俺だけレベルが下がる世界で、なぜか最強になった
俺だけこの世界でバグっていた。
まず、俺はどうやらこの世界に転生してきたらしく、前世の記憶があった。
「勇者様っ! 魔法いくよ!」
「頼む!」
モンスターの群れと戦っていた勇者と格闘家が下がると、魔法使いの魔法がモンスターの群れに直撃した。
モンスターたちは跡形もなく消滅。
経験値とお金、アイテムだけが残る。
勇者、格闘家、魔法使い、そして俺。
某有名RPGのような世界で、4人パーティの冒険者をしていた。
チャラララッタラ〜♪
「あ、レベルアップした!」
「私もレベルアップ!」
「私もレベルアップね」
「俺は……レベルアップが下がった……」
何故か、一人だけレベルが下がるバグ……。
3人が微妙な顔を俺にに向けた。
「またか……」
「いつまで下がるの、それ」
「査定に響くわよ」
「う……査定……」
街の外にはスライムがいて、酒場で仲間を集めて冒険者になって、神殿で職業を変え、教会で生き返る。
ここは某有名RPGっぽい世界なのに、査定——ここだけ響きが違う。
わずかなお金とショボい装備で魔王を倒せと言ってくる王様がちゃんと能力と働きを査定してくる。
冒険の成果を見られるが、圧倒的な評価の割合をレベルアップ速度が担っている。
レベルは経験を積めば積むほど上がるんだ。
こんなに相応しい指標はないだろう。
「何故、お主だけレベルが下がっておるんじゃ?」
「俺は一人だけ、何故かバグってるんだ」と言ったところで、自分たちがプログラムだって認識もない王様には伝わらないだろう。
実際、レベルアップの時の何処かから聞こえてくる音楽は謎だが、人間は生身でちゃんと生きてるんだから、プログラムではないんだろう。
バグという言葉は知らなくても、おかしいと思う王様は、温情でパーティの査定から俺だけを抜い評価する。
そして、4人分の給料を貰った。
何せ、俺たちは、魔王を倒したパーティで、ほぼ俺の活躍だった。
「プハーっ!」
酒場で酒を煽る、格闘家、魔法使い。
完全に前世の飲み会で見た光景と同じだ。
「私の酒が飲めないっての!?」
「未成年だから飲めないって!!」
17歳で、酒が飲めない勇者に成人二人が絡んでいる。
前世の世界だったらヤバい。
勇者が俺に視線を送って、助けて欲しそうに見てるが、むり。
しかし、本当にリアルな現実味のある世界だ。
そこに、俺だけが前世の知識を引きずって、レベルアップの仕組みにより高度な計算を持ち込んでしまったのだ。
——だから、俺だけレベルが下がる。
この世界ではレベルの上限は99だ。
しかし、俺だけレベルの上限が一桁違って999だった。
だからレベルが10上がるごとにレベルが圧縮される。
レベルが10になると俺のレベルは1に戻る。
それからレベル20になるとレベルが2になり、レベル29までは1ずつ上がってレベルが11になるが、レベル30にアップする時にレベル3になる。
レベル90でレベル9。
レベル100でレベル10。
今の俺はレベル78で、本当はレベル726だった。
レベル78だと、717の場合も780の場合もあって、外からじゃ実際のレベルは分からない。
俺も実は分かってなくて、レベルが圧縮されるタイミングで分かるが、誤差だからすぐ忘れる。
レベルが下がっても、他のステータスが下がるわけじゃないから、強さは最強で、まさにレベルが違う。
魔王すら相手にならなかった。
冒険を続けたら、レベル990でレベル99になるだろう?
その後はまたレベル1になって、レベル999はレベル9の表示でカンストかな。
「勇者、起きてー!」
俺が物思いに耽っている間に、勇者が酔い潰れていた。
飲ませたのか!? 未成年に!?
とりあえず、俺が背負って宿の部屋のベッドに寝かせた。
振り返ると、格闘家と魔法使いがいた。
「ふふ、これからは大人の時間ね」
「いや、俺も勇者と同じ歳だから」
……酔っ払い二人が、そんな話を聞いてくれるはずもなく——。
◆◇◆
チャラララッタラ〜♪
「レベルが上がった……!」
ついにレベル999になる。
表示はレベル9だが。
「なんかよくわからないけど、もうレベルが下がることないのか?」
「下がらなきゃ、査定に入れて貰ってもいいわね」
「変化ないんならいないのと同じよ」
最終的なレベルが9なのはちょっと嫌だが、俺だけレベルが下がる現象は終わった。
ステータスは最強のままで、まあ、いいのだろう。
チャラララッタラ〜♪
「レベルが下がった!?」
「ええ!?」
「またか!?」
上限に達したのに、どうしてだ!?
——レベル1。
次のレベルの上限は9999だった——!




