1-6:▼納電
ー捕雷協会共済機関 第壱〇参支部ー
沿岸部にある飛行機用のハンガーを改築した巨大な倉庫に超大型の蓄雷缶が所狭しと置かれている。
海上には孤島のような影が見える。
雷鳥のトレードマークが見える入館受付棟に車を寄せるV。
ダルそうな係員がやる気なく片手で車をスキャンゲートに通すように促している。
「あの人、今日も本当にやる気ないなぁ…こっちのやる気がそがれるよ…」
「ケッケッケッ。やる気ねぇかw」
ゲートに入ると、人および車全体がスキャンされ、数秒で電子発行された入館許可証が車のモニター上に表示される。
「はいはい、納電、納電。さっさと終わらせて帰ろっ!」
ダッシュボードに光る踵を無造作に置くエル。
噛んでいたガムを膨らませる。
Vと目が合う係員。
そのまま視線を外す。
「そうだな、さっさと終わらせてぇやな。」
そのまま倉庫の中へと車は進んでいく。
誘導灯に従って第八拾弐ゲートに車を停めると運転席側のドアがノックされる。
頭からつま先まで全身ゴム製の作業用スーツに身を包んだ監視員がVに声をかける。
「お疲れ様です。コネクターの封印解除をお願いします。」
「はいよーっ」
車を降り最後部に設置されたコネクター部に取り付けられたゴム製のカバーと登録番号が打刻された金属のバックルを外すV。
カバーを外すとコネクターが見える。
そこにケーブルを差し込む監視員。
そのまま2人は立ち話を始める。
その様子をあくびをしながら薄汚れたバックミラー越しに見ているエル。
そのままモニターに目を落とすと【3772】から数値がゆっくりと下がり始める様子が見える。
眠そうな瞳にモニターの光が映り込んでいる。
その目が運転席の方を向く。
Vが車内へと戻ってくる。
「また買取額が下がる可能性があるってよーっ」
「えーーーっ、マジか。。。蓄るだけムダ?」
「無駄じゃぁねぇが、まぁ危険さに比べりゃ割に合わないかもなw どうする?廃業してアンテナ整備でもやるか?w」
「アン備はムリ… 性に合わないよ…」
「手先は器用なんだ。たぶん向いてるぞw」
「うん…でも…」
「まぁな、金だけでこの商売やってねぇしな。あのスリリングな状況〜ってえのはそうそう無ぇもんな! ・・・ ねぇな… そうそう… 」
前のめりになり、包み込むように両腕をハンドルにかけて少し遠くの方を見ながらVが続ける。
「そういや、エル、、、」
「(ぐぅぅぅ…)」
「寝ちまったかぁ・・・まぁ、お疲れさんっと。」
そっとシートに体を戻し、軽いため息を一つ付いてから通信デバイスを取り出す。
フロントガラス越しにモニターの光で照らされるVの顔が見える。
雨脚が少しずつ弱まっていく。
監視員がケーブルを抜く様子が遠巻きに見える。
その監視員と挨拶を交わし、車を出すV。
ゲートの係員にも手を挙げて走り去る。
分厚い扉が閉ざされ、重い金属音が辺りに鳴り響く。