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学園に勇者!?

国外逃亡を企ててから三日が経った。

この三日間で逃亡に必要な経路や時間の確認を済ませ、必要な物資を俺しか知らない場所に隠した。

だから、後は時間が来るのを待つだけだ。


ここまで状況が進展したのは、昨日と一昨日は学院が休日だったからだ。

まあ、と言うことは今日は学園があるわけで、俺は学園に登校していた。


俺は教室のドアを開けて、席に座る。

そして、荷物を整理してホームルームを待っていると、オズワルドが話しかけてきた。


「やあ、おはよう。」


「おはよう。今日はどうしたんだ?」


もうこいつが持ってくる話に驚かない自信がある。

大体の場合、こいつは何らかの話題を持って話しかけてくる。毎回どこから情報を仕入れているのか分からない。本当に不思議だ。


「実は今日、特別講師が学園に来るらしい。」


「と言うことは、軍人かな?」


「恐らくそうだろうな?」


この学園に講師で来るということは、軍人である可能性が高い。

一応この学園は軍事学校だからな。

魔王軍現れてから設立されたのがこの学園だ。だから、ここの教師は対魔物のエキスパートなのだ。そんな教師が呼ぶ特別講師となると恐ろしい実力者なのだろう。


「楽しみだよね」


そのオズワルドの言葉に、嫌な胸騒ぎを覚える。

まるで、これから自身に災難が降りかかってくるかのような気分だ。


「・・ああ、そうだな」


だから、俺はぎこちなくそう返事をした。




そして、実技訓練の時間になった。

俺達生徒は、先にグラウンドに集合していた。

担当の教師は今特別講師の対応をしているらしい。そのため、少し遅れてくるようだ。


「本当に誰なんだろうな」


そんな疑問が口から洩れる。

周りの生徒も見当がついていないようで、期待を膨らませているようだ。


すると、教師がやってきた。

俺は一緒にやってきた人物を見て、目を見開く。それと、同時にこの場所から逃げ出す算段を考え始める。

なぜなら、一緒にやってきた人物は()()だったのだから。


勇者はまだ、俺の存在に気づいていない様子だ。

周囲も勇者に気づいた様子で、ざわめきだす。

それを鎮めるように、教師が手を叩いた。すると、ざわめいていた生徒たちが静かになった。


「今日来てくださった講師は、みんな知っているであろう勇者様だ」


「皆さん、初めまして。僕は神託により勇者に選ばれましたカエデ・アールグレイと言います」


そう言って、勇者は生徒たちを見回した。

そう、()()()()()()。当然、その瞳に俺の姿が映る。

先程まで、穏やかだった勇者の表情がだんだん険しいものになる。


俺は気づけば、走り出していた。

突然の行動に、周囲がざわつくが関係ない。


「見つけた」


そんな勇者の声が耳に届いた。

声が届いた次の瞬間には、俺に勇者の剣が振り下ろされていた。


「ッ!!」


俺は咄嗟に帯刀していた剣を抜き、その斬撃を防ぐ。

だが、勢いは殺しきれず、遥か後方に吹き飛ぶ。

魔力で体を保護したが、王都の建物の屋根にぶつかったことでものすごい衝撃に襲われる。


「くそ、なんで勇者が来るんだよ!!」


とことん俺は運が悪いようだ。

っと、勇者が来たようだ。高速でこちらに飛来してきた勇者を認識すると同時に、剣を振るう。


それが、勇者の薙ぎと鍔迫り合いが起きる。重い。今までで戦ってきた相手の中で一番強いかもしれない。

これは恐らく、勇者の能力の一つ「ステータス」の影響だろう。この能力は魔物を倒すほど身体能力や魔力が強化されると言う物だ。そして、その効果時間は永続だ。これがいかにインチキな能力か分かるだろう。

戦えば戦うほど確実に強くなる能力だ。


それからも何度も剣戟を紡ぐ。流石は勇者一撃一撃が洗練されている。だが、それだけだ。何か欠けている。

ああ、そうか。これは()()()()()()なんだ。俺の敵を消すための剣とは違う。

なら、俺が負けることはない。勇者の敗因は魔物としか戦っていないことだろう。


「邪魔だ」


俺は剣に俺の魔法属性である雷の電流を流す。電流が流れた剣は当然人が持てる者ではない。例外があるなら使用者と雷属性を扱う者だけだろう。勇者は剣を手放し、苦しそうに悶えている。こういう手はやっぱり通用するんだな。


「グハッ、何を、した」


「教えるわけないだろ」


俺は容赦なく雷魔法を浴びせる。ドンと言う音と共に勇者が倒れる。

ふぅ、これでひとまずは大丈夫だろう。とはいえ、俺は勇者を殺すわけにもいかない。だから、ここで生かすしかないのだ。次戦うことになれば、もう同じようにはいかないだろうな。


「はあ」


そんなため息が口からこぼれる。仕方ないだろう。

もう計画は破綻したも同然であり、今から無計画な逃亡作戦をしなければならない。勇者の意識が戻れば、俺は即処刑だろう。説得するにしても目が覚めた勇者の目の前にいなければいけない。

だが、そんなことをすればすぐにこちらに襲い掛かってきて話どころではないだろう。


「ま、にげるか」


ここに居続ける理由もないので、早速逃亡を始めよう。

ガタガタガタガタと足音が聞こえてきた。騒ぎを聞きつけた警備隊が来たのだろう。

俺は自身に雷を纏い早くなる魔法を掛ける。そして、その場を離れるのだった。

ご覧いただき、ありがとうございます。

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