1-2:▼エルとV
ー2087年 第九弍零地区ー
雷から電気を拾う鉄塔が乱雑にひしめき合っているその隙間を、ユニット型の家屋が埋めるように立ち並んでいる。
小雨の降るその雑然とした街を走るEVC(電動ビークル)が一台、独特のモーター音を響かせながら走っている。
街を抜けた先の倉庫前にそれを停め、大きな扉を開けて中へ入っていく人影が見える。
不安定な電力で明滅するモニターには、その日の落雷予報が「警告レベル」で表示されている。
「おーい!Vーっ、起きてるーっ?!」
だだっ広い庫内を歩く足元。
踵がネオン管のように光っている。
消えかけるモニターが乱暴に叩かれ画面が安定すると同時にまた声が聞こえる。
「今日も不安定だなぁ…だから50系の蓄雷缶増やせって言ってんのに… V!そろそろデカいのが来るよ!!」
ネオンピンクの髪にブルーのメッシュ。
口元が隠れる高襟の半透明ゴムで出来た避雷ジャケットにケプラー繊維のカーゴパンツ。
腰には蓄雷缶と呼ばれる拳大の充電池をぶら下げ、アースを兼ねた金属ワイヤー入りのベルトを引きずった少年が、もぬけの殻になった見るからに寝心地の悪い簡易ベッドに視線を落とす。
「ん?あれれ?いない???」
次の瞬間、背後から男の大きな声が聞こえる。
「よっしゃーっ!今日も一発蓄りに行くか!」
驚いて振り返る少年。
「うぉわ!起きてたんかい!!!」
その特徴的な緑の瞳に男の姿が映る。
目の前には派手な金髪に青の顎ひげ。真っ赤な避雷ジャケットとサングラスをかけた男がどでかい避雷針を肩に担ぎ立っている様子が見える。
「おぅ、エル!遅ぇぞ!雷様は気まぐれガールだから待っちゃぁくれねぇぞ!」
ポカンとした顔の前で手を振りながらエルが言う。
「いやいや、9時に起こしてくれってVが言ったんじゃんよぉぉぉ〜 気まぐれは誰だってんだ…これだからガス世代ってやつは…」
自慢のトサカ頭を満足気に撫でるVを冷ややかな目で見つめた後、天を仰ぐエル。
お構いなしに準備をしながらVが叫ぶ。
「何度も言わせるなよ、雷撃ハンターの絶対条件『臨機応変』!!!型にハマってちゃぁ良い雷は捕まえらんねぇ。雷様は前髪しかないからな!忘れるなよエル!んじゃま行くか!」
エルの頭をポンっと叩いて家を出るV。
「へいへい!わーってるよ!臨機応変が鉄則でしょ!だからこうして来てるんじゃんよ!ってか前髪しかないってどんな髪型だよ!トリッキーすぎるよ!!」
ぶつくさ言いながらVの後についていくエル。
時計はまだ7時前を指している。





