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オルビア国物語  作者: バルカン
第2章
69/72

包囲の中で2

 勝ったと思った矢先…

 今までルナと戦っていたバルトの体が色を失い、ドロリと崩れ地面に吸収されてしまった。



 その瞬間にルナはゾワッとした寒気を背中に感じ振り返る。

 目の前には、大きく振り回された斧槍(ハルバード)の穂先が迫っていた。


「グゥッッッ!!!」

 重たい金属同士がぶつかり合う鈍い音が響き闘技場の壁までルナが吹き飛ぶ。


 なんとか斧槍の穂先に剣槍を当て直撃は免れたが、体勢を整える間もなかったため踏ん張りがきかなかったのである。



 先程までルナの立っていた位置には傷ひとつ無いバルトが斧槍を振り抜いた体勢で立っていた。


「まったく、テメェには騙された!

 まさか風の魔法が使えるたぁな。

 追い詰められたフリはなかなかの演技だったが、一度見たからにはもう通用しねぇぜ?

 ウツシエに勝てたことは誉めてやるが、所詮こいつは複製品(コピー)、本物のオレ様に勝てると思うなよぉ?」






「ルナっ!!」


 急いで駆け寄ろうとするアッシュだったが



「おっと………そうはさせないぜ?

 ウツシエ達の準備も整ったみたいだからな!」



 バルトは斧槍で地面をひと突き

 すると、アッシュ達3人の足元から再び水が吹き出し巨大な水玉が出現する。


 アッシュ、ジェイド、アルフレッドの3人は水玉にからめとられ、宙に浮く水牢の中に閉じ込められてしまった。


「クソッッ!

 なんだこれ!出られねぇ!」


「アカン、まともに動けへんやんけ!」



 水牢の中で必死にもがくアッシュ達



「ハッハッハ

 無駄無駄ぁ、ウツシエの水牢は脱出不可能だぜ?

 まったく…面倒かけやがって

 テメェらの顔見てるとムカつくからよ!

 そこで大人しく死んどけや!」


 バルトが拳をにぎる仕草をすると、水牢の中の水圧が急に高まりアッシュ達3人は急激に圧迫される事になった。

 一気に視界が狭窄(きょうさく)し、肺の中の空気が圧し出される。


 3人とも程なくして気を失ってしまった。











 ───────────────────


「う…くうぅっ!?」

 吹き飛ばされ、舞い上がった砂煙の中でルナは小さく呻いた。

 視界がぼやけ、背中や頭は数ヵ所切れたのか所々血が滲む。

 肋にヒビでもはいったのだろうか…

 呼吸をすると胸が痛い。



 が、今はそんな事を言っていられる状況では無い。

 痛む身体に鞭打って全身にシルフの力を纏わせ立ち上がる。

「はぁ…………はぁ…………

 仲間を…………離せ………!!」


 シルフの力を借り、バルトに向かって剣槍を突きだすルナ。

 だが、ダメージを受けた身体では十分な威力が発揮できないまま容易く弾き返され尻餅をついてしまう。




「くぅぅ………

 まだだ……仲間を失う訳にはいかないんだ…

 離せ………!!!」



 再び立ち上がりバルトに攻撃を仕掛けるルナ。

 しかし、二度三度と切り結んでは弾き飛ばされ、仕掛けては弾き飛ばされを繰り返し、遂には力尽き、その場に片膝をついてしまった。




「オイオイ?もう諦めちまうのか?

 もっと楽しませてくれよ」



「ハァ………ハァ………ハァ………

 仲間を…………………離せ………ッ!」



 先程までの演技とは違い、ルナは本気で疲弊していた。

 剣槍を持つ手は痺れ、視界がぼやける。

 (あばら)が折れているせいか息をする度に胸が痛み、そのせいで満足に呼吸ができていない。





 膝をつくルナの前には、勝ち誇ったような顔でバルトがルナを見下ろしている。


 バルトは圧倒的な優位に気分が良くなり武器をルナに突き付けたまま侮辱の言葉を吐き続けた。




「全く、バカの一つ覚えかよ…

 面白くねぇな、テメェの親父の方が根性あったぜぇ??」





「─────────ッ! なにッ!?」




「滑稽だったぜぇ?テメェの親父は!

 テメェんとこの屋敷を襲った夜の話さ!

 酔った女(アドニス)と、そこの捕虜(ソフィ)を庇おうとしてよ!

 酒瓶持って抵抗しやがるんだ!

 魔術もいくつかぶっぱなしてきやがったが、ヤツも酔っててまるで当たりゃしねぇのさ!


 終いには、酒瓶片手に突っ込んで来やがった。

 2.3回突き刺してもしつこく立ち上がって来るから()()()()にしてやったぜぇ!!!」





「─────そんな………嘘だ…………

 お父様が…………………」




「ハッッ!! 嘘じゃねぇさ!

 テメェの親父オーウェン・ボールドウィンは俺様が殺した!

 捕虜の女も、水牢の中のムカつくガキも奴の死体とご対面してるはずだぜぇ?」




「…………………………嘘だ!」

「嘘じゃねぇさ!」




「…………………………嘘だ!!」

「嘘じゃねぇ!血塗れで惨めに転げ回るテメェの親父は滑稽だったぜぇ?

 テメェも──────」





「─────やめろ!!! それ以上その汚い口を開くな!!!!!」





 怒りのあまり我を忘れ、怒り以外の思考が停止する。

 もはや、体の痛みも感じなくなっていた。




「【シルフ】【ラウル】──

 ───行くぞっ!」



 2体の精霊の加護を同時に使ってバルトに突き付けられた斧槍を打ち払い、再び立ち上がるルナ。



「ハッッ!!

 そうこなくっちゃなぁ!

 第2ラウンドといこうや!」

 バルトは挑発的な笑みを浮かべ武器を振るう。




 ─────────────────────

 動き出してからは早かった。





 先程までの防戦一方ではなく、精霊達の加護を受けどんどんとスピードを上げていくルナ。


 バルトも自慢の武器さばきで対応しようとするが、次第にルナの姿を捉えきれなくなってくる。




 持ち前のスピードを生かした戦術で攻撃と離脱を繰り返しバルトを撹乱する。



 ルナが通った後には、紫色の雷光(らいこう)疾走(はし)り、風がふいていた。


「なっ…………なんだよコレ!!

 こんなの聞いてねぇぞ──────ッ!!」



 着実に敵を追い詰めていくルナだが苛立ちを募らせたバルトが反撃にでた。



「こうなったら………

 ここだぁッ────!!!!!」



 ルナが纏う(まとう)紫の雷光を見て斧槍を突きだすバルト

 完璧に姿は捉えきれなくても自分に一直線に向かってくる雷光の動きはわかりやすい。



 完璧なタイミングで突き出した斧槍は雷光の塊を見事に貫いた。


「ハッッ!!

 どうだ?これでテメェも────グッ!?!?」





 勝利宣言しようしたバルトの胸から剣槍の刃先が飛び出す。

 バルトの背面にはその背中に剣槍を突き立てるルナの姿があった。


「お父様の仇、大人しく観念するんだ。

私の大事な家族の名をこれ以上汚す事は許さない。」



口の端からゴボゴボと血を吹き出すバルト

怒りと悔しさに満ちた表情を浮かべながらその場に武器を取り落とし崩れ落ちるようにして倒れる。





 バシャッと音がしてアッシュ達を閉じ込めていた水牢と闘技場の周りに張られた水のヴェールが形を失い、弾けてルナ達の包囲網が解除された。

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