ワインを語る上で大切なこと
良いワインときれいな女性がいれば、いい酔い方ができます。
皆さんもこれを読んで試してください。
ここに一本のシャンパンがある。ボランジェ・ロゼだ。
ジャック・セロスに、サロン、クリュッグ……。シャンパン好きなら胸ときめく名前だろう。その中でも今日はボランジェにしてみた。しかもロゼだ。
ボランジェは1829年、ジャック・ボランジェが創設し、以来、頑なに伝統的な醸造法で品質の高いシャンパンを作る名門シャンパンメゾンである。ボランジェのスタイルを表すスペシャル・キュヴェをベースに、ブドウはピノ・ノワール62% シャルドネ24% ピノ・ムニエ14%。このうちグランクリュのアイとヴェルズネィのピノ・ノワールで造られた赤ワインが5~6%ブレンドされ、またマグナムボトルで熟成されたリザーヴワインも5~10%加えられている。味わいはベリー系のフレッシュな味わい。イチゴを絞った香りというと想像がつくだろうか。重厚な香りと複雑な味わいは、やはりボランジェの名にふさわしい……。
「ねぇ、飲んでもいい?」
「ん? あぁ、どうぞ」
彼女のことをすっかり忘れていた。僕はよく冷えたシャンパングラスにボランジェを注ぎ、彼女に差し出した。彼女は右手でそれを受け取ると、少しだけ右を向き、細長いグラスに口をつけた。
口に含むと優しい甘味が広がり、酸が舌にある味蕾を刺激する。喉を通過すると鼻腔にイチゴやサクランボのような香りが広がる。
「わぁ、おいしい」
彼女の感嘆の声だ。
ボランジェの味わいの特徴は何と言ってもその重厚さにある。
F1のシャンパンファイトや映画カサブランカの「君の瞳に乾杯」で有名なGHマム・コルドンルージュはフレッシュな酸が特徴でどちらかというとスッキリさわやかな感じ。それに対し007のジェームスボンドがこのボランジェを愛飲していたというと分かっていただけると思う。濃厚で重厚なのがこのボランジェだ。
僕は少し冷たくしたイチゴを彼女に差し出した。
「それはいいとして、どうしていイチゴなの?」
彼女は訊く。
「君はプリティーウーマンという映画を見たことあるかい?」
彼女は得意げな微笑を浮かべて
「あるわよ。ジュリア・ロバーツでしょ?」
「そう。その中でジュリアは君と同じ質問をするんだ」
彼女の好奇心ば僕に向いてきた。キラキラした眼差しをする。
「そうしたらリチャード・ギアがこう言うんだ。『シャンパンを引き立てるから』ってね」
イチゴの香りとシャンパンの香りは共通するものがあって、お互いにそれぞれを引き立てる。その上シャンパンの酸味とイチゴの甘みが絶妙なバランスを保ち、より複雑な味わいにする
「へぇ、そうなんだ」
彼女はすっかり感心した。尊敬のまなざしというところだろうか。僕を見つめる。
「シャンパンとイチゴの組み合わせをプリティーウーマンっていうんだよ」
そう言うと彼女はうれしそうにイチゴを口に運んだ。
「それともう一つ、シャンパンと合わせていものがある」
僕は冷蔵庫の中からそれを取リ出し、イチゴに夢中の彼女の前に僕は差し出した。
イチゴのショートケーキだ。
彼女はうれしそうに
「こんなに食べられないよ」と、笑う。
彼女は生クリームを人差し指で取って舐めた。
6号だから直径が18㎝ある。二人で食べるには少し大きい。
イチゴとシャンパンの関係は前述した通り。次は生クリームだ。なるべく乳脂肪分の高い生クリームがいい。それを絶妙な硬さにホイップしたものが最適だ。硬すぎず、柔らかすぎずと言いたいところだが、少し柔らかめのホイップがベスト。なぜホイップクリームなのか?一度試されると解る。シャンパンの泡が『ここまで細かくなるか』というくらいきめ細やかな泡に代わる。しかもイチゴのショートケーキならばなおさらシャンパンが引き立つ。少しこってりなクリームはその濃厚さとシャンパンの濃厚な味わいにマッチし、さらに、口の中の余計な脂分はシャンパンの泡がきれいに流してくれる。この両者は最高のパートナーになりうる。
「ねぇねぇ、寝る前にこんなに食べたら太っちゃうわ」
そう言う彼女だがすでに1/4がなくなっている。
「シャンパンとショートケーキの相性がいいのは分かったけど、もう食べられない」
彼女はそう言ってシャンパンの入っていたグラスを空けた。
僕も最後のボランジェを飲み干した。
もう深夜だ。彼女に教えることが1つだけある。
「ケーキは食べる以外に違う用途があるのを知っているかい?」
きょとんとした彼女に僕は彼女の眼を見つめて微笑んだ。
「食べる以外にね」
最後はどうでも解釈していただいていいですよ。
私的には少しHな方向でと思っています。
ちなみのボランジェのロゼは10,000円前後で買えます。
お酒は二十歳になってから。