当たるも八卦当たらぬも八卦
最近、学校で占いが流行っている。占いっていうか――私の占いが。
「リクー! こないだリクが占ってくれたおかげで彼とと付き合えたよー! マジありがとう!」
昼休み。
先週占った先輩が、廊下でぶんぶん手を振っている。私は苦笑いしながら小さくお辞儀を返す。
ほんの出来心で始めた、タロット占いだった。
最初は友達相手に見様見真似で占っていたのだけど、気がつけば学校中でブームになっていた。
私の占いは、よく当たるらしい。
ブームにのってタロットカードを所持する生徒もちらほら増え始めたけど「やっぱりリクの占いがいい!」と色んな人が口を揃えて言う。私としては、へー、そうなんだと他人事にしか思えないんだけど、それでも少しだけ誇らしかった。
「逢坂さん」
あまり呼ばれない苗字を呼ばれ、はいっと振り返るとおさげ髪が特徴のザ・学級委員長が立っていた。
「数学の課題ノート、まとめて持ってっちゃうから、開いて上に重ねてもらえる?」
「えっ、あ、ありがとう、いいんちょー!」
見れば、両腕でノートの山を抱えている。
「重そうだね、手伝おうか?」
「見た目より重くないから大丈夫、ありがとう」
にこりと笑う委員長は地味だけど可愛くて、おまけに性格もすごいイイから、めっちゃモテる。けど、ずっといい子だから、大変そうだなと私は思っていた。
「そっか。じゃあ、代わりに占ってあげるね」
「えっ?」
返事も聞かぬまま、手早くカードをシャッフルしてカードを1枚引いた。そのまま勢いよく捲る。
小アルカナのクイーン オブ カップだった。
「ありゃ」
「私、占いとかあんま興味ないからいいや」
瞬きをしている間に、カードの下に開いた数学ノートをするりと取られる。
そのまま去っていく委員長の後ろ姿を見て、私は呟いた。
「いいんちょー、めっちゃしあわせなんだ?」
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