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バッドエンドはもう来ない……  作者: 白い黒猫
一人と二人

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18/27

調査開始

 次の日もカメラを設置して確認することにした。

 私も慈悲心鳥崖に行き、不死原からもうひとつカメラを受け取り神社近くに防風林からも崖方面を撮影することにした。

 やはり別方向からの映像も欲しいから。

 何故私がというと、不死原があの辺りを通ると村の人を無視する事が難しく、作業がしにくくなる可能性も予想されること。

 その点、私は観光客を装い撮影が自由にできるから。

 一つ揉めたのは私が崖の撮影をした後でどう動くかという問題。

 私が地震時の撮影をあの場所で行うと、道が封鎖されてしまいもう隣の県にあるあのレンタルオフィスに行けなくなる。

 ならば、この調査基地を近くにあるという不死原の家か十一の家にすれば良いということになったのだが、自分の縄張りである場所に私を入れることを十一は嫌がった。

 なんとか妥協したのが彼のアトリエだった。アトリエだと二人は互いが見えることで作業がしやすいことと、どちらのプライベートな自宅部分にも、絶対私を入れたくないという十一の強い意見からその流れとなった。


 十一には私はまだ信頼されていないようだ。

「ものには触るなよ! 触ったら殺す!」

 そういう脅しまで受けてしまった。


 私はタクシーで移動し、慈悲心鳥崖で不死原と待ち合わせをした。

 一緒にカメラを設置し。神社から撮影する用のカメラと通話用のワイヤレスイヤホンと携帯用充電池を受け取った。なんかスパイの行動っぽい。

 不死原が今日はらしくないパナマハットに派手なアロハにサングラスというパッと見、彼に見えないように十一の服で変装した姿なので余計にそう感じたのかもしれない。

 下手に見つかると声かけられお茶に誘われる。地元での隠密行動はなかなか難しい。

「危険な所には絶対近づかないでくださいね。体調に異常を感じたら宮司の真壁を頼ってくださいね。その時俺の名前を出していいので」

 私の身体のことを話してしまったので、心配をかけてしまったようだ。冷たいお茶のはいった保冷水筒まで渡された。

 私は笑顔で大丈夫だと答える。

 今日の私の予定は、神社から問題の時間の崖を撮影し、迎えに来た不死原と共に残刻のアトリエに合流。残刻は私を招くことを最後まで嫌がったが、不死原に叱られ渋々了承した形である。

 不思議な事に十一は、私が不死原の自宅兼アトリエに行くよりも、自分のアトリエに来る方がましな状況なようだ。

 私は東京での展示会で残刻と交流のあった人で、命日に墓参りに来たという設定。

 そして不死原と神社で、待ち合わせをした事になっている。

 神社で問題の時間まで御朱印を貰って御守りを買ったりと、私は観光客らしい行動をする。

 そして神社の周りを歩くと、不死原の名の刻まれた柱の隣に十一残刻の名前があったことに今気がつく。その文字の色が黒いという事が示す事実について考えてしまう。

 このループ世界からの脱出ってどう言う意味を持つ事なのか? 彼はすでに死亡した人として動いている世界がこうしてある。

 生き延びてかつ明日へ向かえたら、今この世界がどう変わるのか? その場合同じ現象で亡くなった十一残刻はどうなるのか? どう生き返るのか?

 それは別の未来となってしまうのか? となると私達はどうなるのか? このループで過ごした時間の記憶を持ったままなのか、失われてしまうのか?

 私は頭を横に振った。そんな考えてもわからないタラレバなんか考えても仕方がないことだ。十一のいう通り、ここで検証できることを今はするべきだ。


 神社の周りは、前来た時は気にしてなかったからあまり見ていなかったが、整備された段々畑が広がっており、それが夏の日差しを浴びて美しい。

 私はついその景色も借りているカメラで撮影してしまう。

 ここからは見えないが近くには牧草地帯もある。農業、酪農、林業がバランスの良い互助関係にあり、さらにフジハラホールディングスがそれらの生産品を付加価値をつけ市場へと流通させている。

 街全体がもう大きな一つの企業とも言えるのだろう。

『佐藤さんそちらはどうですか、こちらの設置準備は終わりました』

 イヤホンから不死原の声が聞こえる。

「神社を見た後、今は周りの散策を少し楽しんでいます」

『そうですか、よかった。残刻! 彼のいうことは気にしないで』

 あちらの状況はよく分からないが、また十一が何か言ってきたのだろう。

「十一さん何か言われたんですか? こちらには聞こえてないから大丈夫ですよ」

『え? スピーカーホンで話しているんだけど聞こえない?』

 その後、散々十一がえげつないことを叫んでみたらしいが、私には何も聞こえなかった。

 結局wats Appでグループを作りそれで連絡を取り合う事にした。


 十時四十分になったので神社に戻り、崖の撮影場所として三人で選んだ場所に向かう。

 一段崖の上となっている神社などがある地域。

 慈悲心鳥神社からだと真後ろすぎて崖の後ろのにある木々の茂みが邪魔で崖がよく見えない。

 そこで少しズレた所にある雑木林の中の方から撮る予定。私有地とはいえ、村の人が時々、山菜などとりにくる場所。不死原もスケッチしにここによく来ていたという。

 ここから崖を撮っていても不自然ではないだろうし、誰かに声かけられたら不死原から教えてもらったというと何も文句は言われないだろうとのことだった。

 幸いなことに誰もここを通ることはなく邪魔されることはなかった。

 十一時前。私はブレないように二つに分かれた大きな枝にカメラを固定して録画ボタンを押す。

 そして木に抱きつくようにカメラを支える。地震が来た時に落とさないように。

「今から撮影開始しました」

 私は報告しながらじっと崖の方を見つめる。ここから突き出した崖の先がと少しだけ像が見えている。知ってはいるが、崖には誰もいない。

 スマホが地震警報のいやなアラート音を発する。私はカメラを抑える腕に力を入れる。その直後揺れが始まる。

 私は木に抱きつきながらじっと視線を崖に向ける。崖が端から欠け手落ちていっているのがこの場所からでも分かる。

 そしてある瞬間に底が抜けたように崖が一気に砕け落ちていく。その後カメラのフラッシュのような光が崖の下から発せられる。

 私は崖のあった部分を見つめたまま間接視野で周囲を伺う。

 空は青く雷など発するような雲もないし、他のところでそんな光が発生した様子もない。

『どうでした? そちちは』

 不死原の声がイヤホンから聞こえる。

「崖の下の方から謎の光がやはり出ていました。

 目視で確認していたので、今動画の方で確認してみます」

 私はカメラを木から離し、今撮影したばかりの動画を確認するとそこにもやはり不思議な光が存在していた、

「カメラの方でも、光が見えています。そちらはどうですか?」

『こちらでも同じです。

 お疲れ様です。神社の方に戻ってください。迎えにいきます。真壁にも電話しておきますから』

 不死原に今までよりも気を使わせているような気がして申し訳ない気持ちになる。

 今はまだ薬で症状は抑えられているし、慢性的な倦怠感はあるものの元気で動けるというのに。

 神社に戻ると、宮司さんが近づいてきて私が『佐藤周子』であるかを確認し、まるで大切なお客様を迎えるかのような態度と笑顔で接してくる。

 今度は宮司さんの自宅部分へと案内された。

 明らかに前とは異なるフカフカの座布団を用意されて高級な味のするお茶を出され、忙しいだろうに何かとおもてなしを受けて落ち着かない。

 ここでの不死原という存在の強さを改めて感じた。

 迎えにきてくれた不死原に連れられて、十一の家に連れていってもらい漸く一息つけた。

 アトリエというから殺風景だと思ったが、二階建てのロッジ風の自宅部分とウッドデッキで繋がったもう一つの家という感じでな床部分はコンクリートではあるもののキッチン・トイレ・シャワーなどもあり、休めるソファー・テーブル・ベッドもありおしゃれなワンルームマンションの間取りっぽかった。

 私は不死原が差し出してきたスリッパで中に入った。一応入り口で靴は脱ぐようだ。

 壁には何本かの謎の紐が渡されている。それは何なのかなと画面の中の十一の部屋を見ると、そこに何枚ものスケッチや写真がぶら下げられているのが見えた。なるほどそうして構想を練って創作作業を行っていたのだろう。

「いいか、何も触るなよ! 余計なことしたら本当にぶっ殺すからな」

 そういう十一の乱暴な言葉の方が、丁寧で最上級のおもてなしをしてくる宮司さん態度よりも落ち着くというのも変な話である。

 アトリエに行けば十一自身に会えるのかと少し期待したが、不死原には見えている十一は私には全く見えなかった。

 そのため、そこに立っているらしい十一に話しかける不死原と、リモート会議画面の十一に向けて話しかける私という不思議な対話となる。

 不死原と十一は部屋の端にある机の同じ場所にノートパソコンを置いていて、二人は画面越しではなく離れて向き合って話している。そのためリモート会議画面において十一のいる場所の様子がよくわかる。

 確かに同じ部屋にいるようだ。ただあちらは電気をつけておらず天気もよくないようで暗い。

 そして画面の中の二つのウィンドウを並べてみると二人がちゃんと向き合って会話しているのがよくわかった。

 私が撮影してきた動画をタブレットで見ている不死原が右に画面におり、その近い位置で何かを覗き込んでいる十一の姿。合わせてみると二人で同じ映像を見ているのがわかるが、それぞれの画面では一人しかいない。変な光景であり。気になって互いは部屋のことをどう見えているのか聞くと、お互いのことだけが見えて部屋は今いる部屋のままだという。互いの手に持っているものは見れるらしく、タブレットや資料は画面上でなくても覗き込めば見れるからその方が楽なようだ。

 私はパソコンの前で、十一の像に設置したカメラで今日撮影した映像をチェックする。

 謎の光がこちらでも発生しているのが確認できた。


 私は自分のスマホを取り出し、過去の七月十一日の事故の動画がないか探す。

 見つかるのは事故後の映像のみ。


 やっと見つけたのは二千十九年の竜巻の動画と、二千二十年の事故をとらえた近くのビルの定点カメラの映像。

 私はその動画を不死原のもつタブレットに転送する。


 どちらにも確かに雷のような光は確認されたが、片方が竜巻発生時から雷が鳴り響いていたし、もう一つも元々落雷による事故。光があって当然とも言える。


「残刻お前の時はどうだったんだ?」

 残酷はその当時のことを思い出そうとしているようだ。

『うーん。雨と風が酷かった気がするけど。雷なんてあったかな?

 ……って、見に行けるじゃん! 確認に行くか』

「そんなの危ないだろ!」

『別に、飛んできた看板に当たりに行かなければ死ぬことない。それに死んでも生き返るしな』

 十一は部屋にあるテレビをつけ、タブレットを手に何か調べているようだ。画面越しで見た感じ地図のようだ、

『近くになんか良い観測スポットないか……』

 私もタブレットを使い十一の事故の画像を次々と表示させる。

「事故のあった歩道の反対側の二階の喫茶店はどうですか? 事故後もどこも破損した様子もないですし」

『へぇやるじゃん、ヒロコちゃん。意外と有能だね〜。久しぶりに東京旅行でも楽しむか♪

 渉夢お前も一緒にいく?』

 十一はニヤリと笑った。


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