包囲の中で
斧槍を腰だめに構え一直線に突撃してくるバルト。
体格の良い敵と正面きってぶつかるのは分が悪いと考え半身引いて構えるルナ。
本気で殺しに来る相手に対しての恐怖もあったが、それ以上にバルトに対する怒りも大きかった。
フツフツと沸き上がる怒りをなんとか抑え、冷静に相手を観察する。
バルトは大柄に似合わぬ速度で迫って来る。
ルナは鋭く突き出された槍先に対し体の軸をズラし、正面衝突を避けた。
ルナが一撃目を避けると同時にバルトはすぐさまニ撃目に移る。
すかさず繰り出された斧槍の刃の横薙ぎに対してに斜めに剣槍を合わせ、受け流すことを意識して武器を合わせる。
頭に血が昇って全力で突っ込んできたバルトは受け流されたことによってバランスを崩し前方につんのめるように体勢を崩した。
「ハアァッ!」
体勢を崩したバルトのがら空きの背中に向かってルナは剣槍を半回転させ体重を乗せた突きを放つ。
タイミングは完璧。
相手の体勢は崩れており、狙った背中はガラ空きだ。
ルナの放った突きはバルトの背中に突き刺さる
……はずだった。
「チィッ」
バルトは舌打ちをして空振りした斧槍を地面に突き立てて身体を支え、下半身を無理やり捻って蹴りを放つ。
思いもよらないタイミングでの反撃にルナは対応しきれずバルトの牽制の蹴りが顎先をかすめる。
「────クッ!!! 」
「おいおい、さっきまでの余裕はどうした?
長物の武器の取り回しがちょいとばかり遅いんじゃねぇか?非力な小娘が重てぇ武器にふりまわされてんじゃねぇかよぉ! 」
「ウッ…この程度の軽い蹴りでダメージがあると思うな! 」
「おぉ、威勢だけは良いもんだねぇ!
せいぜい、楽しませてくれや!」
ルナが構えなおすのを待つこと無く、バルトは次の攻撃を仕掛けてくる。
バルトの言うとおり、ルナの武器は東人の霞里での借り物だ。
王都にいる間、ずっとアッシュとの訓練で慣れ親しんだ槍の感触とは、重量や重心位置など微妙な違いがあった。
対して、バルトの武器の扱いは洗練されている。
強気な発言はしっかりと斧槍の使い方を熟知した上での自信の現れであろう。
斧槍の突きや切り払い、足元を狙った引っ掛ける攻撃に対しルナは防戦一方だった。
「はぁっ………はぁっ…………くっ!」
苦しげに、肩で息をするルナ。
斧槍の遠心力と体重差を生かした重たい切り払いや叩きつけなどの攻撃がじわじわとルナの体力を削っていった。
(まだだ…………もう少し…………もう少しだけ…………)
「オラオラァ!
さっさと諦めて、楽になっちまえよ!
姉妹まとめてたっぷりいたぶってから殺してやるからよぉ!」
「クゥッ…
誰がお前なんかに!
────────ゥグッッッッ!」
とうとうバルトの攻撃がルナに届く。
斧槍をクルリと返し、穂先とは反対の石突きの部分での素早い突きがルナの胴体にクリーンヒットした。
「ぐぅっっっっ!!! 」
その場で片膝をつくルナ。
闘技場の端では、心配そうに見ていたフィリアが悲痛な叫び声をあげる。
ソフィを足元に寝かせ、すぐさま魔術を発動させようと杖を構えるが、バルトは余裕の表情を浮かべていた。
「おおっと!止めといたほうが良いぜクソガキがよぉ…
もっとも、魔術で自分の仲間ごと俺様を消し飛ばしたいってんなら話は別だが? 」
バルトはフィリアの方を向いて挑発するが魔術が発動される事は無かった。
バルトの言うとおり、ルナとバルトの距離が近くヘタに魔術を放つと巻き込む恐れがあったからだ。
武器を肩に担いで余裕の表情で近寄ってくるバルト。
「ハッッ!!
チョロいもんだぜ! 威勢だけで大したこと無いじゃねぇか! ったく…
うろちょろされても面倒だ…脚の1本2本貰っとくぜ!」
斧槍を両手で持って頭上高く振りかぶるバルト。
ルナはもう動けないだろうと判断し、脚を切断しようと武器を振りかぶった。
息も絶え絶え、追い詰められたルナ
絶体絶命の場面かと思われたその時、ルナの表情が鋭く尖った。
「ハァ…ハァ…ハァ…………………………………………………
────この時を待ってた!
【シルフ】断崖の暴風」
脚に振り下ろされる斧槍の穂先を狙って、シルフの加護を使用し風の魔法を放つ。
「んなっっ!?」
ルナが地面からピンポイントで空に向かって放った魔法はバルトの斧槍を捉え、穂先を頭上に押し返し。
両手を挙げた状態でバランスを崩させることに成功した。
すかさず、脚に力を込めシルフの加護の力を利用し素早く立ち上がるルナ。
呆気にとられて武器を握ったままバンザイをした体勢のバルトの喉元に剣槍が深く突き刺さった…




