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厨二病シリーズ

私の彼は厨二病

作者: 笛伊豆

厨二病にも色々あります。

いやシリーズのスピンオフというわけでもないんですが(笑)。

 私の彼には前世がある。

 何でも前世では何とかいう王国の伯爵家三男として生まれ、王家の騎士団に見習いとしてコネで入って何とか騎士爵位を受け、王都の第三騎士団とやらに採用されて最終的には騎士長までいったそうだ。

 ちなみに騎士長の地位は会社で言うと係長くらいで、部下は十人いたとか。

 厨二病にしては慎ましすぎる前世だと言ったら「だって本当のことだから」と。

 そう言われるとリアリティがある気がしてくるから不思議だ。


 ちなみに私と彼は同じ高校の3年生で、来年は受験か就職か、どっちにしても忙しくなる。

 どっちかが遠くに行けば遠距離恋愛になってしまって、そういうのは大抵破局すると聞いている。

 だから3年生の初めに「別れる?」と聞いてみたら「それはない」ときっぱり言われた。

 そんな彼が私は大好きだ。


 彼は前世が騎士だったということで「騎士の誓い」を遵守している。

 約束は違えない、人の道に外れることはしない、そして女性と子供を守る。

 更に前世での倫理観というか結婚観を引きずっているせいか、現代日本の彼氏彼女の関係を拒否している。

 一時期の快楽のためにチャラチャラした関係を結んで飽きたら別れるなんてあり得ないそうだ。


 実は、交際を申し込んだのは私からだった。

 高校1年で同じクラスになって、秋頃までにいいなと思うようになり、バレンタインデーに思い切って手作りチョコを贈ってそのまま交際を申し込んだ。

 なぜ好きになったのかというと、規律正しくて真面目で優しい性格が好みだったから。

 はっきり言ってイケメンじゃないしスポーツが得意なわけでも勉強がトップというわけでもない。

 でも男は優しくて親切で信頼出来るのが一番でしょ?

 私の周りの女の子たちは違う意見だったけど。

 イケメンでも陽キャでもないという理由でモテていなかった彼はしばらく悩んだ末に言った。


「両親の許可がいるから待ってくれ」と。


 え? である。

 高校生の男女交際で親の許可がいるって?

 冗談だと思っていたら、次の週には彼の親から私の親に連絡があって家族同士で会うことになった。

 日曜日の午後、私の家に本当に来ましたよ。

 彼の両親と彼が。

 うちの両親は呆れていたけど予定を変更して会ってくれた。

 そこで彼が言ったのだ。


「結婚を前提としたお付き合いなら。具体的には婚約で」


 彼の両親は戸惑いながら呆れていたような。

 うちの親も似たようなもので。

 私は唖然としていた。

 そんな中で彼だけが真剣だった。


「大切なお嬢さんとお付き合いさせて頂くのですから、僕も誠心誠意尽くさせて頂きたい。

 至らない点がありましたら直すように努力します。

 それでも駄目でしたら婚約解消して慰謝料を」


 ああ、この人って厨二病だった(泣)。


 最初はぎこちなかったけど、だんだんみんな打ち解けてきて、そのまま寿司の出前をとって夜まで和気藹々と話し合い、最後は宴会になってしまった。

 彼は高校1年で既に将来の目標を決めていて警察官を目指すと言った。

 一応、大学までいくつもりだけれど覚悟は決まっているそうだ。

 質実剛健なところが私の父親のツボにはまったみたいで解散する頃にはすっかり義息子扱いしていた。

 彼は一人っ子だったので私が嫁入りすることになるけど、うちには弟がいるから問題ないということで、その場で婚約が決まってしまった。


 後で「なぜ警察官なの?」と聞いたら前世では騎士だったからだそうだ。

 騎士のお仕事はラノベと違って敵国と戦うことじゃないらしい。

 国内の秩序の維持がお役目で、だから警備とか護衛とかがお仕事。

 その他にも今の日本で言う検察的なお役目もあるらしい。


「僕は王都第三騎士団の騎士だったけど、これって日本で言えば警視庁警備部の警官みたいなものなんだ」

「検察でもあるのでは?」

「それは第一とか近衛騎士団の仕事。エリートだね」

 なるほど。

「だから警察に入ると?」

「騎士団もそうだけど国家公務員だから。いや地方公務員かな? 収入も悪くないし安定しているし」

 それは重要ね。


 というわけで私の彼氏、いや婚約者は厨二病だ。

 デートのときに心配になって右目とか左手に何か封印されていたりしないのかと聞いてみたけど笑われた。

「僕の前世はただの王国騎士だよ? そんな非現実的なことがあるはずないでしょ」

 良かった(泣)。

ひょっとしてそういう前世持ちだったら現世でも質実剛健な人生を送るのではないかと。

前世の経験があるから仕事は出来るし出世も早かろう。

人生イージーモード。

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