ニートに優しい社会を求めて
プロローグ 活動家の日常
春の風が桜の枝を揺らし花弁が散る。
新たに始まろうとする生活に心を躍らせる者や不安を抱えている者などを分け隔てなく暖かな日差しが包み込む。
そんなドキドキでわくわくないつもとは一味違う日常の中、春の風にも暖かな日差しにも当たらず一人家の中でパソコンとにらめっこをしながら頭を抱えている青年がいた。
パソコンの画面にはでかでかとDEFEATと赤文字で表示されている。
「また負けたぁぁぁ!」
次の瞬間青年がそう叫びながらドンッ!っと机を思いっ切り握りこぶしで叩いた。
どうやらパソコン用のFPSゲームで負けてしまったらしい。
敗北したことがそれなりにショックだったのか、机を叩いて少々赤くなっている手をさすりながら青年は机に突っ伏した。
「は~あ!やってらんねぇはこんなゲーム」
しばらくした後、青年はそう不貞腐れ、パソコンの電源を落とし布団に入った。
布団の中で横になりながらスマホを開くと何件かメッセージが来ていのが確認できる。がしかし、メッセージには目もくれず青年は、そのまますぐに動画配信サイトに移動し一番上に来ていた動画を見始めた。
・・・
ピンポーン ピンポーン
しばらく動画を見ていると家の下の階からインターフォンの音がした。
「なんだぁ?こんな時間に」
時刻は午前9時半を過ぎており、普通であれば社会人も学生も職場や学校につき各々のやるべきことに着手している時間であり、来客があったとしても宅配や郵便などだろう。
「なんか注文したっけ?」
少年はよく大手通販サイトで買い物をするがここ最近で商品を注文した記憶はないのだ。
勿論、親などの可能性もなくはないが、青年の親はあまり通販サイトを使わない人なのでその選択肢は薄い。
「まぁとりあえず出てみるか」
勢いよく掛け布団をどかし、起き上がって、手櫛で軽く髪をとかしながら階段を降り、玄関前まで移動する。
パジャマ姿ではあるが、そんなことは気にせず、青年は玄関のドアを開けた。
「はいはい。どちら様ですかっと…」
外行きの少し高めの声で来客を迎える。
しかし目の前にいたのは、配送業者の方でもなければ、セールスでもない。そこには、リュックを背負った少女がポツンと一人立っていたのだ。
「ha?」
そしてドアの奥に立っていた人物を見たその刹那、青年は勢いよくドアを閉めた。
以下 青年と母親とのメッセージから一部抜粋
母 午前8:23― そうそう今日、お向かいさんの子が家に来るから一日面倒見てあげてね( `・∀・´)ノヨロシク
母 午前8:23― 理由は帰ってから説明するyo。まあ、あなたニートなんだし社会経験だと思ってお願いね♡
母 午前8:24― 追記 どれだけ可愛くとも、手は出しちゃだめだぞ!お母さんは裕のこと愛してるぞ!