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15回目の目覚め

馬車が大きく揺れて、壁側に上半身が傾き壁面のクッション剤に頭をぶつけた所で目が覚めた。


頭痛と吐き気と体中が痛いのはきっと馬車の中で寝てしまったからだ。

誰も見ていないから、お行儀が良くないけど伸びをして、固まった体を少しだけ動かす。

でもやっぱり気分が晴れなくて、窓にかかった目隠し用のカーテンをずらして、そっと外を見た。


今いる位置は、庶民向けのバザールの入り口の前だ。


馬車が大きく揺れたのに、動く気配はない。

進行方向は大渋滞している様子なのに、対向車線には馬車が走っていなかった。

進行方向が渋滞しているだけで、街全体が渋滞しているわけではないのかもしれない。


乗り出した身をソファーに沈めようとした時、斜め前の教会の鐘が激しく鳴った。

勢いよく両開きの扉が開いて、かしこまった服装を着た5人の警ら隊が出てきた。

手には猟銃のような長い銃を持ち、大きな声で掛け声をかけながら、横一列に並んだ。


バンバンバン!


空に向かって空砲を撃つ。

まるで仕掛け時計が時を告げた時のようだ。


そこで記憶がぐるぐると渦を巻いて押し寄せた。

タイムループしたんだ!

自分の腕や頬を触り、安堵する。


よかった。

まだ終わりじゃなかった。


外を眺めながらこれまでの事を思い返す。

これで数える事15回目。


7回目は、16時30分まで生き延びた。30分伸びたのだ。

ずっと変化がなかった殺される時間に変化が訪れた。


最終日、エリーおば様からの花束が届かなければ、いつも通りの時間になってしまっていただろう。

鍵は、エリーおば様、つまり、エリーヌ・ドラテオ公爵未亡人とお知り合いになる事なのかもしれない。


まずは御者にまっすぐ進むように指示して、エリーおば様と出会えるように、そして一緒にオペラを鑑賞できるように仕向けたい。


しかし、8回目は上手くいかず、私の怒る態度にエリーおば様がドン引きしてしまって帰って行った。

だから、オペラに途中から入れてもらえなかったのだ。


本当に途中からオペラ鑑賞すら出来ずに普通に屋敷に戻るだけになってしまった。

次の日の結婚式もやはり同じだった。

飲みすぎないようにして、普通に帰った。


しかし、7回目の結婚式で聞いた言葉が耳から離れない。

神から見放されたくないので、クッキーの運命は救ってあげた。


そして、問題の最終日、16時5分に背中の痛みを感じ、意識をなくした。

5分だけ伸びていたのだ。


9回目は、エリーおば様と知り合いにならない道を選び、なんとか模索したがダメだった。

10回目、11回目と、色々と試行錯誤を繰り返しては失敗し。

13回目、オペラ座の受付を説き伏せ、エリーおば様と知り合いに、苦戦しながらもなんとかオペラを一緒に鑑賞した。

クッキーの運命も救ってあげたら、8回目と同じで16時30分まで生きられた。


しかし、14回目、エリーおば様に出会えたにも関わらず、上手く交渉出来ずに、エリーおば様にドン引きされ、オペラには入れなかった。

しかも、色々と嫌になってクッキーの運命も救わなかった。


すると、刺殺される時間が15時だったのだ!

必要以上に早くシルファランスホテルに着いてしまったためだ。


ループが何回目なのか数え出して15回目。

実際には50回目くらいなのではないだろうか。

いつかループが終わってしまうのではないかという恐怖は消えない。


ここまででわかった事は、2つある。

一つ目は、エリーおば様こと、エリーヌ・ドラテオ公爵未亡人と確実にお知り合いにならなければいけない。

これがかなり難しい。


オペラ座で受付係を怒鳴る時、怒りすぎるとエリーおば様から軽蔑を含んだ目で見られるし、普通にお願いしていると長い時間交渉する事になり、エリーおば様は諦めて帰ってしまう。


2つ目は、クッキーの運命を救わなければならない。

これがどんな意味を持つのか全く意味不明だ。


御者が馬車をノックしてきたので連絡窓を開けた。

「この先で事故があったようです。このままではどれくらいの時間がかかるかわからないので迂回しますね。お嬢様が楽しみにしているオペラに間に合うかどうか」

抑揚のない声で御者が言った。


「このまま真っ直ぐ行ってちょうだい。迂回しなくてもいいわ」

「しかしお嬢様、到着時間が何時になるかわかりませんよ?」

「わかっているわ。でも真っ直ぐ行ってちょうだい」


エリーおば様に出会うルートを選択しないといけない。

次はどうやって知り合いになるかだ。


オペラの受付係を怒ると、その怒り方次第では、エリーおば様が、「マナーの悪いご令嬢ね!」と機嫌を損ねてしまう。

この加減がわからない。


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