牢
「いやぁ、お疲れ様でした。
今日1日通して、なかなかいい試合でしたよ」
ご機嫌そうなアルフレッドに労いの声をかけてもらうアッシュ。
午前に続き午後の試合も難なく勝利し、次の日に駒を勧めることができた。
「やはり、若いというのは良いですなぁ
パワーがあって、見応えのある試合でしたよ」
「そうかい、それはどうも…」
「せっかく労っているのですから、もうちょっと喜んだらどうです?
それとも、やはりルナ様で無いと嬉しくないですか? 」
「止せやぃ
そんなんじゃねぇよ」
「そうですか?
まぁ、そう言うならそういうことにしておきましょう。
さて、今日はもうおしまいのようですね
明日も期待してますよ! 」
「あぁ、そうだな… 」
疲れたような顔をして、立ち上がるアッシュ
兵士に連れられ、大人しく牢屋に戻り。
身体を休めるのだった。
床に寝転がるアッシュ、
牢の壁の高い所に開いた換気用の穴から、夜空に高く上がった月の光が射し込む頃
コツコツ、という小さな音が響きアッシュは目を覚ました。
「ん……?」
換気穴の所に何かがいる。
月の光の影になって、はっきりとはわからないがモソモソと動く様は巨大なネズミのようにも見えた。
気になって、立ち上がり目を凝らすアッシュ
「お前……
ポックルか? 」
─ホ、ホーッ─
という鳴き声がして、アッシュが正体に気がついた。
換気穴にも取り付けられた鉄格子の隙間から小さな体を使って、何かを押し込もうと必死になっている。
格闘すること5分
鉄格子の隙間からポックルの荷物の端が覗いた所で、アッシュが手を伸ばして受け取った。
受け取った物を確認してみると、それはルナ達からの手紙だった。
開封し内容を確認するアッシュ。
手紙には別行動をとっているルナ達からの近況報告だった。
ダングフォートの街中で情報を集めているルナ達は奴隷の売買記録を見るために記録庫を訪れた
ソフィに関する売買記録は、閲覧許可が必要らしく、追い返されてしまった為
夜中にこっそり忍び込んで、記録を見ることにしたらしい。
そこに書かれていた内容はソフィの売買が既にされてしまっていること、
買い取ったのは、ダングフォートの闘技場の経営者であるアントンという男。
街の酒場では、闘技大会当日の余興で、若い貴族の女の公開処刑が予定されているという噂が流れていること。
それから、記録書を見たあと退散する際に兵士に見つかってしまい、やむを得ず殴り飛ばして逃げたこと。
顔を見られたかどうかは定かでは無いが、怪しまれる危険はおかせないため慎重に行動せざるを得ないこと。
一通り読み終えたアッシュは手紙の裏に返信を書く。
ソフィは闘技場に囚われていて当日まで手出しできないこと
こっそり穏便に救助する事は恐らく不可能なので脱出に備えて逃走の手筈を整えて欲しい事を書いた
手紙を小さく折り畳んで、格子の外にいるポックルに手を伸ばすアッシュ
小首を傾げながら待っていたポックルはアッシュから手紙を受け取る。
「よーし、頼んだぞ
お前だけがたよりだからな」
フワフワの羽根を一撫でしポックルを送り出す。
月夜に消え行く姿を見送ってから
アッシュは再び短い眠りにつくのであった。




