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オルビア国物語  作者: バルカン
第2章
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闘技大会予選 2

闘技場のアリーナへ連行されて行くアッシュ、

東西に設けられたトンネルのようなゲートの手前まで歩いたところで兵士に静止され、部屋の一角にある山積みの武器の方をアゴで指される。


選べということだろうか……


準備されていた武器はそれは酷いものだった。

古く乾いた血や錆がこびりつき、刃こぼれで剣はガタガタ

途中で折れて、やたら短くなった槍や柄の曲がったハンマー等、なかなかバラエティに富んでいる。


武器の状態に呆れ返りながらも、アッシュはがらくたの山の中から、分厚い手甲1つと大振りな両手剣を見つけ出した。


手甲は元々、手に握りこんで使う鉤爪だったのだろう、いまや爪は全て折れたうえに左手用しかなく、

手の甲と上腕の一部を守る鉄板と化している。


左腕の義手の上から手甲を縛りつけ動きに問題ないことを確認する。


両手剣も2、3回振って感触を確かめる。

多少錆びてはいるが、刃のぐらつきもなく肉厚な刃が鈍い光を放っていた。


「まぁ、まだマシなほうか……

とりあえずはコレでやれるだけ、やるとしますかね」



準備ができたことを兵士に伝え、合図と共にアリーナへのゲートが開かれる。

アッシュの闘技大会予選が始まった。



ゲートを潜ると茶色い砂の敷き詰められただだっ広い決闘場、周囲はぐるっと一周全て観客席になっており、外側に向かって階段状に広がっていく造りになっていた。

向かいのゲートからは対戦相手であろう男が出てくる。


大柄で体格の良い男が、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、長剣を携えて

こちらに挑発的な言葉を投げ掛けてくる


「へへへ、どこのどいつかぁ知らねぇが、観念しな!

俺ぁ、その辺の腰抜けどもとは違うぜぇ

まさか捕まっても合法的に殺しができるたぁ戦奴ってのも悪くねぇ、大人しくしてりゃあ、やさぁしく殺してやっからよぉ」



「はぁ……なんだよアレ……

まぁ、泣きながら命乞いしてくる奴よりかはマシか?

ちっとは罪悪感が薄れる気がする……」


いきなりぶっ飛んだ奴と戦うことになってしまい、頭を抱えるアッシュ。

どうやらドゥームの暴動で捕まった市民ではなく、根っからの犯罪者のようだ。


「なぁにごちゃごちゃ言ってんだ?

大人しく死ねぇ! 」


男はアッシュに向かって剣をかまえて走ってくる。

闘いはすでに始まっているようだ。


相手の男は特別、陽動や小細工することなく真っ直ぐに向かってくるが、振り上げた剣から繰り出される太刀筋はなかなか鋭いものだった。

アッシュはその剣をボロい剣で受ける。


力は互角、

鍔迫り合いで押し込もうと、相手はドンドン踏み込んで来るがアッシュは頑として一歩も引かなかった。


一度仕切り直しの為に距離を取るアッシュ


組み合った相手の剣を下から左手の手甲でかちあげ、胴体が空いた所に、一歩下がって腹に蹴りを入れて飛び退いて構えなおす。


相手は体捌きこそ荒いが刃物の扱いはそれなりに慣れているようだった。


「逃げんじゃねぇ!

大人しくしろ!! 」


再び、相手が迫ってくる。

長剣の間合いを生かし、長いリーチで力任せに横薙ぎに振った剣先は遠心力を伴って破壊力が抜群だ。


狙いはアッシュの下半身。

低い姿勢で繰り出される太刀筋を飛び上がって避け

お返しといわんばかりに、両手剣を上段から振り下ろす。


─ガキィン─と金属同士のぶつかる音が響き、アッシュの一撃は相手に防がれた。

相手の剣の取り回しの早さも中々の物だ。


再び、剣で組み合うような形になったが、今度は相手の方が仕掛けてきた。

鍔迫り合い越しににらみ会う2人。


と、突然アッシュの目に向かって、男の口から何かが吹き付けられる。


「──うわっ! 」


細かい砂利や小石が目に入り視界を奪われるアッシュ。

咄嗟に目をつぶるが、それでも一瞬生まれたスキを相手は見逃さなかった。


牽制の為に剣を繰り出すが、易々と相手に防がれお返しに剣の柄でこめかみを殴られる。

目の前に一瞬火花が散るような衝撃を受けフラついた。


相手から次に放たれた袈裟懸けの一撃はかろうじて

手持ちの剣で防いだが、防ぎきれずに肩口を少しだけ切られる。

大きく飛び退いて、距離を取り仕切り直しを図るアッシュ。


目潰しを食らった視界も目に入った小さい砂利を涙で洗い流し、段々と戻ってくる。

肩口の傷を確認するが傷口は浅く、特に問題は無かった。


「目潰しとは、随分姑息な手を使うんだな

正々堂々って言葉知らないのか?」

アッシュは相手の男に問いかける。


「正々堂々だぁ?

なに寝ぼけたこと言ってやがんだ?

殺し合いだぞ? フェアもクソもねぇ!

俺はテメェをバラせれば満足だぜぇ!! 」


「そうかい……

そっちがその気なら、どうなっても知らないぜ?

俺だって、そういう戦い方は嫌いじゃ無いんだ」


少し怒った顔をして、相手に走り込むアッシュ

先程まで、右手一本で扱っていた両手剣をしっかりと両手で握りこみ、下段に剣を構えて肉薄する。


相手の間合いに入るや否や、体を捻って振りかぶるアッシュ。

長剣を持った相手の方が間合いは広い筈だが、お構いなしに剣を振るった。


見え見えの太刀筋に相手は何の違和感も無く防御の体勢を取る。

「へっ、単純な野郎だ!

目潰しぐれぇで、頭に血が昇ったか? 」


先程までとは違い、大振りなアッシュの一撃を受け流し、返しの一撃で仕留めるつもりだった。


剣同士がかち合う直前アッシュはニヤっと口角の端を上げ微笑む。


──パッキィィン──


と互いの剣がぶつかった瞬間、どちらの武器も砕け散る。

初めから、相手の武器破壊を狙って力任せに振り抜いたアッシュの一撃は成功し、男はビリビリと痺れるような掌への衝撃そっちのけで、呆気に採られてしまっていた。


砕け散る、剣の破片を呆然と見つめる男


それからの決着は一瞬だった。

左手の義手で男の顎の関節部分を打ち抜き

意識が飛びかけた男の後ろに回って首に腕を回す。


無防備になった首を締め上げ、相手が窒息するのを待つこと無く、そのまま ──ゴキッ──

っと首の骨を折った。


やれやれとため息をついてアリーナから退散するアッシュ。

勝負がついた所で鉄のゲートは再び開き、無言で勝者を迎え入れるのだった。






そんな光景を、無人の観客席から見つめる人物が一人

先程の顔に火傷の痕がある黒マントの男だ。



「アイツ、見覚えあると思ったらボールドウィンの屋敷のクソガキか?

生きてやがった……

こりゃあ面白れぇ、火傷の礼はさせてもらうぜ?

とりあえずは、夜鷹の頭領に報告だ……」



独り言を呟いて、マントの男は歩き出す。

黒い覆面を取り出し、頭から被って向かうその先には不気味にそびえ立つ闘技場の別棟があるのだった。


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