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オルビア国物語  作者: バルカン
第2章
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ダングフォート3

「おやおや、そんなに驚かれなくても……

夜中ですから、あんまりうるさくすると皆さんに迷惑ですよ」


「いや……それは、そうだが

そんな話してるんじゃ無い、何でアンタがこんな所いるんだよ?

アンタ、アルフレッドさんだろう!? なにやってんだこんな所で!? 」



アッシュの目の前にいるのは、アルフレッドだった。


先日、ルナと共に参加した王宮での成人式においてリチャード王子の従者として声をかけてきた、老紳士。


王宮にいたような人物がなぜこんな所に?


他の奴隷と同じような、ボロい服を着て

綺麗に切り揃えられていた白い髭は少し伸び

牢屋の中に囚われている。



格好こそみすぼらしいが、背筋はピンと伸び、出で立つ姿は上流階級の人間らしく上品さが感じられた。



「ハハハ──

まぁ、色々ありましてね


説明すると長くなるのですが、シンプルに説明すると、リチャード王子が結婚の申し込みに失敗した責任を負わされたと言うのが一番近いんでしょうかね?


私のエスコートがリチャード王子はお気に召さなかったようでして……


まぁ、理由なんぞはいくらでも後付けできますから、

枯れたジジィは王宮に用済みということですよ


今はこうして、闘技場でひっそりとなるべく目立たぬようにしています」



「ふーん……

正直、それを聞いたところで(にわか)には信じがたいとしか言えないんだが……」



「おや?

真実は小説より奇なりという言葉をしらないのですか?


まぁ、それはそうと君こそこんなところで何をしてるんですか?

散歩で来るような場所では無いでしょう? 」



「あ? あぁ、そうだった!

そうだアルフレッドさんよ

助けて欲しい事があるんだ!


人を探してるんだが、力になってくれないか? 」



「アルフで結構ですよ

もう私は、王宮勤めの執事ではありませんし

君と私の仲じゃないですか?

若人の力になれるのであれば光栄ですよ

ジジィで役に立てばの話ですが……」



「助かるよ…

探しているのは、若い女性だ。

奴隷としてこの街に運ばれた所まではわかってるんだが、その先の行方がわからない。


淡い茶色の長い髪で、年齢は20歳前後

元貴族だ、他の奴隷達と比べたら少しは小綺麗な見た目をしてるだろうから目立つはずなんだが……」



「ほぅ……

もしや、ソフィーティア・ボールドウィン様の事ですかな? 」


「知っているのか!? 」


「これでも、元王宮の執事です。

オルビアの貴族の家系の方々くらい頭に入っておりますよ…


ですが、私もこのダングフォートに来てからはお見かけしていませんねぇ……

お顔を拝見すれば、すぐに気がつくと思うのですが……」



「そうか…… 」

残念そうな表情を浮かべるアッシュだったが、アルフレッドの話は終わりでは無かった。




「ですが、心当たりならございます」


「本当か?

どこだ? 教えてくれ! 」


見回りが回ってくる時間が段々と近づいてきて、アッシュは少しだけ焦り始めていた。



「そうですねぇ、

私も君に1つお願いしたいことがあるのですが

それと、交換条件ではどうでしょう? 」



「なっ……

ズルいぞ! こっちは切羽詰まってんだ!

若人の力になれるなら光栄とか言ってたじゃねぇか! 」



「もちろん、光栄ですよ!

なぁに、大したお願いではございませんよ。

ちょっとしたことです。


それとも、君はこの哀れなジジィの頼みも聞けないと言うのですか?

老人は大切にしなさいと親御さんから教わったでしょう? 」



「ああ! もう! うるせーな!

話してると調子狂うぜ!


だいたいアンタ、哀れな老人なんてタマじゃないだろう?

早く言えよ! 時間が無いんだ! 」


「では、ジジィのお願いも聞いてくれると言うことですね? 」


「わかったよ! わかったから早く教えてくれ!! 」



「交渉成立ですな……」

ニコニコと鉄格子を挟んで笑顔を浮かべるアルフレッド



「ソフィーティア様は、恐らく闘技場の別棟におられるのでしょう……

この街で、買われる前の奴隷がいる場所は限られています。

ですが、行方がわからないのであれば別棟以外には考えられません

事情は知りませんが、別棟には特別な者達が集められると聞いております──」



「よし、別棟だな!

わかった!じゃあさっそく──」


「お待ちなさい!!

若人よ、焦りは禁物ですぞ……」


「んなこたぁわかってるよ!

でも、グズグズしてる暇は無いんだ! こっちは───」


「──入れませんよ………」


「……なに? 」


「ですから……

別棟には入れません。

入り口に特殊な仕掛けがしてあって、魔法による解除がないと開かないのです」


「な、なんだよそれ! ふざけんな!

こっちはソフィを助けに来てんだ!

何としてでも──」


「落ち着いて、最後まで話を聴きなさい! 」


穏やかな態度を保っていたアルフレッドだが、少し強めにアッシュを静止する。

渋々といった感じではあるが、不思議と素直に言うことを聞くアッシュ

その様子を見てから、アルフレッドは続きを話し始める。



「別棟の奴隷は、次の闘技大会で処刑されることが決定している者達が入るところです。

処刑される理由までは把握しておりませんが、当日の余興として使われるのでしょう……


ですから、もし助け出したいのであれば闘技大会の当日、

この日以外にチャンスはありません……」



唇を噛み、険しい表情で考えるアッシュ

「クッソ……

どう考えても、こっそり穏便になんて無理だ…

一体どうすれば…… 」


ここまでアルフレッドの話を聞いてふと違和感を覚えるアッシュ

時間はあまり無いが、気になったので聞いてみた。



「アルフ爺さんは別棟についてやけに詳しいな、

何でそんな事知ってるんだ?

アンタだって囚われの身だろう?

そんな情報、ホイホイ手に入るとも思えないんだが……」



険しい表情をしていたアルフレッドだが、ニッコリ笑って表情を崩し


「それについてはまた、

機会がある時にお話しましょう、そろそろ君も戻った方が良いと思いますよ。


ジジィのお願いは明日の闘技大会の予選の時にでも話しましょうか? 」



「予選…………?? 」



「おや?何も知らないのですか?

まぁ、明日になればわかりますよ


もう、お戻りなさい若人よ、ジジィの相手をしてくれて、嬉しかったですよ

楽しい夜でございましたな……」



アルフレッドとの話は謎ばかりだったが、大きな収穫もあった

アッシュは急いで廊下を駆け抜け、なんとかギリギリで見回りが来る前に自分の房に戻ることができた。



床に寝転び考え事をしている間に自然と目を閉じ眠りにつく…

翌朝、次々と牢屋の扉がガチャガチャと開けられる、うるさい音によって起こされ闘技大会の予選が始まるのであった。

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