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ぬいぐるみ
少女が抱く、ほこりをかぶったくまのぬいぐるみは、泣きそうな表情で笑っている。
少女も、この悲劇の中で、何が楽しいのか笑っている。
そんな壊れた少女の世界には何が残っているのだろう…。
きっと、大層なものは残っていないのだろう。
両親に使用人たちの死体ばかりが床を埋めつくしている屋敷で独り、狂ったように笑う少女、レイラ。
ただ人が死んでいるばかりの静かな家に響いていたレイラの声は、突然ぴピタリと止まった。
かわりに彼女の絶叫が響いた。
必死に目の前の悲劇をなかったことにするために。
叶うことはないと、知っていても……。
あれから数年後。
彼女は美しい大人へと育った。
だが、心だけは酷く歪んだままで体だけが大きくなってしまった。
綻びたところを直すこともされなかったぬいぐるみを、今でも大事そうに抱えて……。
壊れたようにずっと笑いながら、骨になってしまった両親と使用人たちと。
ずっと
ずっと
ずっと……
仲良く、暮らしたそうです。