい気持ちも分かる! だけどさ、それで諦めたら自分の本心に嘘ついたことになるじゃないか! 確かに、お前の人を見る目はこれっぽっちもねえよ! 友達のつくりかたなんて、それこそルールブック読んだようにぎこちなくて情けねえよ! だから半分はお前が悪い。けど、それで自分の全部を否定してどうすんだよ!」

「で、でもっ……!」

 困惑した表情の少女は、絞りだすような言葉で話した。

「でもじゃねえ! 自分のなかにいる自分を、認めろっ!!」

「う、ううあっ……!」

 目を充血させて泣くことしかできてない少女に、夕河はこれでもかとたたみかける。

「お前が欲しかったのは、男の生きかたでも女の生きかたでもない、自分を理解してくれる人間が、そばに居て欲しかった。それだけだろ。自分を見失うんじゃねえ。それと、友達ってのはお前の全部を受け止めるために存在してるわけじゃない。できることとできないことはある。どこまでつき合えるかなんて、そいつの考えかたひとつでしかないんだからな」

 夕河は肩から手を離して、そっと小指を突きだした。

「だから、約束だ。俺はお前を裏切らない。見る目のないお前が、本当に俺を信用するまで、いつまでだって待ち続けてやる」

「う、うぐっ……あう……ッ!!」

「だからもう、泣くなよな」

 夕河は困ったような表情で少女の顔を覗き込んだ。

 正面にだした指先に、絡むものはなく。

 やはり信用できなかったらしい。

 少女は鼻をすすったまま、じっと小指を見つめていた。

「やべ、時間……ッ!」

 昼休み終了のベルが鳴ったことに驚いて携帯で時間を確認する。

 残念なことに昼飯を食べてないことも思いだす。

 人間の身体というのは、どうしてこうも忘れていたことを思いだしたら活動を開始するのだろう。脳内麻薬とか細かいことは知らないが、とにかくそれが恨めしい。

 急いで夕河はトイレからでようとする。

「あ……ま、待って……!」

 まだ泣き止まない少女が掠れた声を張りあげて叫ぶ。

 振り向いた夕河は無表情のまま一言。

「生きるときは無様に生きて、死ぬときは優雅に死ぬべきだ。俺が言いたいのは、それだけだ」

 まだ少女が何かを言っていたが、夕河はそれを無視して去った。

 トイレをすぐさま抜けて廊下に戻る。

 教室へと急ぐ。

 その動きが、ぴたっと止まる。

 なにかしらの余韻が残っていて、なんかもうゆっくりでいいかなと考え、もやもやした胸中のまま鈍足に移行する。

(……勢いで色々言ってしまったけど、もしかしたら俺はさっき、とても恥ずかしいことを喋っていたかもしれない)

 遅れてやってきた脳内麻薬の集団が、身体を拘束し始めたのだろうか。

 みるみるうちに頬は紅潮し耳は茹でダコのようになる。

 背中から噴きだす汗がシャツにべったりと張りつき、とにかく気持ち悪い。額の汗も止まる気配がなく、まるでランニングしてきた後のようだ。

(やべ……スプーンについてなんにも聞いてねぇ。後でもう一度会うか、いや、そのときまでに俺の立場はどうなってるんだろうか。つか、部長のメール件数が、やばい……)

 恐る恐るメールを開く。

 内容はほとんど罵倒オンリーで伝える気にもならない。

 ただ、いつもに増して怒りマークが多いだけだ。余白が絵文字で埋まっている。

「はぁ~~~……」

 大きなため息を吐く。

 もう夕河には、小田桐未憐にこだわる理由はなかった。

 今後、彼女がどうなるかはわからない。

 ただそれでも和泉夕河の目的は、好きだった子がなんら不自由なく幸せに過ごしていること、だ。

 そこに嘘偽りはない。

 平行線が交わることはなくとも。

 夕河が彼女の一面に笑顔を見たのは、紛れもない事実なのだから。


   4


 放課後になり、夕河は廊下にでる。

 授業には結局五分ほど遅れた。予鈴だと思っていたものは授業開始のチャイムで、頭をさげながら席に座ると、教師から小田桐未憐のことを聞かれる。

 曖昧に答えを濁してから十分後に少女は教室へ戻ってきた。

 だが、案の定というかその目は赤いままで、教師を含めた自分以外の全員から心配される。

 その結果、すぐさま保健室行き。

 ぎこちない笑顔を浮かべて『大丈夫だから……』なんて口にする美少女の空白期間を妄想するのは容易なようで、当然、その矛先は前科のある自分へと向けられる。

 彼女の発言に関わらず、あることないこと言われるのは確定していた未来らしい。

 やるせない気持ちを押し殺しつつも、夕河はひっそりと授業をやり過ごした。

 そして現在、どういう報告をしようかと悩みながら部室へと向かっているところだ。

「和泉!!」

 少年の苗字を呼ぶ声が後ろから響いた。

 小田桐未憐だった。

 保健室から急いでやってきたのか、大きく呼吸を乱している。

「もう大丈夫なのか?」

「オレをお前んとこに入部させてくれ!」

「は……?」

 唐突な入部宣言に、夕河の心境は初めて弦を鳴らしたようなピンとこないものだった。

「まあその、確かに誘ってたけど、あれは勢いっていうか別に無理に入る必要は……いや、人数が足りないのも事実だし、入って欲しいには欲しいんだけど……」

「右腕のストレートオオオッ!!」

「あぶらかたぶらっ!? な、なにごと……!?」

「うるっせえ! あんときは散々言いやがって! なぁにが、死ぬときは優雅にだ! そんなに死にたいんなら今すぐ死ね!!」

「ああっ痛い! ちょ、やめろっ、やめてください!!」

 ヘッドロックをかけながら膝蹴りを決める少女に必死な懇願をする。

 離したかと思えば、今度は膝の後ろをローキックの応酬。

 夕河の身体がかくかくと揺れる。

 ようやく収まったようで、少女は両腕を組んでふんぞり返った。

「最初にも言ったが、オレはお前みたいなヤツは大嫌いだ。だから、オレはお前に報復する理由で入部する!」

「は、あ……?」

 痛む頬と膝に気を遣いながら返事をする。

「だけどな、それは決して誰かが決めたからじゃねえ。オレはあくまでも、オレの意志で入部する。どうだ、なんかヘン……かな?」

 一瞬だけ目が点になる。

 けれどもすぐに夕河は笑顔になった。

「……いや、ようこそ果報部へ。俺はお前のような人間を歓迎するよ」

「フン、後悔するぞ。余計なことしなけりゃ良かったってな」

「それは俺が決めていくさ。ところで、どうして小田桐……はスプーンを盗んだ? やっぱり、金目のものだったからか?」

「未憐でいい。いや、なんつうか、偶然なんだよな、きっかけはさ」

「偶然?」

 少女は頷いた。

「たまたま道に迷って通りかかったときに様子見てたら、あの女相手にすんげえ苛々感丸だしのお前が見えてさ」

「う……」

 それは否定できない。

「ずっとお前がへえこらしてるのを見てると、なんだかこっちまでキレちまってな。なんでかは分かんねぇ。とにかくそのときから、お前を見てるとイラッとするようになったんだ」

「はぁ……」

 妙に曖昧だったが、彼女なりの気持ちは伝わってくる。

 夕河はそれで手を打つことにした。

「さて……行くのはいいが、スプーンを盗まれた部長はカンカンだぞ。平謝りくらいで済むかどうかは分からないからな」

 夕河は気をリラックスさせるつもりで、ポンと少女の肩を叩いた。

「うわああああああッ!?」

「ん?」

 急に大声をあげた少女は、肩をびくりと震えさせて夕河の手を弾いた。

 大仰に顔を赤らめて息をしている。

「ばっきゃろおおっ!! 急に触んな、タコ!」

「く、くそ……昼間はなにも言わなかったくせに……」

「うるせえなっ! 昼間と今じゃ状況が違うんだよ! そのくらい分かれ、タコ!」

「に、二度も言った! 部長にも言われたことないのに!」

 夕河はこれ以上暴力を振るわれても困るので、黙っていることにした。

(まったく、なんだってんだよ一体……)

 心中で不満を撒き散らしながらも廊下を歩く。

 後ろからついてくる少女をチラ見すると、未だに頬を染めているようで、お前のほうがタコだと突っ込みたかったが、やはり黙殺。

 これは、男心なのか女心なのか。

 少なくとも、自分の男心にはない発想だった。

「おい、手ェだせ」

「え?」

 急の呼びかけに頭が追いつかないが、とりあえず夕河は手を差しだした。

 広げていた手のひらの小指に軽い感触。

 小指の腹に小指を当てるだけの、なんともいえない行為だった。

「なんだ?」

「……こんだけだ。この、ちょこっと触れた分だけ、お前を信用してやる」

 そう言って少女は颯爽と少年を追い抜く。

(まったく、不器用なやつだ……)

 夕河は彼女の後を追って部室へと向かうのだった。


   5


 部室に到着。扉を開いて入室する。

「お、遅くなりました。和泉夕河です。失礼しま~す……」

 夕河は精一杯の笑顔をつくり、のそのそと部屋の敷居をまたぐ。

 未憐がその後をついてくる。

 なかに入ると、いつものように雪と、

「…………」

 物言わぬ女帝部長(置物であって欲しい)がそこに健在。

 ことのほか普段よりオーラが強い気がする。

 鋭敏なセンサーのように研ぎ澄まされた夕河の第六感が、危険信号を伝えていた。

 まずは小田桐未憐がきたこと、謝罪と入部意志があることを説明しなければ。

 少年がそう考えて意識をやったときには、既に少女は実行に移していた。

「スプーンを盗んだのは私です! すいませんでした!」

 颯爽と近寄った少女は、第一声で深く地面に手を突いて土下座。

 これでどう動くか。

 小田桐未憐の性格を知った夕河から見れば、彼女の姿勢は拍手喝采ものだ。

 長い沈黙。

 少女は、ずっと同じ体勢のまま微動だにしない。

 火乃佳も動かない。

 我慢比べというのだろうか、図らずも少年はごくりと生唾を飲む。

 こうなると、スピーカーから爆撃音やら斬撃音みたいなものを平気で響かせながらコントローラを片手で握ってキーボードを叩いている雪の存在が妙にうっとうしい。

 やがて火乃佳は唇を動かした。

「ゴメン。あれダイヤモンドじゃないの」

「は?」

「は?」

 しれっと。

 ちなみに、は? という言葉が並んだのは少年が同じことを二度口走ったわけではない。

 少年少女が同時に口を揃えただけだ。

 それほど、火乃佳の発言が意味不明だったということ。

「だからあれダイヤモンドじゃないの。あれはサンプルで送られてきた本物そっくりの偽者よ」

 言葉がでなかった。

 唖然として、二人とも動こうとしなかった。

「なにようっ! 変な顔して! だ~か~ら~、あれはただのサンプル! 私も最初はアレが本物だと思っていたのだけれど。製造の都合でサンプルだけ送られることになったことを忘れてて、そのうえ時間がかかった挙句、スプーンみたいな形状のダイヤモンドはつくれたとしてもすぐに壊れるから無理だって」

 百年は待ち続けた傘地蔵みたいな表情のまま、二人の肉体は硬直を続けている。

 構わず喋る火乃佳。

「私が保証するわ。あのスプーンには安物と同じくらいの価値しかないわ!!!」

 火乃佳はなんの臆面もなく力説した。

「あ~あ。ぼくに聞いてくれれば、ほんとのこと教えたのにな。連絡を受け取ったのは元々ぼくだったし。ていうか、ま~た姉さんに翻弄されてるよ」

 雪がすたすたと二人の前を通り過ぎて冷蔵庫から牛乳を取りだす。

 どうやら、夕河はまだ動けないようだ。

「姉さんが言ったかもしれないけど、『簡単に人のことを信用しないほうがいい』と思うよ。姉さんも含めて、ね」

 雪はぐいっと牛乳を一口。

 げぷうと囁いてそのまま椅子に戻った。

 火乃佳も優雅に紅茶をあおる。

 固まる二人からいち早く動いたのは、小田桐未憐だった。

「……帰る」

「待て! 逃がさないぞ……!」

 咄嗟に意識を取り戻す夕河。

 迫真の表情で、脱出を試みる少女を捕らえる。

「嫌だ! やめろ、離せ! オレは入部しない! 帰る!!」

「はははは……そんなこと言うなよぉ……俺と一緒に地獄に行こうぜえっ……!」

「やめろおおおっ! 死神、悪魔! ちくしょおおおお! やぁん、やぁだぁ、離してぇん!!」

「嫌だね……俺は絶対にこの手を離さない! 絶対にだ!!」

「あら、入部希望なの? 良くやったわ、下僕。褒美に雑用の数を増やしてあげるわ」

「うるせえ! なにがダイヤモンド製の超高級スプーンだ! もう騙されねえからなあ!!」

「むっ。なによう、その態度っ! 下僕のくせに生意気よ!」

「離せ! 帰る! やめろ、死にたくない! 死にたくなーい!!」

「頼む残ってくれえええっ!」

「下僕! そこに直りなさい!!」

 三人を交えた小さな戦争が、室内で勃発した。

 主人公不在。主人公は常に多忙である。

 持ってきた牛乳を飲む雪。

「……わりと騒がしくなってきたね。お話はこれからだよ」

「待て! 締めるな! まだ言いたいことがある!!」

「下僕っ! 私を無視するなっ!」

「離せばかやろこのやろ! オレは自分が一番大切なんだよ!!」

 慌しいなか、夕河はふいに少女と目が合ってしまう。

 少女は苦笑していた。

 でもその表情は少年が始めて出会ったときに見た。

 あの笑顔と、そっくりだった──。

 ………………。

 …………。

 ……。

 雪が言う。

「あ、このお話そこで切らないんだよね。常にメタと戦い続ける美少女、雪!」

「アホかっ。とっとと締めろ!」

「ほんと、ゆうがは注文が多いなぁ……」

 夕河の学園生活はこれからも続く。

 そして果報部成立まで、あと二人──!

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